うちの子になってくれてありがとう
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九月の雨の夜のことだった。外から猫の鳴き声が聞こえた。
「ニャー、ニャー」
思わず外を見に行くと、白黒の子猫が鳴いていた。近づくと体をすり寄せてくる。とても人になれているようだった。
(うちでは飼えないな……)と葛藤しながら家に入ると、ついてきてそのまま家に上がってきた。
「仕方ないな……」
翌日、私はペット用品を買い揃えた。餌入れ、水入れ、ソファ、遊び道具、トイレ一式――などなど。
最初のうちは元気に遊び、よく食べていた。特に私にはよく懐き、私が帰ると「ニャー」とお出迎えしてくれた。
名前は私が考えて『成』と名付けた。将棋で「成れば強くなる」ことから取った名前だ。甘えん坊で、呼べば必ず返事をする猫だった。
「ナルー」
「ニャー」
二か月ほど経った頃、餌をだんだん食べなくなっていった。何種類も餌を変えてみたが効果はなく、病院にも連れて行った。最初は歯が悪いことと、風邪を引いている可能性があると言われた。だが一か月経っても治らず、別の病気が疑われるようになった。
それでもナルはいつも私にべったりで、何度も病院へ通った。だが日に日に容体は悪化していった。柔らかい餌をスプーンで与えると食べることもあったが、それも次第にできなくなった。表情を見ていると、何かを言いたげな顔をすることが多く、けいれんを起こすこともあって目が離せなかった。
やがて寝たきりになった。それでも私が帰ると耳をそばだて、私の声を聞いているようだった。寝たきりになって何日か経ったある日、私はあぐらをかき、ナルを膝に乗せていた。次第に体温が下がり、やがて息を引き取った。約八か月の短い命だった。私は泣きながら家のそばに埋めてやった。
ふと、頭に言葉が浮かんだ。
「ぼく、七日前から目が見えてなかったんだ」
動けなかったけれど、本当はもっと甘えたかったのかもしれない。
うちに来てくれてありがとう。うちの子になってくれて、ありがとう。
――――感謝を込めて




