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14 根城〈アジト〉と試練

 ―大族の根城―


 「ボス〜!!」


 「こ、今度は何だ!?」


 「じゅ、呪鬼が謎の暴走により脱落⋯遺体が見えず、その場で死亡した模様!」


 「何ぃっ!?あいつら、なにか仕掛けたのか⋯?」


 「見当たりませんでした⋯恐らく呪鬼ですから、自我の暴走かと⋯」


 「そうか、あの種族は自問自答を繰り返すと自我を忘れ暴走するんだった⋯つ、使えないなぁ⋯!!!」


 「(言葉を選んでいる⋯!言いたくないので自分の中の衝動的感情を抑えている⋯!でもちゃんと極悪非道っぷりを引き出している⋯この人、やるボスだ!)」


 「こっちにも近付いてくるはず⋯俺達があの種族を滅ぼしたんだ、落とし前はちゃんとつけないとな⋯!」



 ―大族の根城近く 森―


 魔法で少し装備と服を整えよう。

 かなりの長期戦になる予感がするからね。


 「な、なにこれ⋯?」


 「現界での戦い前の服装!ちょっとカッコつけてる感が否めないけど⋯僕こういうの大好きなんだ〜」


 「なら着る〜」


 「掌返し早!でもそこが可愛い⋯!」


 「ど、どう?」


 「カッコいいよ水仙〜!めっちゃ似合う!」


 「そう!?そう言ってもらえると、嬉しいわ!」


 「私も、どう⋯?」


 「うんうん!ハイドもカッコいいよ!サイズも合わせたから、ピッタリだよ〜!」


 「ありがとう!少し恥ずかしかったけど、そう言ってもらえると嬉しい!」


 「ど、どうですか?」


 「因子さんも妖艶且つカッコよくて似合ってるよ〜!!」


 「有難う御座いますっ!」


 二人は言うまでもないな、カッコいい。

 老爺もまぁ、イケオジ感が出ててカッコいいよ。


 「「「す、スルーかよ!!」」」


 しっかし、意外とずっしりしてる鎧を用意してくれるものだな〜

 一般魔法は便利過ぎて、所々使い所を見失う⋯

 あとは、剣か。

 魔法で剣生成するのって、意外と難しいんじゃなかったっけ?

 どうだろ、作れるのかなぁ⋯


 「ほっ、つ⋯作れたぁ!?」


 しかもなんか妖刀みたいなオーラ出してるし、この一般魔法だけチート説。

 これは老爺に持たせよっと。


 「お、おい⋯!こんな強そうな武器、良いのか!?」


 「なんだ?要らないのかぁ〜?」


 「い、いるぞいるぞ!俺にはこれくらいが一番似合うに決まってるわい!」


 「ごめん、主張激しい。」


 あとは、スキルやステータスの強化、技の追加の薬を飲みまして⋯


 「「「「「「「まっず⋯」」」」」」」


 いざ、出陣だーーーーーー!!!!!!


 「「「「「「おーーーっ!!!!」」」」」」


 「フッ、来たか馬鹿猿共め⋯!ってなんか武装してる〜!?だが最早、俺の敵ではないわ!!」


 【特殊スキル 糸ぶつ切り】


 「これでどうよ!」


 弱っ!あと見応えねぇよ。

 不採用!努力だけは認めます!


 「そ、そんなぁ!!って、縄!?なんでぇ!?」


 「縄じゃない、糸!糸の使い方も知らず、縄と糸の区別もつかないなんて⋯あんた、馬鹿だね。」


 「ぶ、侮辱された⋯」


 【二人目 撃沈】


 ―監視室―


 「あいつら、強くね⋯?もう一人脱落したの⋯?」


 「ボス、なんか武装してますよこの者たち⋯」


 「くっ、強い⋯」


 「(往生際が良い⋯!ボスの鏡だこの人!)」


 「もっと警備を増やせ!」


 「わかりましたっっっっっ!!」



 ―根城付近 橋―


 橋が上のままだ、どうやって行こうか⋯

 左右端には水か。

 城の防御システムとしてはやけに上出来だ。

 もしこのまま待っても、後ろに倒しきれていないやつが居て、そいつらに落とされて水にドボン!

 水に飛び込んだとしても水に何を仕掛けてあるか⋯


 あ、さっき強化魔法で色々一般魔法探ってたとき、謎の瓶があったんだ。

 それ皆で飲んだら、やけに誰も何も感じなくなった。

 ってことは⋯多分、物理攻撃とか属性攻撃とか無視できるようになったんだ。

 だって、飲んでなきゃ多少風が冷たいとか矢の先がどっかに刺さって痛いとか感じないもん。

 そんで誰も痛いって言ってないわけだから、これは多分チート能力を手に入れたな。


 「おい、老爺⋯また騙したな?」


 「ど、どういうことじゃ?」


 「だって、一般魔法はそんなに強くない的なこと言ってたじゃん!!」


 「あ〜忘れたわそんなこと」


 「こんな時に大事なこと忘れんな老害野郎!!」


 「最期の旅路だから仕方ないんじゃ!!」


 で、どうする?

 よし、下から潜り込もう!

 泳ぎも魔法の効果でなんとかなってるでしょ!

 もう全て頼ろう!

 幹部とボスみたいなやつに相対したら、堂々と『ドーピングしました』って言えば良い!

 

 「皆、潜るぞ。」


 「「「私泳ぐの苦手⋯」」」


 「飲んだ強化魔法でどうにかなる、行くぞっ!」


 「「「お、おー!」」」「「了解!」」「わかったのじゃ!」


 ⋯久しぶりの海だな、感覚はあんまりないし溺れる心配もなさそうだ。

 ってかもうこれ、ほぼマ○○ラの強化版じゃねぇか!!


 「って、なんで下穴空いてるわけ!?」


 構造アホか!敵に落とされてわーってなってこの構造見たら『どういう原理で海の中に浮いてんだよ!』って誰しも思うだろ!

 溺れて皆死ぬと勘違いしてたのか、人間を舐めるな大族!


 「ふぅ、なんとかここまで行けた⋯皆は?」


 「「「「「「怖かった⋯」」」」」」


 だよな、ごめんな。

 水の中だから何が潜んでるかわかんないし、そもそも殆どの人が泳げないっていう⋯

 流石にやりすぎた、ごめんな。


 『諸君!どうやらその感じだと、あの下がらない橋を使わず突破したようだな。』


 え?あれ下がらないの!?


 「んじゃあどうやって行き来してんだよ!」


 『そんなもの決まってるだろう、下から行ってるんだよ!出口入口が何個もあるわけじゃないし!』


 「お前らメンタル魚級かよ!!」


 肺活量がすごすぎるのもあるけど、ずっと籠もってるわけにもいかないから、数え切れないほどの行き来を繰り返したんだろうな。


 『これから諸君らに、試練を挑んでもらう!』


 「試練?」


 『先ほど諸君らは大量の水の中を泳いでいっただろう?』


 「う、うん。」


 皆にとってはだいぶキツかったみたいだけど。


 『今から、俺の用意した水着を着てもらって、人間界の魚と呼ぶべき幹部の者と対決してもらう!』


 「よし、帰ろ。私達じゃ無理だ。仇討ちはまぁいつか。」


 「そ、そうだな。」


 『おい!逃げるな!!』


 「皆は今ので水にトラウマ背負ったんだ!魔法で多少は泳げるにしろ、もうこれ以上鬼畜を味わわせるわけにはいかない!」


 「そ、颯太〜!」


 『なら、お前がやれ!少年!!』


 「しょ、少年じゃな!!⋯え?ぼ、僕⋯?」


 「そ、颯太が⋯?」


 いきなり無理難題をふっかけてきたなこいつ⋯!

 往生際が悪いっていうか、逆に良いっていうか⋯


 「なんで颯太なの⋯?ねぇ、なんで颯太なの!?わ、私達は泳ぐなんて今までろくにしてこなくて⋯もう怖くて泳げないなんて気持ちになっちゃったけど⋯で、でも!私達がやっても、良かったのよ!?」


 「「うんうんうんうん!」」


 「俺達も、お嬢ちゃんたちに合わせていただけで、まだまだ泳げ⋯」


 「馬鹿野郎!そんなこと三人の前で言ったら!!」


 「おいおい、兄弟⋯」


 「だったら貴方達がやればよかったじゃない!!」


 「水仙にこんな事言わせておいて、態々悪人面を晒すなんてどういうつもり!?」


 「私は紳士です。ですが、貴方達のその言葉も行動も、颯太さんの事を一切考えていない失礼で不敬で無礼で失敬で滑稽なものだということ⋯許せないと思う以外何がありますでしょうか。」


 「「「ひ、ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」


 こいつらはこいつらで馬鹿だったな。

 ボコスカボコスカ殴られてやがんの、女性三人も同罪だっていうのに。


 『何故少年を選んだかだって?それは、お前の行動一つ一つには、抜かりがないほどに味方を守りたいという真意があった。揺るぎない信念があった。それが後ろのお前達には足らなかった、ただそれだけだ。』


 筋が通ってて納得がいく⋯!?

 阿呆なボスじゃなかったんだ!安心安心〜

 なら、僕が行ってもいいな。

 こいつの期待に応えるためにも、仲間のためにもっ!

 実は僕、魔法の力がなくとも、水泳の成績めちゃくちゃ良かったの覚えてるから。

 二十代後半の時に一回だけ、友達数人でプールに行ったのだが、その時に⋯

 「泳ぎ方と泳ぐ速さ魚雷かよ笑」って、友達に言われたのだ!

 魚雷は海の高い密度などで減速することを防ぐため、抵抗するという仕組みを施し、並の人間では追いつけないぐらいのスピードを維持できるように工夫していると、スマホでチラッと調べたことがある!

 その施しの効果は新幹線よりも速く、リニアよりかは遅い程度ではあるものの、圧倒的なスピードで泳げるのは確か。

 泳ぐ種目も人体構造を無視するものでなければ、全部速く泳げる!

 つまり、僕は何故か水泳だけチート急に速いというわけだ!

 これはっ、勝てる!!


 「そこまで言うなら、僕⋯やるよ!」


 「え⋯?そ、颯太⋯?」


 「水仙達に水着なんて破廉恥な服装、着せたくないからね。僕が行く!」


 「だ、だったら!私も行くわ!」


 「ハイドも行く!」


 「わ、私だって!」


 「お、俺達m」


 「男たちは来なくていい。足手まといになるだけだ。特に老爺、お前はダメだ。」


 「ど、どうしてじゃ!!」


 「どうしてもなにも、こんなとこで死にたくないだろ?死に場所ぐらい老爺が選ばないと。」


 「颯太⋯!って、死ぬ前提でそれ言うのやめい!!ムカつくわっ!!」


 『良いだろう。では、泳ぐ用のプールの個数と、水着の数を増やし⋯長さを増やそう。』


 「ど、どんと来いっ!私達は絶対に負けない!」


 「後ろの人達とは違うってとこ、見せてやるっ⋯!」


 「私は、紳士であり⋯人魚、ですから⋯!」


 『強がっているのが見え見えだが、諸君達の信念は先程より強くなっている。少年にも勝てそうなほどだ!』


 「だから!僕は少年じゃない!!あと、僕の仲間と僕を比べるな!これは幹部対僕達との団体戦のようなものだ!!少しは競ったって構わないかもしれないけど、僕はその言い方不満だ!!」


 『やはり、君の言葉は濁りがない⋯嘘偽りのない信念がしっかりしている言葉だ。』


 「そんなことどうだっていい!水着はどんなのだ?さっき破廉恥の、とは言ったが、多分この世界でも種類があるんだろう?あと、何処で着替えればいい?教えてくれ!」


 『男子用の更衣室と女子用の更衣室、それぞれ左右にある。それを使えばいい。水着は基本生地がしっかりしているセパレート。男は変わらないが、女はスカートじゃなく⋯ぱ、ぱぱぱ⋯パンツ系、だ⋯!あと、念の為脱いだものは保管される。試練のあとすぐ水着の服装で戦うっていうのも無理があるだろう。』


 色々言葉が詰まってたな。

 ボスもちゃんと男なんだな、安心安心。


 「颯太と、離れる⋯」


 「な、なんでそれだけでしょぼくれてるんだ⋯」


 「私も嫌。颯太と一緒に!」


 「ダメだ!!流石にダメだ!!」


 「え、私もd」


 「因子さんもダメだ!着替えるとこ見られるの、流石に恥ずかしいし⋯!」


 「「「え〜⋯」」」


 女は女、男は男っていう常識をこの天然達は知らないのか⋯

 もしかしてさ、好き過ぎて離れられない感じなのか⋯?

 だから、僕そういうのは苦手だって言ってるでしょ〜!?


 その後僕は、嫌々言いながら男の更衣室に恥もなしに堂々と入ろうとする三人をどうにか説得し、自分たち専用の場所で着替えさせることに成功。

 そして、着替え終わり、更衣室の出口を通った途端⋯


 「うわぁぁぁぁぁぁん!会いたかったよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 「しくしく、私達をおいてかないで欲しいわ⋯」


 「私は紳士ですが、貴方が居ない瞬間はすごく寂しかったです⋯」


 こうなった。

 そういう事を言ってくれるのは、非常に嬉しい。

 だが、僕にも恥ずかしさくらいあるのだ。

 守りたいから守っているし、魅力もわかるとはいえ⋯

 ハーレムは得意じゃないし、下系のも得意じゃない。

 それに、三十歳のおっさんの裸姿やデカブツなんて誰が見たがる!

 三人が見たら、皆絶対吐くに決まってるな。

 そんな想像をすることすらも、気持ち悪すぎて吐き気がしそうだけど⋯


 ということで、皆準備できました。

 相手はどんな魚なのか、気になるなぁ〜!


 『どうやら、準備できたみたいだな。では、競ってもらう対戦相手に出てきてもらおう!この者だっ!』


 「フッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!我がボスの為に、我が一肌脱いでやる!おい、そこのお前!ボスのようなお優しい方に無礼な態度を見せつけたこと⋯後悔するといい!!我はボスの足元にも及ばないが、お前たちより数億倍も数那由多倍も、数無限対数倍も強いぞ!!」


 いや、数の出し方ガキか。

 しかも、全然姿現さんし⋯


 『お前⋯早くその殻を破って出てきたらどうだ!選手が待っているぞ!』


 「は、はいっ!すみませんでしたっ!」


 お、来た!って、えぇ!?

 頭魚じゃんか!どんな魚なのかとは言ったけど!

 それは⋯比喩表現の中の『隠喩』ってやつだ!

 ってか、この感じ⋯種族かこれ!

 おいおいあいつ騙したな!?


 「ん、んんっ⋯ほっ!」


 被り物だったんかい!!

 ってか、清々しいくらいにかーなーりイケメンだなおい!

 僕なんて到底、足元にも及ばないくらい⋯

 比喩表現で言えば、塵も何も落ちていない綺麗な砂浜と海だ!

 三人の反応は?

 惚れてたらかーなーり傷付くかも。


 「・ー・」


 無表情!?ってか、真顔!?

 完全に惚れてなくて、興味無いような表情してるっ!

 おいおい、神か三人共っ⋯!


 つづく

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