IF 最果て―ABSOLUTE JUSTICE―
次回はぷちくろ!裏話的なやつ
―これはIFストーリー―
―叶ってはいけない夢が叶った叙事詩―
―過激を極める可能性大―
―視聴は自己責任である―
糸幹人と人間、エルフは恐れていた。
この異界の滅亡を。
そして、全ての自由が縛られる瞬間を―
【糸幹人が滅ばず、水宮颯太が水仙に会わず現実世界からやってきた場合】
糸幹人は今日も平和だった。
何事もなく、エルフに襲われる心配もない。
家族も生命の活動を続け、火に囲まれることもない。
焼け切られてしまうこともない。
齟齬も争いも起こらない、平和な人生を生きていた。
「今日も豊作だな、植物がちゃんと育っている。」
「良かった。やっぱり気分がいいな、植物がちゃんと育つと。」
「だな。」
王族はいつも通り、農業をし、民の味方をした。
「ほれ、魚だ。」
「ありがとう。はい、約束の金です。」
「ありがとな。やっぱり貿易は良いもんでねぇとな。」
「良い貿易は、私達にとっても気分がいいものですよ。」
「現界の者たちの言う『一石二鳥』と言う言葉はここから来ているのだろうな。」
海賊たちはいつも通り、漁業の手助けをし、悪人らしからぬことをしていた。
「種族間の宴は変化と思っていたが、以外に良いもんだな」
「ですね。」
「糸幹人か、良い種族名じゃないか。」
「エルフ族、良い種族名です。」
種族間の醜い争いなんて、この世界線では吹き飛んでいた。
ただ、何かが違う。
私はそう思っている。
定番と呼ぶべき展開、定番と呼ぶべき会話、平和と呼ぶべき平和。
これがいつまでも続くと言えるのだろうか。
この世界線の人間たちは皆、謙遜し合って生きているんじゃないだろうか。
これが、一部の望みだけが叶った世界線か。
なんとつまらぬものだろう。
なら、一人特別な方を呼ぼうではないか。
「ほぉ、ここが異世界って場所か。」
草原を踏み荒らし
「どけ、ここは俺の通る道だ。」
道徳心に欠けており
「この街に隕石が降る〜!なんつって♪」
堂々と嘘を付く苦痛のくの字もない、非道の人間。
水宮颯太である。
この世界線の颯太は悲劇を経験せず、傲慢な面持ちのまま異世界転移という形で侵入してきた犯罪者。
正規ルートで異世界転移してきたかもわからず、違法行為を繰り返しここに来たのではないかと。
そう思ってもおかしくないほどの非人者だ。
「何だ?このちっこいやつは⋯目障りだ、排除しろ。」
「はっ!」
彼は一種の独裁者で、全てにおいて怠惰であった。
そして強欲で傲慢で折角の平和を台無しにするほどの犯罪者だった。
勿論それには、種族部族の有無なんて関係ない。
どんなものでも彼が気に入らなければ全て排除。
老若男女関係なく、無常で蹴り飛ばし締め殺し奴隷にする。
「こいつ、気に入った。妻にして飼ってやる」
隙あらば娶るなんてことは平気でやる。
しかも家族は皆殺し。
逆らったら生贄コースか生け捕りコースか死刑の仕方を選ぶことになり、それをも拒めばすぐ処刑。
遺言書もかけない悲しい結末を迎えることになる。
水宮颯太が異界を訪れたせいで、全ての均衡は支離滅裂に引き裂かれ、平和ではなくなった。
誰もが彼を避けようと必死に。
彼を避けるために持ち場を離れ、国王さえも仕事が当たり前のように出来ない状況下に。
海賊は悪人として見せしめに使われ、海賊は評価が下がり喧騒だらけに。
雑音も絶えず、火炎の音も鳴り止まない。
人の声さえ、エルフや糸幹人、他の人間の声さえ聞こえない。
これが、望まれていた展開。
平和が一日にして滅ぶ瞬間⋯!
私が望んだ展開は、今、私の手の中にある!
彼が作ったんだ、彼を誇りなさい!
彼が生み出したんだ、彼を崇めなさい!
まだ生き残っている奴隷や種族部族はいるはずでしょう!?
崇め讃えなさい、水宮颯太を⋯!
声で吊し上げなさい、水宮颯太を!
と、感極まっていたのも束の間。
彼の処刑は人知れず、行われてしまっていた。
糸幹人やその他の絶滅人族、絶滅種族、絶滅部族を作り上げた原初的存在。
呪いの鬼、呪鬼。
相対する瞬間はいつも、彼が調子に乗った瞬間から始まる。
処刑の一時を、彼らは皮肉のように楽しみ、颯太が泣き叫んでいるのも知らず、武器を四方八方、一心不乱に振り続けた。
「や、やめてくれ⋯妻も子もいるんだ⋯」
「捨てられたんだろ?」
「⋯仲間がいるんだ!」
「どうせ嘘だろ?」
「⋯お、俺を誰だと思っている!」
「非常に極悪非道な犯罪者、とでも言うかな。」
「し、死んでしまえ⋯貴様らのような曲者、死んでしまえば良いのだ⋯!」
「悲しいことに、死ねないんだ。君とは違う、まるで違う。」
「ぶ、武器を置け⋯悪いことは言わん、武器を置け⋯!!」
「現界では、そんな事言わなかっただろうに。」
「な、何故現界のことを⋯!しかも俺は現界でも悪人のはずだぞ!?」
「ふふっ、知ってるさ。だから敢えて言わせたのだよ。」
「何っ!?」
「君は現界の時とはまるで違う。狂ったように人を縛る、それを半強制的にしているように感じたんだ。もしかして君はまだ、処刑されることを知っていたのでは?」
「ち、違う!そんなの違う」
「違わないさ!!何故なら、顔でわかるもの。」
「!?」
「偉そうな口を聞くようで悪いね、でも私は君より地位が上であるため、君が僕に攻撃することなんて出来ない。」
「⋯」
「はぁ、こうやって君のような狡猾であり滑稽である者を何人殺したと思ってる?」
「さぁ、俺は知らん。」
「星の数ほどだよ。君は何もわかってないから私が説明してあげたのさ。感謝しなよ?」
「そう長々と相手に話されたことがない故、回答ができない」
「今されたでしょう?しかも、君と似たような顔の人、何人も殺してきてるんだよ私。アッハハハハハハハッ!狡猾なやり口で滑稽だね私も笑」
「そんなことはどうでもいい、処刑しないのか。俺を。」
「処刑するさ、するとも、したらどうする、すればこそ、したらこそ、すぐ殺すなんて残酷だからね。じっくり口論でいたぶって殺してやるのさ。」
「化け物かお前は」
「化け物で結構。君も僕と同じ魑魅魍魎の類なんだし⋯同族嫌悪はお互い様だろ。」
「急に豹変して、お前は百面相だとでも言うのか」
「そーともいうね、だって君がそうなんだもの。」
「何でも俺と重ね合わすな、もう頭にきた。処刑しないなら俺から処刑されに行くぞ!」
「君じゃ無理だ。あぁ、もう⋯もうちょっと楽しみたかったのになぁ⋯語り手君だってもうちょっと楽しみたかっただろうに⋯」
「うるせぇ、殺されてぇのか!!」
「今殺すやつが何いってんの?僕の気持ちぐらい考えようとは思わないの?」
「うっs」
「あ、そっか!君、僕と一緒なんだったね♪」
「ぐはっ!?」
「はぁ⋯終わっちゃった。呪いの鬼って強いから辛いんだよねぇ⋯」
つまらない終わり方だ、叙事詩がこんなのでは神に叱られてしまう。
死神か閻魔様か、誰か助けてくださいませ⋯!!
「叙事詩、これが最高の叙事詩さ。何言ってんのかさっぱりだ。」
はぁ、私の出番か。
「いや、君にちょっとしたチャンスをやりたい。」
偉そうにいいおって⋯
「まぁ、聞くだけだ。その身一つで数十秒ほど貸してくれればいい」
なんだ?言ってみろ。
「本来の道を辿った颯太を、『利炉硫』という少女を使いつつ殺してきてくれないか?」
殺してくる⋯?そいつは良い!だが、何故私なのだ?
「君だからこそだよ!まともな地位を与えられた君だからこそ、この任務は果たすべきなのさ!」
なるほど、こいつはいい情報を得た。
良いだろう。その任務、受けよう。
久しぶりにあの者にも会える。
そう、あの者にな⋯
「そうそう、その意気だ!私は一生、合うことはないけどね。」
すべてが終わりを迎えた頃、彼は死ぬ。
遊園地に誘われて、三途の川を辿って首を吊ったまま死ぬ。
その運命を、(私・俺・僕)は楽しみにしている。
次回のIFストーリーは、呪いの鬼さんの鬼ごっこ♪
そしてまだ、楽しみは続く―




