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17 真剣勝負

 ―会場―


 「あいつら、大丈夫か⋯?よく見えねぇからわかんねぇ⋯」


 「兄弟、待機席から外は関係者は出ちゃいけねぇ的なこと言われてなかったか⋯?」


 「そういう描写が作者は面倒らしいな。」


 「ちょ!メタいぜ老爺!!」


 「御主まで老爺と呼ぶか!老けたのは⋯御主らにはわかるまい。召喚と夢転移の違い、だそうじゃ。」


 「召喚?」


 「夢転移?」


 「「なんのことか説明してもらっていいか?」」


 「皆まで言うな馬鹿共!わかるまいと言っておろうが!」


 「あ、そうだった。悪ぃな老爺!」


 「そうだな、悪いっ!」


 「それ、わざとじゃろ。というか、さっきの話に戻るが⋯何故俺達はメタい話を話せるんじゃろうなぁ。他の作品だと、登場人物はちゃんと自分達は作品にいるってことをわかっているように、メタい話をしない

ように見えるのじゃが⋯」


 「「?」」


 「あーすまん。御主らにはちと難しいことを説明してもうた。」


 「(やはり最期となる前に、望まれし世界の颯太に話しておかんとな。夢転移と召喚の違いを。その他のことは、他の世界線の颯太が話してくれるじゃろうから、そいつらに任せる。そして俺は、最期に言いたいことを考えておく。その最期ももう、決められてしまっているからのぉ。)」


 「俺ももう老けたわい、この短時間で颯太と口数を交わせて、本当に良かった。これいいな!」


 ―プール 水中―


 集中集中⋯

 集中が一番の味方だ。

 こんな時に冷静沈着でなくて何が颯太だ!


 僕はお母さんに大切なことを教わった。

 その頃はまだ幼くて、何を言っているのかいまいちわからなかったことばかりだった。


 「人を守ることこそ真の盾」だとか、「君は君次第でいつもの君より十二分に強くなる」だとか。

 変に固い言葉ばっかだった。いまいちピンとこなかった。

 けど、大人になった今だからこそわかる。

 その言葉一つ一つに意味がある、その言葉を大事に育てることこそ高嶺の花を掴む一つの手!

 

 その複数の言葉の中で、複数ある座右の銘は⋯

 「冷静沈着ほど右に出る最強の武器はなし」。


 お母さんとトランプをしたとき、僕は何度やっても何度やってもお母さんに勝てなくて、それにむかっときて⋯

 「お母さん嫌い!」と思わずいってしまった時に言ってくれた言葉。


 最初、その言葉を言ってしまったとき、「しまった!」と思い、なんとか誤魔化そうとした。

 だけど、お母さんはなんとも思ってないような顔をして僕を見た。

 正直今でも「なんであの時怒んなかったんだろう」って思ったりする。


 「よ〜し、ゲームを再開しようっ!」


 にこやかな表情に戻り、カードの準備を始めたお母さん。

 何か気にしてないかと、僕はソワソワしながら心配と謝罪の言葉をかけようとした。

 すると、お母さんがさっきとは打って変わって、真剣な眼差しで僕を見た。


 「いい?イライラ鬼になることは割と良いことだと、私は思ってます。でもね、冷静沈着ほど右に出る最強の武器はなし!つまり、イライラ鬼になったとて、ゲームには絶対に勝てません!ってことっ!」


 「へぇ〜」


 冷静沈着ほど右に出る最強の武器はなし、噛み砕いて話してくれた意味しか僕はわからなかった。

 でも、大人になって知識量が増えて、学んでいくことが楽しいと思えるようになってきて、いじめられてはいたけど、ちょっとずつお母さんの言っていることがわかってきたんだ。


 そして、僕はある時、スマホで『れいせいちんちゃく 意味』と打って検索した。

 もう一つのどうやって繋げたのかわからなかった言葉、『右に出る』という言葉についても検索した。

 中学時代のときだったか。


 親指がすっと、すっと、一つの文字を紡いでいき、その好奇心に僕は抗えなかった。

 そして、検索の結果が出た。


 【冷静沈着 読み方 れいせいちんちゃく 冷静で落ち着いているさま。】(Weblio辞書 引用)


 落ち着いているさま、こう書かれてあった。

 でも、『右に出る』という言葉には何故か、『右に出るものはいない』というもう一つの言葉があった。

 枝分かれってやつなのだろうか。


 「どうしてだろう。」


 僕はそう思いつつも、『右に出る』で検索し、縦に並んだ内のサイトのリンクを吸い込まれるように押した。

 

 【右に出る 読み方 みぎにでる 「右に出る者はいない」で、その道でより優れた者がいないことを表す表現。】(Weblio辞書 引用)


 関連付けられた言葉、ということか。

 意味を整理すると、『れいせいちんちゃく(冷静沈着)』は落ち着いていること。

 『右に出る』は『右に出る者はいない』から何かが居ないことを抜き取った言葉で、それ以上優れている人や物がないこと。


 つまりお母さんは、「落ち着いていることほど強いものはない」と難しい言葉で伝えたかったのか。

 僕にとって難しい言葉は、二つしかないから。


 こんなこと、なんでもっと早く気付かなかったんだろう。

 お母さんが死んだ今、こんなこと知っても意味がないっていうのに⋯

 僕は心の中でそう思い、後悔した。


 「落ち込むことないのよ。だって颯太は、強いでしょ!」


 お母さんの声がした。

 姿は見えずとも、シャンと響いてしっかりわかる、子守唄のような声が。


 「お、母さん⋯?」


 僕は、飼い主を見つけたような犬のように抱きつこうとした。

 でも、抱きつこうとしたら⋯

 火花や煤のように一瞬で消えていった。


 そんな、中学時代で唯一腐ることなく残り続けてる、少し前を向けた出来事。


 僕は今、異世界という現実世界とは違う世界にいる。

 ここではその二つは『現界』と『異界』って呼ばれてるらしいけど。

 沢山の人が居て、沢山の人と関わって、沢山の知識を得る。

 これからそういうことが多くなる、絶対。

 壁も敵もどんどん増えていく。


 そういう時こそ、冷静に笑ってやるんだ。

 これが僕だって見せつけるようにね!


 「(もう少しで二週往復が終わる⋯!)」


 もうすぐ、三周目か⋯!


 休憩無しで、そのまま続けるっ!!「休憩無しで、そのまま続けてやる!!」


 ―天然三人は―


 「⋯はぁ〜!行けましたぁっ!」


 「颯太側の女子陣、因子!1分17秒でゴール!!」


 「⋯い、行けたわ⋯!やっと、終わったわ⋯!!」


 「颯太側の女子陣、水仙!1分56秒でゴール!!」


 「あとは、ハイドだけね。」


 「応援しましょう!」


 「そうね!頑張れ〜!ハイド!!」


 「ちょ、ちょっと待ってください⋯?よく見たらハイドさん、動いてません!!」


 「えぇ〜!?」


 ―水中―


 「(なんで、こんなところで⋯溺れそうになるの⋯?私はどうして、こんなに弱いの⋯?強くなれたはずなのに⋯あと、もう、ちょっと⋯なの、に⋯!)」


 ―再び会場―


 「ボス!」


 「なんだ?そんなに慌てて⋯」


 「見てないの!?ハイドが動いていないのよ!?」


 「なに!?⋯本当じゃないか!!くそっ、俺としたことが⋯救助してくるっ!!」


 「え、えぇっ!?そういうのってありなの!?」


 「今助けないでいつ助ける!!こんな時まで勝負に拘るな!!あと、強力魔法飲ませたのか?飲ませてなかったらこんな事は起きないはずだ!!」


 「飲んでた、飲んでたわよ!ん?もしかして⋯効果時間の問題!?」


 「あそこ見て下さい!薬が⋯!!」


 「なるほど、飲む薬を間違えたか、複数の薬を飲めなかったかのどちらかが原因ね。」


 「なるほど⋯今度からは気を付けてくれ。あと、溺れた用の回復魔法を飲ませるため、これを預かっててくれ!」


 「わ、わかったわ。因子さん、貴方も。」


 「わかりました。」


 ―水中―


 「(⋯まだ少し息があるか。)」


 「そ⋯⋯う⋯⋯⋯た」


 「(待っていてくれ、今助けてやるからな!)」


 ―再び会場―


 「薬を早く飲ませてやってくれ!それには体力回復の効果もある!戦いにも使えるだろう!」


 「はい!」


 「ありがとう!ほれ、飲め。」


 「⋯⋯⋯あれ、ここは⋯?」


 「ハイド!!」


 「良かった⋯!」


 「あっ⋯!勝敗は!?」


 「ハイドに関しては点数なしだそうよ。」


 「そ、そんな⋯颯太⋯」


 「でも、良かったじゃない。ハイド、貴方の命が助かったんだから。」


 「良くない⋯!!颯太は、颯太は!!」


 「というか皆さん、颯太さんの勝負⋯見ないんですか?」


 「「あっ!」」


 「(⋯はぁ、馬鹿だな。この女達。)」


 ―鵜男と颯太のレーン―


 「頑張れ〜!!颯太!!あと少しよ〜!!」


 「頭魚野郎なんかに負けるな〜!!」


 「負けないで下さい!!颯太さん!!」


 「(一周目二周目にスピードを出しすぎたのか、明らかにスピードが落ちている⋯一周目は数十秒で半分だったというのに、どうして急に⋯いや、普通のスピードに合わせて、それを基準に本気で泳いでいるのか!?そんな事する必要、ないというのに⋯何故⋯?)」


 ―水中―


 うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!!!!!」


 〈颯太 スタートから2分30秒 残り 50m〉

 〈鵜男 残り42m〉


 ⋯何処からか、水仙達の声が聞こえる。

 それも、水を越して響く歓声が。

 気合が再度入ったのか、僕は手足と体を魚雷よりも速く動かす。


 「(うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!)」


 「(合わせる必要がなくなったようだ⋯!本気で行くぞ!!うぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)」


 〈颯太 スタートから2分30秒 残り 30m〉

 〈鵜男 残り35m〉


 ―再び会場―


 「「「頑張れぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」


 「鵜男!負けるなぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 「「「司会者の仕事放棄して自分のチーム応援すな!!」」」


 ―水中―


 こんなところで、

 

 「(こんなところでぇぇ⋯!)」




 「(負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)」負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 「ゴォォォォォォォォォォォォル!!!!!!!!!!!」


 〈颯太 スタートから2分57秒 残り 0m〉

 〈鵜男 残り19m〉


 「はぁ〜!」


 ゴールできた⋯!鵜男の方はどうよ?

 って、まだ上がってない!?

 これはわんちゃんイケる!


 「はぁ〜!!どうだ?⋯先にゴールされたか、畜生!!」


 〈鵜男 スタートから3分15秒 残り0m〉


 「結果発表!!激戦の末、どちらも非常に素早いゴールを果たしたが⋯結果はどうか?」


 正直総合だから無理か⋯と思っていたけど、勝てるといいな⋯


 「ポイント総合点数⋯」


 「ちょっと待て!」


 「何故?」


 「罪を犯した罰として、俺の点数に×2をして欲しいのです!俺の不埒な行為のせいで、トラブルは起きたし、ボスを悲しませてしまったし、相手側全員が死ぬ可能性を生んでしまったので、その代償として。結果として颯太は、俺に速さで勝ちましたし。それで俺が勝つのは納得できません!×2をして下さい!」


 「わ、わかった!×2をしよう!こうしてこうして、こう!出来たぞ!!」


 「有難う御座います!あと、涙目ですよ?」


 「な、涙など流してない!!これはプールの水が目についただけだ⋯!!泣いてなどぉっ、泣いてなどぉぉぉっ!!」


 涙脆いボス、優しさが溢れてる⋯


 「颯太チーム、370P⋯鵜男、390P⋯⋯とってぇっ、がっだのばぁぁぁぁ⋯!!!!」


 「泣いてて上手く聞こえないよぉ!!」


 「がっっっ、がっば⋯⋯か、勝った⋯のはぁ、勝ったのはっ⋯!!颯太チームだぁぁぁぁぁ(泣)」


 「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」


 「負けたぁぁぁっ!!!!」


 ―?―


 「は!?く、口で言ったぞボス!!」


 「(´;ω;`)(裏切られた気分)」


 「鵜男のやつも変にアドリブ効かせるしよぉぉ⋯!!あのバカぜってぇぶっ殺してやる!!」


 「┐(´д`)┌(無駄だよ。ボスが許さない。だって鵜男、ボスの息子だもん。)」


 「⋯は!?バカが詰まってんのかあいつ!!あぁもう!殺してぇぜバーカが!!」


 「(# ゜Д゜)(今までのは僕達が見てたから、関係なく演じてたらしいけど⋯最近は僕達に対する敵意が強くなったからね。すぐ見破れたよ。)」


 「お前すげーなバーカが」


 「(≧▽≦)(そ、それ程でも〜あるよっ♪)」


 つづく

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