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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

狂恋

作者: shonansurf2003
掲載日:2025/12/20

私は派遣社員として、この男が所属する営業部で会計処理の仕事をしていた。その時に私は、この男が商品にバックマージンを上乗せして販売していることを知っていた。ある日、経理部署がそれを見つけ、会社が刑事事件として告発、関係者全員が事情聴取を受けた。私が事情聴取を受ける数日前、この男は私を誰も使わない地下の会議室へと呼び出し、自分の生涯を捧げること、優秀な弁護士を付けることと引き換えに、会計処理をしていた私がやったことにして欲しいと、私に泣いてすがってきた。私はこの時、この男に好意を抱いており、その申し出をプロポーズとして、受けた...それからは、地獄だった。SNSでは会社と住所と電話番号が晒されていた。マスコミは毎日自宅に押しかけ、誹謗中傷のメール、電話が止むことはなかった。私は、地獄を見た。刑期が過ぎ、私はこの男との約束を果たすべく、この男に連絡を取ろうとしたが、この男は、姿を消していた。


 "そうゆうことか..."


ならば、私はこの男に見つからないよう、私の意識を飛ばして、必ず私との約束、いや、永遠の契約を履行させてやる、そう、心に誓った。


私の意識は毎日毎日街中を彷徨い、ついにこの男を、海岸沿いのある街で見つけ出した。さぁ、いまからこの男に、自分の一生を私に捧げてもらおう。私が見た地獄を、この男に味わってもらうのだ... 真綿で首を絞められるように、ゆっくりと、じっくりと、地獄を味わってもらうのだ...生きてゆく上での楽しみが、私にもやっと出来たのだ。


それから私の意識はこの男に憑依し、この男と毎日を共にした。夜はこの男に馬乗りになり、首を締め続け、日中は背中にしがみつき、私の意識はこの男の全ての行動を邪魔し続けた。仕事の重要なメールは削除し、作成した資料は古い資料に差し替えた。通勤電車で女性がこの男の前にくれば、私の意識はその身体を触って痴漢に疑われるよう仕向け続けた。この男はそうした私の意識の仕業に気付いてはいないようだが、何かに怯えるようにビクビクしながら、身体を小さくして毎日を過ごすようになっていった。そんなある日の朝、いつものようにこの男が通勤電車に乗っていると、目の前に若い女性がやって来た。私の意識はいつものようにその若い女性の身体を触った、と、その時、『嫌だ』とその若い女性は大声で叫んだ。いつもなら誰も気がつくことはなかったのに、その若い女性は、私の意識が自分を触ったことに気がついたのだ。

『痴漢だ!痴漢だ!』電車内は騒然となり、

この男は周りの男達に取り押さえられた。


『やった...』 


私の意識はジワジワと湧き上がる喜びを感じながら、この男の背中にしがみ続けた。


この男は、痴漢の容疑で逮捕された。


それからこの男は、私と同じ地獄を味わっていた。SNSでは会社と住所と電話番号が晒されていた。マスコミは毎日自宅に押しかけ、誹謗中傷のメール、電話が止むことはなかった。私の意識はジワジワと湧き上がる喜びを噛み締めながら、この男の背中にしがみ続けた。


あれから月日は経ち、この男の刑期が過ぎたある日、私以外の全てを失ったこの男は一人、思い詰めた表情のまま、山奥の湖へと車を走らせていた。私の意識は、ほくそ笑みながら助手席に乗っていた。。。


湖についたこの男は、悲壮な顔をして湖岸に立ち尽くしていた。入水自殺を考えたのだろう、この男は湖岸まできたのだが、そこで脚を止めていた。この期に及んで躊躇しているこの男にイラッとした私の意識は、この男と私の意識を繋いでいる首輪に繋がれたチェーンを引っ張って、この男を湖底へと導いた。この男は抵抗することもなく、引っ張られるままに、湖底へと身体を沈めていった。しばらくすると、真っ白になったこの男が、静かに湖面に浮かび上がってきた。この時、私の意識の喜びは、最高潮に達していた。


『ついに永遠の契約は履行され、この男は私のものになるのだ』


私の意識は、永遠の契約を履行する為の、

最後の仕上げに取り掛かった。

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