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出発準備を整えたハルとリナが宿の外に出ると、すでに町は騒然とした様子だった。
「ハルさーん!!」
「旅立つって聞きました!!」
「見送りに来たぞーー!!」
通りには、商人、職人、子供たち、老人、旅人、果ては守備隊まで――
町のほぼ全員がずらりと並び、二人を待っていた。
「えっ……み、みんな!? なんでこんな……!」
「当然でしょ!」
リナが胸を張る。
「あなたが町でどれだけ人助けしたと思ってるの? みんな、ちゃんと見てたのよ。」
「そ、そんな大したことしてないって……!」
「いや、大したことしてる!!」
周囲の全員が揃ってツッコむ。
◆
そこへ守備隊長ガルドンが、大声で場をまとめた。
「同行希望者が大勢いたが――全員、きっぱり断った!!」
「大勢!?」
「むろんだ!!ハルの旅は“お気楽道中”なのだろう?。大勢で押しかければ、彼の気楽な旅を邪魔してしまう!」
町人たちは少し悔しそうにしつつも、納得したように頷いていた。
「でも……リナだけは同行するんだよね?」
ハルが確認すると、ガルドンは力強く頷いた。
「うむ! リナは一番ハルを理解し、一番心配していた!
そして何より――旅立ちの準備を誰より早く始めていた!」
「えっ、みんなの前で言うなーーー!!」
リナの顔が真っ赤になり、ハルの袖を掴む。
「でも……私がついていかなきゃ、あんた絶対どっかでトラブルに巻き込まれるでしょ……!」
「まぁ……今までの流れを見ると否定できない……」
「そこは否定しなさいよ!!」
二人の掛け合いに町のあちこちで笑いが起こった。
◆
そして――東門前。
そこはもう祭りのような盛り上がりだった。
「ハルさん! これ持っていって!」
「道中の怪我に効く薬草です!」
「干し肉追加だよー!」
「二人で食べるお菓子も!」
「腹が減ったらうちの店に寄れよー!」
「わああああ……! ありがとう!!」
両手いっぱいのお土産が積まれていく。
「ハルー!!」
「リナー!!」
「また帰ってきてねーー!!」
「二人とも気をつけて行ってこーい!!」
子供たちが花を振る。
老人たちが深く頭を下げる。
商人たちが手を振り、守備隊が胸に手を当て敬礼する。
そんな温かい景色を前にして、ハルの胸の奥がじんわり熱くなった。
◆
そして、リナがそっと隣に立つ。
「ハル。私……本当はね、最初に会った時から思ってたの。」
「え?」
「あなたって……危なっかしいけど、優しくて……なんか、目を離したくない人だなって」
リナは視線をそらして、頬をほんのり赤くする。
「だから……一緒に行く。
あんたがお気楽に旅できるように、私がちゃんと見ててあげる!」
「リナ……ありがとう!」
ハルの素直な笑顔に、リナはさらに顔を赤くした。
「べ、別に! 見ててやるだけだから! 同行じゃなくて監視だから!」
「はいはい、頼りにしてます監視役さん!」
「わー!! いま絶対バカにしたでしょ!!」
二人のやりとりに、町の人たちは笑顔を浮かべた。
◆
そして――ついに旅立ちの時。
「行ってきます!!!」
ハルが大きく手を振る。
「いってらっしゃーい!!!」
「また帰ってこいよーー!!」
「元気でねー!!」
「リナちゃん、ハルを頼んだよー!!」
「任せてくださーい!!」
町全体の声援が二人を包み込む。
「よし、リナ! 行こう!」
「うんっ!」
ハルとリナは並んで歩きだす。
東へ続く大地の向こうには、まだ見ぬ町、まだ見ぬ人々、そして新しい“人助け”が待っている。
二人の背中に、町中の声がいつまでも響いていた。




