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救出戦

 勢い良く魔物の集団まで近づいて、大剣の攻撃範囲まで達すると体を右に思いっきり捻り溜め込んだ力を解放するように横一線に振りぬく。そこには綺麗な太刀筋なんて無く、只々力任せの一振り。辺りの空間そのものを巻き込むかのような一撃に空気が歪んで大剣が通った後にはぽっかりと空間が出来た。目の前に居た魔物達であるコボルトは斬り飛ばすなんて生易しい死に方ではない死に様だった。


そのまま、左に流れた大剣を前に進みながらまたも横一線に流す。進みながらまるで台風のように大剣を振るうと通った後には無残に肉片となった魔物だったモノが散乱していた。手に持つ大剣は余りの瞬間的に掛かる負荷に喘ぐようにギシギシと鳴く。それでもアキュラを見付けるまでは歩みを止める事は出来ないしそんな暇は無かった。


ある程度進むと魔物の群れの種族が変わってコボルトからゴブリンに変わった。その先に急に魔物が居ない少し開けた空間に出た。そこまでゴブリンを薙ぎ払いながら進む。その真ん中でアキュラがバックラーとショートソードを手にひとり孤軍奮闘していた。アキュラは息が切れて肩で深呼吸をしながら余り連携の取れていない魔物達を相手取って戦っている。


先程見たようなバックラーをうまく使うような戦い方ではなく、身を削りながらもそれを気にする事無く血と油に塗れたショートソードを突き刺すように殺していた。ゴブリン達にやられたのか右肩の辺りから血を流して服を黒く濡らし腕を伝って手まで自身の手まで血で汚れていた。その傷が原因なのかショートソードの切っ先は地面に向かっていた。


それを見てまずはここから一旦抜け出して治療しないと不味いと思った俺は、アキュラに大声で声を掛た。だが、アキュラは戦闘に集中しているのか、こちらに気が付かない。ならばと近くに居たゴブリンを大剣で突き刺して、突き刺したまま上に振り上げて高々と放り投げる。100メートル以上飛んだ魔物は一瞬の無重力を楽しんだ?後、アキュラと対峙していた魔物の一匹であるゴブリンに重力に引かれた重傷のゴブリンが降りかかった。


いくら小さく10歳ぐらいの子供並みの大きさしか無いとは言え相当な高さ地球で言うビルの10階以上の高さからの自由落下だ。その衝撃力は想像を絶する物があり降って来たゴブリンは落下点に居たゴブリンを押し潰し大地をへこませた。凹んだそこには死骸と言うか肉片が残るのみ。その様子に一瞬、その場が凍った様に静かになった。その隙に、アキュラに近づき左腕でアキュラの胴を抱えて思いっきり後方に向かって飛ぶ。


今まで本気を出すと危なかった(主に落下の時が・・)ために余り本気で飛んだ事が無かったが軽々と魔物達の頭上を飛び越えてイシュアと居た丘のに土埃を撒き散らしながら着地した。余りの出来事に呆然としていたアキュラが回復すると、いやいやする様に体を暴れさせた為に更なる怪我をさせない為に大剣を地面に突き刺してから下ろす。


「何で助けた!!。あのままでも俺は殺れた!!()。今度こそ俺が村を守るんだ」


今だ興奮している様で目が血走って茶色の瞳が曇っているみたいだった。その顔からは憎悪と焦りが浮かんでいて見ていて余り気持ちの良い物ではない。


「ああ。そうかもな。だがこのまま続けるつもりか?あのままなら近いうちにお前が殺られていたぞ。まだまだ、魔物の数は多い。それに対してこっちには2人だけだ。しかも、アキュラお前は傷を負っている。もうそろそろ腕が振れなくなっていた様だしな。何か反論あるなら言ってみろ」


「うっ、ぐっでも!!」


「でももヘチマも無い!。このまま犬死するつもりか?村を守りたいならやり方が違うだろう。わざわざ、皆殺しする必要は無いんだ」


「どういうことだ!このまま行けば村に当たるんだろ?なら一刻も早く討伐するべきだろ」


「その考え自体は間違えじゃないが、村に行かせなければいい。それに尽きるだろうそれなら足止めによる遅滞行為とそれによって魔物の意識をこちらに釘づけにして誘導すれば、村から離す事ができるだろう。その間に、都市から戦力を送って貰えばいいんだ」


「・・・そっそうだったのか・・・」


アキュラは詰まらせた様に押し黙りショートソードの柄を握り締めようとして腕の痛みに呻いた。それと同時に膝から力が抜けたのか、右膝を突いて片膝立ちの体勢になった。それでも憎悪の感情が急かすのか立ち上がろうとショートソードを杖の様に突き立ててみるが如何せん短か過ぎた。支える事もできず無様に倒れてしまう。


「何がアキュラを急かすのかは知らないが、まずは治療が優先だ。腕を見せてもらうぞ」


そう言って強引に座らせて腕の状態を見る。半袖状の服を捲ると刃物で切った鋭利な物ではなく抉った様に傷があった。


「アキュラお前、魔法薬とか持ってないか?」


「うっうう、これ・・・」


すでにバックラーを手放した左手を懐に入れて、1包みの魔法薬を取り出して渡してきた。それを受け取って包みを開けて紫色の粉末を傷のある肩に振り掛ける。振りかけた途端に傷口からうっすらと煙を上げた。そして、徐々にではあるが傷が治り始めていて、傷口から肉が盛り上がり始めた。それに伴い急激に直ろうとする為か激痛がアキュラを襲う。アキュラは歯を食い縛るがそれでも痛みから声に成らない声が漏れた。


それを見て、今日採取した物を思い出した俺は、腰に着けた小袋から森で採取したホウソイの種子を握り潰してアキュラの口に無理やり突っ込む。煎じなくても沈痛効果はあるが生だとものすっごい苦いらしいがそこは我慢して貰うしかないだろう。痛みから苦味へと、意識が向いたのかホウソイの種子を食わせた俺に向かって非難の視線を向けてくる。


それを無視した俺は、取り敢えずはこれで大丈夫だろうと一安心し後ろを振り返る。そこには俺をいや、俺達を標的に定めた魔物達が丘に向かって迫っていた。それを見て一難去ってまた一難かとため息を吐いて、解っていたけどさと苦笑する。


振り返って、アキュラを見る。視線が合い苦笑したままの俺を見て、アキュラは何故こんな顔を出来るのかわからないといった顔で見ていた。アキュラは鎮静効果が効いたのか、凄く落ち着いた顔をしている。当分、戦闘は無理そうだ。余り動かすのは良くないだろう。その姿を見て、一つ決心が付く。その思いを言葉に変えて紡ぐ。


「アキュラ、そこで見ていろ。ここから先は魔物一匹通さないから」


地面に刺していた大剣を引き抜き肩に掛ける様にして魔物に向かって歩き出す。さもなんでも無い様に飄々と、気だるげに歩くその後姿をアキュラは見つめ続ける事しか出来なかった。



次回は遂に主人公無双発動です。

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