第終章
あれから。
僕らはもう時間が遅かったので、また会う約束をして家に帰った。勿論メアドも交換した。
電車に乗って家に帰る。帰りなので時間は早く感じられた。然し、僕に関しては時間が長く感じられた。何故なら、僕の異常が僕自身に露見してしまったから。
僕は、いろんなことを知りすぎてしまうあまり、体感時間が長くなるようだ。
電車を降りて、墓苗駅に着いた。翔と別れる。
「じゃあ、また今度。でも、学校で会うのかもしれないな。」
「そうだぞ君。宿題を終えたのか?」
「まだだな。」
勉強全くできないしと付け加えた。
「そうか、じゃあ、その宿題を終えてから遊ぶとしよう。」
と言って、翔は言った。
「また今度な、傑。」
「ああ、またな翔。」
そうして、僕と翔は自分の家に帰っていった。
家に帰ってから、僕は母さんに色んな事を訊いた。
父さんのこととか、僕のこととか、皆のこと。
母さんは普通に喋ってくれた。別に話すことでもなかったのだと言う。それは辛い過去なのだし、若しも訊かれたら言うことにしていたらしい。まったく、誰にでも、否、その人にとって完璧な世話を焼く母さんだ。
然し、それのお陰で僕は友達に改めて会うことが出来たのだ。それは感謝しよう。
また、父さんにも出張の合間に帰ってくる時に訊こう。父さんは異常なのかと。率直に。
その日はもう、風呂に入ってすぐ寝てしまった僕であった。
後日。
夏休みも終わりがけの八月二十九日。
毎年のように終わらない宿題を前に必死にシャーペンを滑らしていた。
美術、音楽、技術、家庭科、体育は終わったのだけれど、国語、英語、数学、理科、社会は終わっていなかった。
いつものように。記憶が戻る前のように。
そこは、昔も今も変わっていないのだろう。
この前、翔から遊びの誘いが来た。然し、僕は宿題が終わっていなかったので、約束通り誘いに乗らなかった。
しかも三度。
少し、疑っているのかもしれなかった。
それでも、翔はそんなことで僕のことを嫌に思う奴じゃあないだろう。その事は重々知っている。
まあ。
残り、二日で五教科の宿題全部半分しか終わっていないのもどうかと思うが、まあそこは御愛嬌。
然し、多分僕は何とかなると思う。そういいながらも毎年、提出期限には出しているのだ。そうまでしても点数が取れない。本当に僕は抜け目がないけれど、勉強が出来ないのだな。勉強や運動以外において完璧、怪物。
よく言ったものだよ。
その日の終わる二時間三十二分前の午後九時二十八分、翔からメールが届いた。
「件名なし:明日、俺の家で勉強会をしないかい。例によってまだ宿題を終えてはいないのだろう?僕はもう終わったのだし、どうだ。」
宿題会というのならいいか。
まあ、何となーく写すだけになってしまいそうだけれど。
「件名なし:うん。分かった。明日だな。」
返信する。案の定、すぐに返ってきた。
「件名なし:じゃあ明日。昼からだ。(返信不要)」
僕は、携帯を閉じて、それを勉強机ではない、携帯や本などを一時的に置く少し小さめのテーブルの上に置く。
「宿題は明日でいいか。勉強できるんだし。」
そう呟いて、ベットに横になる。
あの日僕は色んな事を知った気がする。
良いことも悪いことも。
それは全て良い方向に向いたような気もするけれど、全てが全て、良い事ばかりではないようだ。大怪我したこともまた然り。
それでも楽しかった。
普通の中学生でいられたような感じがする。
そう思って、僕は眠りについた。
この時はまだ、夏休み明けに灸原翔と共に社会の宿題を完遂できなくて廊下に立たされることを僕はまだ知らなかった。
終わり。




