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村でのひとコマ

書きたいことを書いていたら気づくといつもの2倍の文量になってしまいました。

遂に、山の終わりが見えてきた。周りの木々が徐々に少なくなり視界が開けるとそこは一面の草原だった。緩やかに流れる風に背の低い草花が踊る。元の世界では余り見られない光景に目を奪われる。


「どうしたこんな所に何も無いぞ?。」

そうオルデンは言うが、いくら田舎に住むと言っても、広大な草原など始めて見たのだから少し立ち止まってもしょうがないと思う。俺がそう言うと、


「そこら中こんなもんだがな」

とあきれた調子で言う。


「草原が珍しいなんて北部の出身なのか?。北部なら確かに見渡す限り山って感じだが。」

そうジェミドが聞いてきたので取り敢えず全部話すのは不味いと思い、ぼかしながら話す。


「いや、北部がどんなのかは分からないが俺はこの大陸じゃ無い所から来たんだ。んで、山で迷っちまってな。山を越えて来たんだよ。」


「山を越えたって、上には危険な魔物が馬鹿みたいにいるんだぞ?。どうやって超えてきたんだ。」


「ああ、歩いて。」

調子に乗ってぼけてみた。なんかこいつら戦っている時は分からなかったが、いい奴そうなんだもの。


「いや、歩いてじゃなくてな、魔物と戦わなかったのかって事だ。」

律儀にそう返すオルデンの横でジェミドが腹抱えて笑っている。よしっ。うけたぞ。


「魔物に襲われたのは1回だけだ。あんたらを助けた以外にはな。」


「どんな奴だったんだ?。上の方ならブラックベアー辺りがよく現れているが。」


「んっと、ワイバーンみたいな奴?」

それで通じるか分からないが、俺の知識ではあれを言い表すのがワイバーン辺りしかいない。


「「は???」」

今度は固まってしまった様だ。何気にリアクションでかいな。


「ちょっと待て、もしかして山の頂上にいる奴か?。どうやって逃げてきたんだ。この前もCクラスのパーティーで討伐に行ったのにやられて命からがら帰って来たんだぞ?」

そんなに強かったのかあのワイバーンしかもワイバーンで合ってたし。


「襲ってきたから倒した。なんか不味かったのか?。」


「倒したってお前・・・嘘言うなよ。なんか証拠あるのか?。」

証拠って言えば剥ぎ取った牙と爪しかない。分かるかどうか判らないが取り敢えずポケットから取り出して見せてみた。


「でかいっ。これなら納得だなこのクラスだとドラゴン系しかこんな爪持ってねえよ。」

ジェミドが答えた。確かにあんなのが熊でしたなんて言われたらもうこの世界で生きていく自信なくなるわ。


「本来ワイバーンはBクラスの魔物なんだぞ?お前はどのクラスなんだ。」

クラスって言うとあのカードに載ってた奴だよな。確か、Fだったよな。


「Fだけど。」

素直に答えると、またもや2人はフリーズしてしまった。やむなくカードを見せる。


「確かにFだな。裏は?おぉ!!なんだこの馬鹿見たいな能力の高さは。」

俺にも、とジェミドが言うので見せる。オルデンと同じ反応で思わず笑ってしまった。


「この能力値ならB、いやへたすりゃAだぞ。」

やっぱりこの数値は異常の様だ。そう言えばと???の事について聞いてみる。


「???なんて初めて見たぜ。オルデンはなんか知ってるか?。」


「俺も初めて見た。しかも、EXなんて最高値だぞ。こんなの、伝説の初代グランドマスターか魔皇竜殺しだけだったはず。」

なんか変なのキター。取り敢えずそのグランドマスターと魔皇竜殺しについて聞いてみる。


「初代グランドマスターってのは、この世界にギルドを始めて作った賢者で、異世界から来たらしくてな。神と言葉を交わし世界の人々を魔王から守った御人だ。」


「魔皇竜殺しは暴虐の限りを尽くした魔王でしかも最上級のドラゴンだったんだ。それを、一太刀で切り捨てた武人で、《サムライ》と名乗ったらしい。だがな、その後の事はよくわかっていないんだぜ。なんか、カッコイイよな。」


オルデンとジェミドが話してくれたんだが、ジェミドの目がなんかキラキラしてる。新しい玩具を貰った子供みたいだ。それにしても、前者は日本人かはわからないが後者はあきらかに日本人だろ。


「俺も・・・・いや、なんでもない。」

ここで異世界から来たなんて言ったら、なんかめんどくさい事になりそうだ。笑われる位で済むなら兎も角、要らぬ面倒事には華麗にスルースキル発動で行く事にしよう。


「それにしても腹減ったな。早く帰ろうぜ。」

森の出口辺りで話し込んでいた為、ジェミドがせかし始めた。


「そうだな。ユウキはどうする?」


「俺も、腹が減ったな。なんか食べたい。」

そう言えば俺もここに来てから何も食べてなかった。聞いた途端に気づくのだから少し苦笑してしまう。


「あ、そう言えばこっちの通貨持ってない。飯も食えないよ、どうしよう。」


「ワイバーンを倒した証拠を出せば、ギルドで報奨金が貰えるから大丈夫だろ。」


「そうなのか?。良かった。」


「ホント何にも知らないのな。ギルドで登録する時教わっただろ。」

登録などしてないが、そうだったなと適当に相槌を打っておいた。


ようやく歩き出し、村に向かう。2時間ほど歩いただろうか。もうそろそろ夕方と言っても差し障り無い時間帯だ。周りの風景に畑が見え始め、柵に囲まれた(ココラ村)に到着した。木造の平屋建てがぽつぽつと建っており、踏み固められた道が奥に向かって続く。オルデン達と村の中心に向かって歩き、やっとギルドに辿り着いた。


ギルドは木造2階建てで、入り口が観音開きの木で出来た扉をくぐり中に入る。ギルドの中には四角いテーブルが10卓ほどあり食堂兼ギルドって感じだった。もうほとんどの席が埋まっている。俺達が入って来ると何人かこちらを見てすぐに話の輪に戻っていった。なんでも話しによると夜には居酒屋みたいになるとの事。あと、2階は小さいが宿泊施設だそうだ。


奥にあるカウンタにオルデンとそろって向かい、マスターらしき人にジェミドが声を掛ける。


「帰ってきたぜジョブソンさん。」


「よう、帰ってきたか。ジェミドにオルデン、そこに居るのは誰だ?。始めてみる顔だな。」


「ああ。ユウキ挨拶しとけ、ここのギルドマスターのジョブソンさんだ。」


「始めまして、結城と申します。どうぞよろしく。」


「ずいぶん丁寧だな。こちらこそよろしくな。」

そう言って、手を差し出し握手する。体格のいい髭面のおじさんで笑顔がちょっと怖かった。


「今日の成果は上々だぞ。ウルフを10匹以上仕留めたし、ベアーも倒したんだぜ。」


「ベアーか、そいつは凄いな。んじゃ、討伐証明出してくれ。」

オルデンとジェミドが腰に着けたバックから次々とウルフの尻尾やら、ベアーの牙やらを取り出す。最後に小さな角を10本ほど取り出しカウンタに乗せた。


「その角はなんだ?」

あの時には見なかった角を指差しオルデンに聞いてみる。


「ああ、これは、ホーンラビットの角で滋養効果があるんだ。今日はこれを狩りに行ってたんだがな。」

そうなんだと頷く。話している内に査定が終わった様だ。


「まず、ホーンラビットの角の分がまず、貴銀貨1枚と銀貨3枚だな。」

差し出された銀色の丸い銀貨3枚と、丸いのより銀に近い色のひし形の銀貨が1枚。たぶんこれが貴銀貨だろう。それの枚数を確認して小袋に入れるオルデン。


「あとこれが、ウルフとベアーの分だな。」

そう言って、先程より小さな金貨と貴銀貨1枚が出てきた。


「これでだいぶ懐が潤うな。」


「よしゃっ、今夜は飲むぞっ。」

オルデンとジェミドが嬉しそうに声を上げる。


「俺もお願いします。」


「なんだ、お前も何かあるのか?。」

俺はポケットに入っていた牙と爪とカウンタに乗せて、これをお願いしますと言って微笑んでみた。ジョブソンさんが驚く顔が目に浮かぶ。


「こ、これは、もしやワイバーンの物か?。」


「ええ、そうです。」


「まさか、倒せる奴がこの辺にいたのか。おっと査定しなくちゃな。おい。ボードのワイバーンの紙剥がして来い。」

ジョブソンさんは驚きから立ち直ると、後ろに居た小僧に指示を出す。


「んんっ~。ワイバーンで間違いないな。ちょっと待ってろ。」

そう言うと後ろにある通路に消えていった。戻って来るとカウンターに先程より一回り程大きい金貨を5枚差し出す。


「金貨5枚がワイバーン討伐の報酬だな。確認してくれ。」

確認して受け取りポケットに入れる。あとこれをと言って上着に包まれた卵をカウンタに乗せ上着を解く。そこには、黄緑色の模様が入った卵が2個乗っていた。


「これはワイバーンの卵か。あいつはあそこで繁殖するつもりだったんだな。2ヶ月前にいきなり来たのはそういう訳か。でっ?、どうするんだこれは?。」


「いやっ~買い取って貰えないかと思って。」


「いいのか?ギルドで売るより商人にでも売ったほうが高く売れるぞ?。」


「そうなんですか?。」

商人かって事は交渉しなきゃならないって事だろ。俺はそういうの苦手なんだよな。


「面倒なんで買取お願いします。」


「そうか面倒か、わかった。」

笑いながらなにかの本を取り出し捲り出した。その間に、オルデンとジェミドが一斉に話し出す。


「あのワイバーンて子持ちなのか。そりゃ手に負えないはずだぜ。」


「俺達も行かなくて良かったな。子持ちほど厄介な物は無いしな。」

元の世界でも子持ちの猪とかは、かなり危険で近づかないようにしてたしな。俺が住んでた町の山のほうは猪とか猿とか普通に出て来たしな。


「査定出来たぞ。間違いなくワイバーンの卵だほら此処に載っているだろう。」

先程捲っていた本をこちらに見せてきた。そこには、ここにある卵と同じ模様の卵が書かれており。上の方にワイバーンの卵と書かれている。


「こいつひとつで金貨2枚と半金貨1枚、あわせて金貨5枚だ。商人に売れば、最低でもひとつ金貨3枚はしただろうに。ほんとに良かったのか?。」


「ああ、いいよ。交渉するの苦手だし。」

値切ったことさえない俺には商人の言うまま売ってしまいそうだ。今相場を知ったばかりだしな。


「そうか。んじゃ、金貨5枚だ。」

金貨5枚を受け取り、またポケットに入れる。チャリチャリと音が鳴る。


「これで終わりか?。そういや、ギルドカード見せて貰ってなかったな。オルデンのついでにやっちまった。カード持ってるんだろ、みせな。」


「あっそっか。出さなきゃならなかったな。いつもの癖で出さなかったよ。」

取り敢えず知ったかぶりして左のポケットからカードを出してジョブソンさんに渡す。


「カガミユウキか、いい名だ。んっ?、F?これは本当か?。だが、ギルドカードは偽装不可だしな。まあいいワイバーンを倒せるならこんなランクのままにしておく訳にはいかないしな。」

そう言って淡く輝く水晶球を取り出して、そこにどうやってか挿し込むと水晶球が強く輝いたと思うとまた元に戻った。


「ほら、出来たぞ。これでランクが上がったぞ。」

カードを返して貰うとカードの内容が変更されていた。




表には、


名前 加賀美 結城(かがみ ゆうき)

種族 人間

年齢 21

出身 ___

性別 男

ランク C



裏には、

ちから A-

すばやさ B

ぼうぎょ C+

まりょく F+

しゅうちゅう C+

??? EX

称号【異世界神の情け】【異邦人】【ワイバーン殺し】


まりょくと称号の所が変わっているな。


「確認したか、んじゃ、終わりだな。改めてユウキ、これからもよろしくな。」

ニカリと笑い、言う。やっぱり、髭面で笑うの反則だよジョブソンさん。


終わったので飯、飯っと2人と共に空いているテーブルに座り、お品書きを見る。だが、なにが書いてあるのかさっぱりだった。確かに字は読める。だが、オルドの香草焼きとかミルモの丸焼きとか書かれてもホントさっぱりだ。


店の人のお勧めを頼めば早々間違い無いだろう。なので、さっそく頼む事にする。


「店員さ~ん、お願いしま~す。」

すると、看板娘なのだろう前掛けを着けた若い女性が注文を取りに来た。

「はい、注文をどうぞ。ってオルデンさんとジェミドさんじゃないですか。あらっ?こちらの方は見ない顔ですね。私は、クレアって言いますよろしくね。」

笑顔で可愛らしい顔をこちらに向けてくる。少しそばかすが目立っているが充分綺麗で惚れてしまいそうだ。


「えっと、クレアさんのお勧めで3人前おねがいします。」

俺がそう言うとオルデンが俺も3人前とビールと話し。ジェミドは5人前と蒸留酒をなぜかちからこぶを作りながら言った。


「お勧め11人前とビールと蒸留酒ですね。少々も待ちください。」

笑顔で繰り返すと踵を返そうとしたところで、あ、俺もビールでと追加注文しておく。


「いや~腹減ったな~今日は思わぬ報酬に新しく出会った友人良い事尽くめだな」


「いや、ブラックベアーに殺されそうになるのが良いことか?だが、ユウキに出会えて良かったのは間違いないが。」


「俺もお前らみたいな楽しい連中に出会えて良かったよ。」

そんな事を話していると、木の小樽になみなみと注がれたビールと蒸留酒を持ったクレアさんがあらわれて、料理はもう少し待ってねと言って置いていった。


3人でジョッキお持ち上げ、乾杯の音頭を取る。


「「「新たな友に乾杯!」」」

ガコンッと良い音がしてジョッキを傾け一気に飲み干す。ぷはっぁぁすきっ腹にビールが効くな~。クレアさんもう1杯ずつ追加で~っと言って料理を待つ。


5分後にクレアさんが料理と酒の追加分を持って来て、余りのみ過ぎないようにねと言ってほかの席へ注文を取りに行った。クレアさんの選んだ料理はテーブルいっぱいに置かれ、美味しそうな匂いが立ち上る。何かの肉料理の様だ。その他にもサラダの様な物まである。


思わずひとくち口に放り込むと肉の芳醇な脂の旨みかくちいっぱいに広がりため息が出た。いくら空腹が最高のスパイスだったとしても、うまいもんはうまい。だってうまいんだもの。大事なことだから2回言ったぞ。


そこからは会話もそこそこにひたすら食って飲んでを繰り返した。料理をすっぱり食べ終えて、ようやく人心地つくとオルデンが赤らんだ顔で頭を揺らしながら言ってきた。


「んぁああ、ユウキは今晩どうすんだ?泊まるあてはあるのか?。」


「いやぁ、ないよぉ。それがどうかしたのかぁ」

おれも結構酔ったみたいだ。ジェミドなんてもはや皿のかたづかれたテーブルでジョッキを持ったまま突っ伏していた。まぁ、蒸留酒をあんなにガバガバ飲んでたらしょうがないか。


「んじゃぁ、ここの2階がぁ宿だって教えたよなぁ。たしかまだ部屋が空いてた筈だからここに泊まればいいんだよぉ。」


「ああ、そうするよ。」

という事で、お合いそした俺達はカウンタへ行き部屋を借りた。料金は一泊銀貨7枚だった。2階に上がり部屋の前で挨拶して別れる。ジェミドはオルデンに担がれていたが。部屋に入り奥にあるベットに倒れ込む。だいぶ固めのベットだが触り心地のいい冷たいシーツが気持ちよくてそのまま眠ってしまった。


こうして異世界に来て1日目が終了した。



お酒の勢いは恐ろしいですね。なんだかんだと日本酒1本720ml飲んじゃいました。補足で貨幣価値は半銅貨 5円

銅貨 10円 

貴銅貨 100円

半銀貨 500円

銀貨 1000円 

貴銀貨 10000円

半金貨 50000円

金貨 100000円 

貴金貨 1000000円

法貨 10000000円

銅貨銀貨金貨は円形のコイン状

半銅貨半銀貨半金貨は一回り小さいコイン状

貴銅貨貴銀貨貴金貨はひし形のコイン状

法貨は板状のカードの様なものです

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