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お気楽転生道中  作者: 憂姫


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7/10

7

出発準備を整えたハルとリナが宿の外に出ると、すでに町は騒然とした様子だった。


「ハルさーん!!」

「旅立つって聞きました!!」

「見送りに来たぞーー!!」


 通りには、商人、職人、子供たち、老人、旅人、果ては守備隊まで――

 町のほぼ全員がずらりと並び、二人を待っていた。


「えっ……み、みんな!? なんでこんな……!」


「当然でしょ!」

 リナが胸を張る。


「あなたが町でどれだけ人助けしたと思ってるの? みんな、ちゃんと見てたのよ。」


「そ、そんな大したことしてないって……!」


「いや、大したことしてる!!」


 周囲の全員が揃ってツッコむ。


 



 


 そこへ守備隊長ガルドンが、大声で場をまとめた。


「同行希望者が大勢いたが――全員、きっぱり断った!!」


「大勢!?」


「むろんだ!!ハルの旅は“お気楽道中”なのだろう?。大勢で押しかければ、彼の気楽な旅を邪魔してしまう!」


 町人たちは少し悔しそうにしつつも、納得したように頷いていた。


「でも……リナだけは同行するんだよね?」

 ハルが確認すると、ガルドンは力強く頷いた。


「うむ! リナは一番ハルを理解し、一番心配していた!

 そして何より――旅立ちの準備を誰より早く始めていた!」


「えっ、みんなの前で言うなーーー!!」


 リナの顔が真っ赤になり、ハルの袖を掴む。


「でも……私がついていかなきゃ、あんた絶対どっかでトラブルに巻き込まれるでしょ……!」


「まぁ……今までの流れを見ると否定できない……」


「そこは否定しなさいよ!!」


 二人の掛け合いに町のあちこちで笑いが起こった。


 



 


 そして――東門前。

 そこはもう祭りのような盛り上がりだった。


「ハルさん! これ持っていって!」

「道中の怪我に効く薬草です!」

「干し肉追加だよー!」

「二人で食べるお菓子も!」

「腹が減ったらうちの店に寄れよー!」


「わああああ……! ありがとう!!」


 両手いっぱいのお土産が積まれていく。


「ハルー!!」

「リナー!!」

「また帰ってきてねーー!!」

「二人とも気をつけて行ってこーい!!」


 子供たちが花を振る。

 老人たちが深く頭を下げる。

 商人たちが手を振り、守備隊が胸に手を当て敬礼する。


 そんな温かい景色を前にして、ハルの胸の奥がじんわり熱くなった。


 



 


 そして、リナがそっと隣に立つ。


「ハル。私……本当はね、最初に会った時から思ってたの。」


「え?」


「あなたって……危なっかしいけど、優しくて……なんか、目を離したくない人だなって」


 リナは視線をそらして、頬をほんのり赤くする。


「だから……一緒に行く。

 あんたがお気楽に旅できるように、私がちゃんと見ててあげる!」


「リナ……ありがとう!」


 ハルの素直な笑顔に、リナはさらに顔を赤くした。


「べ、別に! 見ててやるだけだから! 同行じゃなくて監視だから!」


「はいはい、頼りにしてます監視役さん!」


「わー!! いま絶対バカにしたでしょ!!」


 二人のやりとりに、町の人たちは笑顔を浮かべた。


 



 


 そして――ついに旅立ちの時。


「行ってきます!!!」


 ハルが大きく手を振る。


「いってらっしゃーい!!!」

「また帰ってこいよーー!!」

「元気でねー!!」

「リナちゃん、ハルを頼んだよー!!」

「任せてくださーい!!」


 町全体の声援が二人を包み込む。


「よし、リナ! 行こう!」


「うんっ!」


 ハルとリナは並んで歩きだす。

 東へ続く大地の向こうには、まだ見ぬ町、まだ見ぬ人々、そして新しい“人助け”が待っている。


 二人の背中に、町中の声がいつまでも響いていた。

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