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10.5 多死人〈たしじん〉

前の番外編のギャップがあるため、許して欲しいです。

 文字通り多く死ぬ種族、職に該当する特殊な血が流れている不死身なる人族。

 特殊な家計に生まれた、奴隷にしかなれない人間。

 攻撃や反撃は出来るもすぐ死ぬ呪いを、呪鬼(じゅき)にかけられた悲しき種族。

 花も触れず朽ちる、寂しき種族。

 その歴史は築かれたばかり、日本と似た国と共に⋯


 日本と似た国家が存在すると言っても、そんな国は何個も存在し、その中の一つにあるただの王都というだけである。

 それも一日にして、呪鬼に滅ぼされた亜門という一つの都市だ。


 元は多死人も、普通の人間であった。

 亜門に住んでいた数少ない人間であった。

 そして、そこにいる人間たちは皆、静かなる平和を追い求めていた。

 支配者が生まれないような、そんな政府の成り立ちを築きたかった。

 

 だが、それは一日にして崩壊した。


 〈呪鬼は永遠を手にする。呪鬼は自由を手にする。呪鬼は傲慢を手にする。呪鬼は強欲を手にする。〉


 ライバル種族は、いつだってどんなものにも存在する。

 どんな物にも傲慢や自由を手にしたい、楽を手にしたいという欲望を隠し持ってる。

 そう、どんなものにも平等に。


 呪鬼は沢山の呪いの呪文を隠し持ち、彼らに接触した。

 そして、仮の条件を持ちかけ、その人族を我が物にしようとする策略を考えていた。

 その真意を、彼らは知る由もなかった。


 国は滅び、人々は一度死に、多死族となった。

 多く死ぬ呪いをかけられたまま、暴走も出来ないまま。

 ただ無惨にも、不死身となったのである。


 ―まだ多く死ねない者が生きていた戦場 十頭之里(じゅうがしらのさと)にて―


 「皆、死んじゃうの⋯?」


 「死なないよう、皆努力してはるんですよ。ですがね、死ぬことは避けられないんどす。」


 「そんな⋯妹は、?妹はどうしろと!」


 「あんたが守っておくんなまし、私はもう⋯長くは持たないらしい。」


 「え⋯?不死身になるんじゃないの⋯?」


 「上限があるんどすよ、死ぬのにはね。」


 「そ、そんな⋯師が死んで母上も死ぬなんて、そんなの嫌だ!」


 「あんた、長く生きなはれ。」


 「母上、母上⋯母上⋯!!」


 ―多く死なない者以外が絶望する戦場 零之墓(ぜろのはか)にて―


 「ねぇ、君。生きてて楽しい?」


 「誰だお前は」


 「僕かい?呪鬼だよ呪鬼!この事件の根幹である呪鬼!」


 「お、まぇ⋯が?」


 「そうだよ、弱い小人さん。」


 「嘲笑って良いと、誰が言ったァ?」


 「おうおう、怖い怖い〜!でも良いの?僕を殺したら、妹さんはどうするのさ。」


 「⋯?どういう意味だ!ま、まさ⋯か!!」


 「捕まえたんだよ、この間。君の妹を。」


 「ぁ⋯あぇぁ⋯ぁうあ⋯⋯あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 「話を聞け馬鹿者、静まらなければお前を食うてやるぞ?」


 「ダマレ、オマエハキンキヲオカシタ⋯」


 「だーかーら!まだ生きてるっていってんだよ!お前もその中に入れてやるから、一緒に来いってんだよ!わかんねぇの?馬鹿だね!滑稽だね!傲慢だね!怠惰だね!強欲だね!」


 「バカ、コッケイ、ゴウマン、タイダ、ゴウヨク⋯?」


 「事柄だよ、事柄!」


 「事、柄⋯」


 「すべてを一挙に纏めただけだ、そう難しいことではないはず。」


 【洗脳スキル 万里拘束】


 「(この洗脳スキルは僕のとっておきのスキル、万里の思考を拘束して別のものに転換するといったものだ。並の人間や種族では解けないものだ。死ぬ回数も母親と同じ五回だ。それで十分であろう。それに、この小僧には呪縛を解くのは無理であり無意味に等しいだろう。)」


 「ふっふっふっ、実に滑稽だ。お前ごときがお前の住処に出向いてくれと頼むとは⋯」


 「な、なんか強情な性格になったぞ?別物の性格になったとはいえ、これはなぁ⋯」


 「なんか、少し戦いたくなってきたな。お前、付き合え。」


 「急に偉そうになるなよ、腹立たしい。」


 「それでは、行くぞ!」


 「(⋯!?速い、初速が見えなかった⋯!)」


 「強くなりすぎじゃないのか⋯?」


 「突如として褒めるとは、実にお前らしくないな。醜態を晒す者は醜態を晒す者らしく、堂々と悪意を見せつけていろ!!」


 「ちょっとはその無礼、許してあげるけどさぁ?流石に言いすぎじゃない?僕メンタル強くないんだけど!」


 「フッ、雑魚が弱音を吐くか。必殺、極滅殺!」


 「(ど、毒!?おいおい嘘だろこいつ!それに刀使いで見事に速ぇ⋯これは味方として使えるなぁ!)」


 「偉そうな態度ばっか取るな!僕はお前の妹を持ってるんだぞ!」


 「妹を”持つ”、だと?お前が我より劣っているというのに、なんという言い草だろうか!」


 「いちいちムカつくこと言うなよ!殺すぞ?」


 「殺してみろ青二才の呪鬼め。⋯避けられたなら数を足すまでだ!極滅殺、乱舞零式!」


 「”零式”?おいおい、減ってんじゃね⋯はぁ!?こ、こんなの避けられねぇっての!!」


 【防御スキル 盾の刻印】


 「使いたくなかったが、使うしかねぇ⋯自身の寿命を削る禁忌のスキル⋯!盾の刻印―!」


 「ほう⋯盾の刻印か、実に面白い。使わせてもらおう。」


 「お、お前も!?」


 「盗式、盾の刻印―!」


 「何ぃっ!?あいつが放った攻撃を防ごうとしてこのスキルを使ったというのに、消滅しただと⋯!?ぐぁっ!!」


 「フッ、こいつは実に使えるな。体力と寿命は削られるものの、反攻(はんこう)が出来るとは⋯」


 「お前、一旦静まれ。目障りだ。」


 【刻式 消えろ】


 「(言葉の暴力は人を変える力を持つ⋯これで変わってくれれば、いや⋯このスキルは封印することしか出来ない。技を誤った。この○式は二度同じ式の技を使うとどんな玄人でも死ぬとされている。ここは一旦封印して、妹に封印を解かれないことを祈って、眠らせて檻に閉じ込めよう。そして、いつか奴隷として売ろう。」


 この国絶滅事件が起きたのは、今から約4年前。

 亜門が生誕した年と同じ刻に、亜門は絶滅したのだ。

 皆が皆死んだわけではない。

 まだ上限に達していない、多死人の族民たちは居た。

 後に大量の呪鬼によって、妹と狂戦士となった兄しか残らなくなったが。

 その事件の主犯格はやはり⋯

 名を名乗らなかったが、後の未来で英雄になっていく―

 何百年前も昔に糸幹人を滅ぼしたとされる、当人とは別の過去を持った、当人と同じ名前の呪鬼⋯


 『水宮颯太』、であろう。

いよいよ糸幹人編も終盤編となる―

「万里に開けたるは、正義の道か。正規の道か。悪の道か。外道の道か。それは、その道を歩んだもののみ知れること。」


お楽しみに!

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