こんな弁護士いないと思ってたのに
こんな弁護士がいたら面白いかな。高校生の時の4コママンガを小説にしてみました。
某都市、裁判所。
「・・したがって、被告に一年の求刑をするものであります」
検察官の静かな声が響き渡る。その静寂を破る様に弁護士の声。
「異議あり!」
「弁護人何ですか?」
「被告の中村満さんの無罪を証明できる物的証拠が見つかりました。お見せしてよろしいですか」
「許可します」
「それでは…」
バッグの中から、証拠を取り出す弁護士。
「・・・えっ?弁護人…それは?」言葉を失いそうな裁判長。
「ダッチワイフです!」誇らしげな弁護士。
「ダ…えっ?」困惑する裁判長。
「おおっー!」傍聴席がざわつきだす。
「お静かにお願いします。弁護人はその物的証拠を速やかに説明を」
「物的証拠即ちダッチワイフの事ですね、裁判長!このダッチワイフは本件犯行の時間帯に中村さんが営業所止めにして受け取りに向かった物です。しかもダッチワイフと気付かれない様にですよ、ダッチワイフと気付かれない様に周りを文庫本で覆ってたのです!そうですね、中村さん!」
「べ、弁護士さん…」顔の赤い被告人。
「万が一、いや億が一の可能性かもしれないダッチワイフの入った箱が第三者の手で開いてしまう可能性を考慮し、いや俺がダッチワイフを買うわけがない、ダッチワイフを営業所止めにして買うわけがないという揺れる男心、それを万全を期してカモフラージュする、中村さん見事です!」
「弁護士さん…やめて…」声にならない声の被告人。
「えー、弁護人それが本件と何の関係が?」
「この中村さんのダッチワイフ、いや失礼、中村さんの手元に渡らずまだ未使用のダッチワイフですが、この受け取りに向かう中村さんを目撃した方がいるんです。まさに犯行時刻に。その時の中村さんはまさにこの世の幸せを独り占めの様な表情で、まさかダッチワイフを受け取りに行くとはその方も思ってなかったようです。そしてその目撃者とは中村さんが高校の時片思いしてた方です。」
「まさか、弁護士さん…」
「中村さん、事情が事情なだけにあなたが受け取りに行った物はダッチワイフであること、カモフラージュの仕方も話さざるを得ませんでした。あなたが片思いの方にダッチワイフの事を!さらにダッチワイフの顔がその目撃者に似ていることを!」拳を振り上げる弁護士。
「終わった…」終わった表情の被告人。
「弁護人、その証人は?」
「証人は、ダッチワイフの中村さんにお会いするのは恥ずかしいらしく、警察署に状況を説明に行かれるそうです。」
「そうですか。検察側何か意見は有りますか?」
「いえ」
「それでは、本日は閉廷と致します。」
ざわざわとしだした法廷を後にする人達。傍聴席にいた年輩の新聞記者が新人の女性記者に話す。
「どうだ?噂通りだろ」
「えぇ…」
「今回も無罪になるな。これで15連勝だな、デビュー以来。」
「でも、被告人が・・」
「あぁ、必ず無罪にする代わりあの弁護士はあの手法を取るんだ」
「あの手法?」
「奴に一度インタビューした事があってな、その時言ってたんだよ。人間疑われるのは恥部を隠すからだってな。隠すものがなければ自ずと答えがでる」
「そんな物ですかね?私には楽しんでいる様にしか…」
笑いながら年輩記者が言う。「確かにな。でも一理有るだろ、奴の、新城明の言うことも」