旅立ちの準備
翌日、気持ちよく目覚めると1階に下りて、もはや習慣になりつつある朝風呂を頂くと体に残る僅かな眠気が取れた。風呂は夜混む為、朝に入った方がのんびり入れてお得感がある。やはり、風呂ならばゆっくり入りたいし。
この世界の人々はなんと言うか鴉の行水?みたいな所があって夜だと順番待ちがあるためゆっくり入れない。そんな事を思いつつカウンタに戻って鍵を返して後ろのテーブルに座っていたオルデン達の所まで行って空いている席へと座る。
「おはようユウキ。」
「ああ、おはよう。」
「おはようさんユウキ。また朝風呂かほんと好きだな。」
「まあな、朝ならゆっくり入れるからな。」
「風呂なんて汗さえ流せればいいんだよ。所で今日はどうすんだ?。」
なかなか、風呂の素晴らしさが伝わらないな。折を見て風呂の素晴らしさを語ってるんだが。今日の予定か、昨日考えた事を聞いてみるか。
「なぁ、ここから1番近い都市ってどこだ?。」
「何だ急に?。ここから近い都市といえば北に行ったところにマーズって名の都市があるが。」
「もしかして旅に出るのか?。」
オルデンが聞いてくる。やはりこの聞き方だとそうなっちまうよな。でもまぁ、その通りなんだが。
「まあ、調べたい事もあるし、都市は遠いのか?。」
「そうか。ここからならそう遠くないぞ?。まぁ、歩きなら12日位で着くな。」
「馬車なら、5日位で着くぐらいだぜ。都市に着く前に3つ位村があった筈だったよな?。オルデン。」
ジェミドが聞くとそうだなと頷くオルデン。歩いて12日、馬車でも5日も掛かるのか。それで遠くないってどれだけだよ。時速4キロで歩いたとして、1日8時間で32キロ程度。12日で384キロか。計算すると尚解る遠さだな。
「思ったより遠いな。結構な大荷物になりそうな気がするな。」
食料や衣服、そして野宿する為の装備も必要だし他にもあるのかもしれない。そこの所も聞いとかないといけないだろう。
「そうでもないぞ。食料は、そうだな6日分も在れば次の村まで充分持つしまたそこで買えばいい。困ったら魔物を狩ればいいしな。」
それもそうか。途中に村があるんだここらと変わらなければ食料だけでなく色々買えるだろう。あ、そういえば本気で走れば1日で走破できんじゃね?。登りであれだけの速さで走れるんだ時速40キロで走ったとしても、9時間ちょっとで着く計算だ。休憩入れても半日で着くな。まぁ、それは置いといて魔物とか出るのに夜どうやって休むんだろうこれは聞かねばなるまい。
「なぁ、夜魔物出るのにどうやって休むんだ?。」
「あ?、簡易障壁に決まってるだろ?。」
簡易障壁って事は結界みたいな物か。どういった機構をしてるのか気になるな。
「簡易障壁?。どういう物なんだ?。」
「そりゃ、あれよ。布に簡易障壁の魔方陣が縫ってある奴だよ。旅する奴は必ず持ってる物なんだが。そんな事も知らないでどうやってここまで来たんだよ。」
「知らない物はしょうがないだろ。」
そう言って、お手上げの仕草をした俺は実物を見てみたいとオルデンにお願いするとオルデンは、ならこの際に自分のを買ったらどうだと言って来たので頷いておく。
それを買ったあとは、オルデン達に教わりながら旅に必要な物を買い揃えることになった。俺も朝食を食べ終え、準備をするために部屋に戻る。取り敢えず、金の入った子袋をこちらで買ったバックに入れる。
長剣は、持って行く必要無いな。短剣だけで良いか、これは魔物の解体用に買ったもので刃渡りが25センチほどの片刃でコンバットナイフみたいに肉厚なナイフだ。それを腰のベルトに差しておく。
準備を整えて下に降りるとオルデンとジェミドがもう降りてきていた。3人で通りに出て最早慣れた道のりを露天の方へと歩き出す。
露天に着くと、店主に許しを貰ってジェミドが早速ひとつの折り畳まれた布を手に取り広げて見せた。それは、1メートル四方の厚手の布で60センチほどの魔方陣がにび色の糸で描かれたものだった。
「これに乗っていれば2人が両手を伸ばした位の簡易障壁が出来るんだぜ。」
「まぁ、魔物に攻撃されたら3発位で解けるけどな。だから、熟睡は出来ないが無いよりましだ。攻撃されたら障壁が解ける前に戦える様にしておけよ。」
そうオルデンが、補足する。便利な様でそうでもないな。だが、1人で旅するには必須だろうな。魔方陣は大きいものの3つの文字しか描かれて無く、魔素集積、状態維持、視えざる壁、としか描かれてない。と言っても縫い付けてあるが。
視えざる壁は障壁の事だろう、魔素集積は空気のように偏在する魔素を取り込んで魔方陣を発動し状態維持で障壁を維持する物かね。だがこれはどういう発動条件なんだ?これだと触れていれば常時発動している事になるがどうなってるんだろう?。
「さっき、乗っていれば使えるって言ってたよな。ってことは触れた時点で発動してしまうんじゃないか?。」
出て来た疑問をぶつけてみる。
「いや、触っただけじゃ発動しないぞ。使う時には、魔力を流し込まなきゃならない。って言っても少量で済むがな。1回魔力を流し込めば1晩は軽く持つ。」
んじゃ、止める時はどうするのか聞くと障壁を殴って壊せだそうな、かなり無理やりだな。
「んで、どうすんだい?。買うのか、買わないのかはっきりしてくれ。」
露天の店主が長々と話す俺達に買うなら早くしなと急かすので、値段を聞くと貴銀貨1枚と銀貨2枚だった。それを聞いたジェミドがそれはちょっと高いぜと言い出し、店主と値段交渉を始めてしまった。
俺はそのまま買っても良かったんだが、結局ジェミドの勢いに押された店主は貴銀貨1枚で良いと疲れた様に言った。少し同情しながら支払いを済ませ次の店へと移る。そこでは旅向けの保存食などを商っている所で干し肉や乾燥させた果実、カラカラに乾いたパン、塩や香辛料などが置かれていた。
取り敢えず必要無いと思うがオルデン達の手前、買わないわけにも行かず6日分の干し肉や
乾パンもどきそして塩と干しぶどうをひと房買う。代金の銀貨6枚を払い、試しに干し肉を少し齧るとかなりしょっぱく高血圧になりそうな味だった。
干し肉などはスープ等に加える物らしい。スープに味付けしなくても済むようにかなり濃い目に味付けされている。そのまま食べるには向かないみたいだ。そこを離れて古着屋に向かい服の予備と薄い毛布と布袋を買う。
その他の厚底のフライパンなど調理機器のほか細々とした物を買い、一通り揃える事が出来たので、買い物を終わらせギルドへと戻った俺達はジェミドの部屋で買った物を確認しながら話す。
「これで、大体の物が揃ったな。っで?、何時出るんだ?。」
「明日には出ようかと思ってる。こう言う事は決めたら早い方が良いって相場が決まってるし、ゆっくりしてるとめんどくさくなりそうでな。思い立ったら吉日なのさ。」
そう笑って言うと、それもそうだなと返ってきた。そっちはどうするんだ?と聞くと、こっちはあと10日か程したら南に向かって旅にでるんだそうだ。こうなると中々所か死ぬまで逢わない可能性が高そうだ。
「んじゃ、今まで大分世話になったからな。今晩は俺のおごりで飲もうぜ。」
しんみり別れるのは性に合わないし、最後はパーっと騒いで楽しくしたいしな。それに世話になったのは間違いないし。
「おっ、いいな。それじゃ、下行くか。そろそろ良い時間だしな」
時計を確認するとまだ夜と言うには少し早いが結構良い時間だ。2人と連なって下に行きテーブルに着き酒と料理を頼む。先に酒が来たので乾杯して一気に飲み干すと酒の追加を頼む。
「あんまり飲みすぎるなよ。まぁ、言っても無駄だろうが。」
オルデンが真面目にジェミドと俺に注意するが俺達はそんな注意などどこ吹く風でクレアさんが持って来た酒をまたも凄い勢いで飲み干してぷっはーと一息つく。そこに料理が運ばれてきて食べ始め、よく食べかなりの量を飲んだ俺達は明日の二日酔いを気にする事無く賑やかも騒がしい夜が更けていくのだった。
お久しぶりです。中々進みませんがよろしくお願いします。