初の狩りと採取
宣言通り朝一でログインすると、目の前にラストが居て驚く。
「!!すごいびっくりしましたよ」
昨夜ログアウトした場所…教会の上位種の部屋に出現したはいいが、何故ここにラストがいるのか理解出来なかった。
「ちょっと驚かせようかと思って。」
と、無駄に爽やかな笑顔で言われ、脱力する。
「いや、冗談だ。多分今日、レベルが50行くと思うから少し説明を。」
ロストの説明はこうだった。
レベル1から採取は出来るが、採掘は10からとなる。更に50で結界を張っての放置採取&採掘ができるようになるらしい。
落ちている間は黙々と採取&採掘をするようになっている。結界を張っているため姿も気配もなく、ある種の別次元にいるような感じだということだ。
アイテムは全てアイテムボックスにはいるので、後で仕分けしたりする手間は無いらしい。
50から調薬などの製造関係も出来るようになるらしい。ただ、どこかに弟子入りしなくてはならなくて、ある一定のレベルに達すれば、免許皆伝とともに上位スキル開放されるとのこと。
相性の良い製造であれば、2箇所に弟子入りできるので、これで製造を伸ばしていくのもいいだろう。
「今日は採取の依頼をして討伐系があればちょこちょこやって、あと、調薬と調理の弟子入りでもするわ。
ガンガンレベル上げて早く皆がIN出来るように頑張る。」
ロストに手を振って、教会を出てギルドに向かう。
ギルドに入るとレベル10で受けられる討伐系と採取を受ける。討伐はワーム(要するに体長1Mのイモムシ)とブラックドック(負で出来た犬の外見の魔獣)を受けた。
下位の討伐系は倒した数で報酬が出る。
魔獣なんかは、討伐部位を持ち帰ることができないから、ギルドカードが記録媒体になるとのこと。
『不正はできません』と、カウンターに真面目な顔で言われた。
街から出る前に料理屋に寄る。弟子入りするためだ。
何故か、卵焼きを作らされたが、無事弟子入りできた。
弟子入りと説明したが、要は、空いてる時間に極めて行けば良いとのこと。
この調子で、調薬の方も弟子入りして町から出る。
町を出るときに門番のところで、ギルドカードを記録用の石碑にタッチ&ゴーした。これで町から出たという記録を残すらしい。入るときも同じようにするようだが、町中にはポータル(町から各都市や街に行けるようになっているし、魔法や、魔道具で飛んできた時もここに出るとのこと。普通に使うときには大金がかかる)もあって、ポータルで飛んできたときは、自動でカードを読み込むらしい。
(意外と最先端技術なんじゃないのこれ?)
半分呆れながら採取できる平原にまず行く。
ポットの材料になる薬草を採取し始める。鑑定スキルを使い続け片っ端から採取する。(数時間後にはきっちりと生えるので、気にしない)
2時間ほど採取したら、鑑定スキルと採取スキルがかなり上がった…
今度は森一歩手前の草原に行ってみる。ここならワームも出るし、毒消し草などの薬草も手に入る。
気配感知と索敵を併用し、更に鑑定スキルも使い、薬草を取りつつワームを探す。
しゃがみこんで薬草取っていたが、気配を察知するとさっと立ち上がり剣を抜く。
咄嗟に振り下ろすと、真っ二つになったワームが消えようとしていた。
(マジ、イモムシだしっ!女性や、虫嫌いには嫌なクエだわ。)
それからヤケになりつつ丁度100匹倒したところで、レベル30になった。
丁度良いと草原をやめ。森へと入っていく。
森林浴気分をちょっぴり味わいながら、森の中に進んでいくと、左手前方にブラックドックと思われる気配を感じた。
ドッグとつくだけあって、集団で行動するようだ。
今いるのは20の集団だ。ヘタをしたら、30~50の集団だったりするので、まぁ、運はいいほうだろう。
剣を構え、範囲攻撃のスキルを展開し、集団の中に突っ込んでいく。
肉や骨を断つ手応えをかすかに感じながら、次々と屠っていく…動きはアシストがあるので、ほぼ身体が勝手に動いてるような感じで、気配を感じると既に屠っているような状態だ。
20匹終わった時にはレベル50を超えていた。
素材もそこそこ手に入っている。
もう少し素材を集めて製造をやっていくかと考える。
屠りながら少し先に進むと少し開けたとこに洞窟を見つける。
(ダンジョンか…行けるかな?死に戻りがオチって感じかな?)
とりあえず、今日はやめておこうと引き返す。情報もないのに入ってもしょうがないかと後ろ髪引かれながら、町に帰ることにする。
ギルドで依頼の報告をして(毎回ながら驚かれる)料理屋に行く。店の手伝いをしながら料理を作ってレベルを稼ぐ。
『GMの証』のおかげでバンバンスキル経験値が溜まっていき、料理の腕も上がっていく。
夜が耽ける頃には、師匠より腕が上がり、免許皆伝され、上位料理スキル開放された。
これ以上は上位の材料が必要となるため、材料が手に入る所に行かないとスキルレベルも上がらない。
現在夜中である。ここでは、と付くが…スタミナもそこそこ上がったようなので、まだまだ狩りに行くなり、採取するなりできそうだ。
夜だから眠くなるかと思っていたが、意識しなければ眠くはならないようだ。
暫くどうしようか悩むが、今日見つけた洞窟に行ってみることにする。
その前にギルドへ行く。ギルドは基本24時間営業なので、いつ行っても開いているのだ。
ギルドに入ると、夜はカウンターが代わっていて、少しばかりゴツイ無精髭のおっさんが座っていた。
白髪交じりの黒髪はオールバックに流し、後ろで一つに括ってあり、黒い目はこちらを不躾に見つめている。
(うわー…濃いわ…凄いキャラだけど、話しかけても平気かな?)
女は度胸だとカウンターに近づき、声をかける。
「今晩は。少し聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
男はサーラを観察し終えたのか、顎を右手の親指でなぞりながら、左手はカウンターをコツコツと叩く。
「そうか、あんたが、ランディが話していた上位種か」
一人納得するように頷く。
「ランディ?どなたです?」
聞き覚えのない名前に、鸚鵡返しに聞くと、男は苦笑して、『興奮しすぎだあいつ』と呟いた後、
「あいつ名乗らなかったのか…昼にここにいる兎族の男の名だよ。本当はランドルフって名だがな。因みに俺はハントだ。夜専門な?
で、聞きたいことって?」
と答え、続きを促してくる。
サーラは狩りで見つけた洞窟のことを聞いてみる。
「今日の狩りの最中に森で洞窟を見つけたのですが、その洞窟の情報を教えてもらいたいと思いまして。」
「ん?南の草原の向こうにある森の中のか?」
「はい。この町からまっすぐ森に入って、やや東ってところでしょうか?」
ハントはフムと頷き、カウンターの引き出しから一枚の紙を取り出す。
この町周辺の地図らしきそれに、森が画かれており、その中にいくつか洞窟と池があった。
位置的に、これではないかという洞窟をサーラは指差した。
「多分、これではないかと思うのですが。」
「特に名は付いて無い洞窟だが、確かここは大蝙蝠ぐらいしか出ない洞窟だったように記憶してるなぁ…後は鉱石が取れるくらいか?」
それを聞きサーラは、大蝙蝠の依頼を受けて行こうと決める。鉱石が取れるなら、ロストに聞いていた放置での採取をしてみようと考える。
「ありがとう」
お礼を言ったあと、大蝙蝠の依頼を受けて夜中だけど、昼と変わらないような足取りで町を出る。
途中、門番が矢鱈と心配してきたが、なんとか宥めて森へと向かう。
途中でワームやブラックドックやスライムなんかと遭遇したが、軽く倒せるようになっていたため、問題なく洞窟に付いた。
洞窟の中に入っていく。スキルの暗視を使い、暗闇の中でも物が見える状態でどんどん進んでいく。大蝙蝠を10匹ほど倒した辺りで採掘をしてみようと、ツルハシをアイテムボックスから取り出す。
「AFK」(away from keyboard…離席します。)
呟くと、サーラの周りに透明の膜ができ、外からはサーラが見えなくなる。存在さえも感じない。たとえ近くを魔獣が通ったとしても、反応しないだろう。
しかし、中ではサーラがつるはしを奮って鉱石を掘り出していた。