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13 情報会得

 ―グリム・セイスト 草原―


 こんな死に方、望んでなかったろうな。

 どんな過去を背負って、あんだけ暴走したかわからないし⋯

 どういった形で死んでったかも詳しくは見てないけど、俺が少しなにか違っていたら、あんな形で最期を迎えていたのかもしれないな。

 とにかく今は、安らかな眠りを―


 「⋯あやつ、どうしてあんな複雑そうな顔を?」


 「お?どうした老害さん、こっちじーっと見て。」


 「い、いやぁ⋯これからなにしに行くのか気になっておって〜」


 嘘だな、まぁでも⋯気にすることはないか。

 どうせ、さっきのさよならの告げ方が気に入らなかったってだけだろう。

 ってか、ここまで声届くんだな。

 姿がギリ見えるくらいなのに。

 こいつ本当に爺さんか?あ、そういやあいつがもう一人の颯太だって言って⋯

 は?こいつが⋯?嘘だろ!?


 「気になっておってと言っとるのが聞こえんのかぁっ!!!」


 「あっ⋯!ご、ごめん!ちょっとボーッとしてて⋯!」


 「(見抜いたな?俺が颯太だって。)」


 げっ、見抜かれた⋯

 やっぱり僕って、チョロいのか。


 「何ボーッとしてるの?もしかして、考え事?」


 「あぁ、あの老爺のことだよ。チラッと聞いちゃってさ。」


 老爺、悲しい顔してる。

 話に水仙が入ってきたからかな⋯


 「あ、あれってじーぴーえす?とか、はっしんき?」


 「そ。」


 「そう!それらの機能が入ってたのよね?」


 「うん。」


 絶対GPSとか発信機の機能の仕組み、わかってないだろ水仙⋯

 まぁ僕も、仕組みとかわかってないまま渡してたけど。

 どっかに魔法の紋章でも書かれてあるんじゃないかな?

 取り出してみよっと。


 や、やっぱりデカデカと紋章みたいなのが書かれてあった⋯

 意外と現界の技術って魔法で賄えるもんなんだな。

 皿取り出すのもくじ取り出すのもそうだったし。

 わかってるねぇ、異世界ってやつは!


 「それ取り出して眺めてどうしたの?魔法の紋章探し?」


 水仙にも気づかれてんじゃん⋯

 僕、色々鈍ったか⋯?


 「う、うん⋯!でも、よく気付いたね。」


 「異世界の魔法職人さんが良くそうやってやってるのを、チラッと見たことがあるのよね。」


 知識力のデカさだった!

 しかも、『私こんなにわかってるわよ』ってドヤってくるその余裕さ⋯!

 誰に教わった!いや、僕か。


 「へぇ⋯知識の容量すごいねぇ!」


 「少しオーバーじゃないかしら」


 バレ過ぎだよ今日!

 急にバレすぎてるよぉ!!


 「でも、現界の技術ってほんとすごいわよねぇ⋯これと似たような技術が人の手で何個も何個も作られてるのよね!すごいわぁ〜」


 好奇心はくじの時もそうだったけど、人一倍あるんだよなぁ水仙達って⋯

 そりゃそうか、異界からしたら現界の技術さえ綺羅びやかに見えるんだもんね。


 「でしょ〜」


 中には現界から来たものだと知られたくない人もいるんだよね。

 荷物運びといった『雑用』、こき使われるだけじゃなくて暴力もしてくる、所謂『奴隷』ってやつもこの世界には当たり前のように存在していそうだし。

 何ならこれから出会うかもしれない、というかもう既にそういう人に会っているかもしれない。

 目の前にいるかもしれない、そう。


 水仙⋯とか。


 「そろそろ行くよ〜」


 「あ、うん!」


 「貴方に言われなくてもわかってるわよハイド〜!」


 でも、今気にするべきことはそれでもない。

 根城に関することだ。

 老爺は、一応連れて行こう。


 「ちょっと待って〜水仙!」


 「ん?どうしたの?」


 「老爺、連れてっていい?」


 「ハイドに聞いたほうがいいと思うわよ、勝手に連れてくと怒られると思うし。私は全然構わないわ。色々気になること、あるんでしょ?」


 やっぱりこれも見抜かれてたか、流石は水仙だな!

 

 「ありがとう。」


 「老爺を連れてくる?どうして〜?」


 「色々気になることがあるんだ。」


 「私で良ければ話すけど。」


 「いや、ハイド。君はわからないことだらけじゃないか。」


 「そ、それはそうだけど⋯!なんであいつなんかに頼るの!?あいつ、敵なんでしょ⋯?私にはあんまり声は聞こえなかったけど、色々大変なことがあることもわかった。わかったのに、仲間のはずなのになんにも知らないでいくなんて、そんなの仲間じゃないじゃん!」


 感情が昂った。

 あまり聞かないような声の荒げ方だ。

 これは種族間で、色々違ってくるのだろうか⋯?

 それより、やっぱりハイドも知りたいのか。

 僕が隠していることを、その真相や真意、意味、そして出来事を。


 「わかった、わかったから、そんなにガミガミ言うな。全部話す、驚いて手を出したりするなよ。多分トラブルになるだろう。」


 「そ、それなら良いよ。手も出さない。」


 僕は、発信器のことや老爺の間で起きたこと。

 主に水仙にこっそり言ったり、呪鬼の僕が言ったこと全般をハイドにわかるように説明した。

 その時のハイドは、話を持ちかけ、伝えたときと同じ複雑な表情をしていた。

 怒りと悲しみ、憐れみに後悔⋯

 その全部を折り重ねて、一つの書類にしたような、ある意味情緒不安定な表情をしていた。

 でも案外、真面目に聞いてくれた。

 僕はそこに成長を感じた。出会って間もないけど⋯


 「そう⋯難しい話だし、色々大変だったんだね。老害さんが別の世界線の颯太だったのも驚いた。」


 「ほんと、そうなんだよな。こっちからも一つ聞きたいことがある」


 「なに?改まり過ぎはだめだよ。」


 「わかってる。君の先祖って、呪鬼に呪いをかけられたとかある?」


 「勿論、お母さんに耳が痛くなるほど、その話は聞かされてるよ。まさか、それも?」


 「可能性は無きにしもあらずだ、恐らくそうだろうと思う。」


 「因縁みたいな感じなんだね。私、その辺がすごく気になってたから、答えてくれて嬉しい。ありがとう。連れてって良いよ。」


 「どういたしまして。あと、ありがとう。」


 流石に声を荒げた時は、僕もビビった。

 怒らせてはダメだと思ってたけど、これほどダメなものだったとは⋯

 僕も仲間のこと、もっと知っておかなくちゃ。


 「ち、因みにだけどさ⋯?ハイドって、好きな食べ物とか⋯ある⋯?」


 「聞かなくてもわかるでしょ!颯太の作る料理が一番好きだよ!」


 「うんうんうんうんうんうんうん」


 い、因子さんが反応し始めた!?

 ここまで聞こえるんだ、老爺かな?


 「チラッ、」


 水仙も反応するんかい!

 連鎖反応かなんかかぁ?これ⋯


 「おい、老爺。行くぞ。」


 「は?⋯え?ど、どこに行くというのだ⋯?」


 「聞いてたんじゃないのか!?ハイドとの話!」


 「き、聞いてなかった⋯」


 「何処に行くか、それはここに。」


 「ま、マップか?」


 「そうだ、そして⋯お前も見たことがあるであろう印⋯何処かにないか?」


 「印?あ、あれ、涙で前が見えんぞ⋯?」


 涙脆いだけだろっ!


 「⋯あ、見つけた。これかの?」


 「そう、それ。ってあれ?驚かないのか?」


 「なんとなくここに来ることはわかっていた。そして、そこが俺の旅路の果てであることもわかった。」


 マップの中に書いておいた内容を、察してくれたのか。

 悲しいが、あいつのためだからな。

 致し方ない。


 「呪鬼と同じ道を辿る事になるとは思っていなかったがの、これも仕方があるまい。だが、本当に良いのか?呪鬼も少し触れておったが、別の世界線の颯太が皆死ねば、お前も消えることになるぞ?」


 「そのことは、多分どうとでもなるよ。こっちには魔力値がカンストしてる強情姫や、短時間で少し力が使えてお前をボコせるぐらいには強くなった心強い少女もいるし、因子さんやおじちゃん達、もっと言えば最初に出会った草原の主や商人のおっさんだっている!まぁ、僕が命の危機だってこと、ハイドには遠回しにしか言ってないんだけど。」


 「待て、今⋯草原の主と申したな。」


 「え?あ、うん。そうだけど⋯」


 「そんな者、私の世界線では居なかったぞ?」


 「そ、そうなの?」


 「というか、この世界の主は厳粛な場所にしか現れないはずだぞ⋯!?俺の来た場所と一致していれば、本来そんな賑わうような場所に主の居城は建てないはずじゃ!」


 「へ、へぇ⋯」


 「お前もしや、主の祝福を受け取ったな?」


 「え?まぁ、似たようなのは貰ったけど⋯」


 「お前、不死身じゃ。」


 「⋯は?」


 そ、そんなこと説明されてないし聞いてないぞ!?

 確かに変なステータスの欄はあった。

 『神の筋』ってやつだ。

 それか?それが原因なんだろうか⋯


 「それだな。」


 見抜いたぁぁぁ!?

 ってかハイドと同じようなことマジでしてくんな!!


 「ただ、だからといってチート能力が使えたりするわけではない。それは魔法の階級が色々上がってからじゃ。お前まだ魔法の種類も、魔法とは何たるかも、数値カンストとは何たるかも、カンストの数がどれぐらいかも、種族に関するデータ、知識、など諸々すらもわかってなかろうが!」


 「そりゃあまぁ来てから数日?数週間ぐらいしか経ってないからな。この異界がどんな歴史を辿ったのかも詳しくはわからん。限界異界ってワードも周りのやつから聞いたし。」


 「お前、相当な馬鹿じゃな。学校に通え、勉強しろ。」


 「したいけど、何処にあんのかさっぱりわからん!」


 「記憶が確かであれば、ダンジョン内の何処かに時空のズレとして」


 (中枢核)それ別のやつだし、根本的に関わってこないっつーの!)


 「では、やはりマップで確かめるしかなかろう。三十歳で入学は無理がある。この薬をやろう。いざとなった時はこれを使え。あと入学金の用意や手続き書も新品だが作っておいた。好きなときに使うといい。試験も多分なかろう。手続きが死ぬほど面倒だからな⋯出来る限り一般魔法を使って自動で手続きすることをおすすめする。」


 「そ、そんなのあるんだねぇ〜色々とありがとさん⋯」


 ってか、情報量すげぇな急に⋯

 こんなに叩き込まれたら、読者も頭パンクしそうで怖いんだけど⋯


 「その点は大丈夫だ!(多分)気にするな!」


 「今変な間があったぞー!」


 でも、ある程度情報は会得できた。

 最期にこき使われて、お前も大変だな。(他人事)


 「(ムカッ⋯誰のためにやったと思っている⋯!)」


 「取り敢えず根城行こうぜ〜皆!待たせたな!早く行くぞ〜!」


 「遅いわよ、何分待ったと思ってるの!」


 「早く行こ〜!」


 「俺達も行くぞ〜兄弟!」


 「今用意してるっての⋯」


 皆元気そうだな、老爺の最期を華々しく飾るためにも⋯

 根城に早く行こうっ!


 つづく

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