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百年ぼっち魔女は、弟子に永遠を迫られている  作者: 勿夏七


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7/14

7魔女と王女

 コンコン、と窓を五回叩く小鳥の音。

 今度は誰が来たというのか。アタナシアは大きくため息を吐くと、覗き用の鏡を手に取る。

 そこに映っていたのは、森には不釣り合いな煌びやかなドレスを身につけた令嬢と、三人の護衛騎士だった。

 

「全然魔女の家にたどり着かないのですけれど!?」


 疲れ切った顔をしながらも、令嬢は大きな声を出して自身の足で歩いている。

 魔女へ会いに来る者はたくさん居たが、ここまでゴテゴテに着飾った令嬢の訪問は今回が初めてだった。

 しかも従者などに頼らず自らの足で来るなど、普通はありえないことだろう。

 カルロ目当てで着飾ったのならば空振り。魔女のためであれば、ドン引き間違いなしの装いだ。


「何しに来た?」


 姿を現さず声だけで話しかけると、令嬢は驚き飛び跳ねた後、何事もなかったかのように上を見て辺りを探す。


「わたくし、アヴィゲイル・サントラリア……カルロ様の婚約者候補ですわ」

「名前は聞いてない」

「まぁ、なんと無礼な。やはりこんな森の奥に籠もっているから、礼儀も知らないのね」

 

 姿さえも見せないとは、まぁ、無礼な。そう嫌味たっぷりに言い放つ。それに賛同するように、三人の護衛も大きく頷いた。

 だが、嫌味とも捉えていないアタナシアはそれを無視してもう一度問う。

 

「それで、アヴィゲイル……サマは何しにここへ?」

「カルロ様にかけている魅了を解きなさい。どうせ姿を見せられないほど醜いから美しいカルロ様を魅了したのでしょう?」


 最初は皆、ありえない髪色と目色と捉えて気味悪がってきた。

 これは蛇足だが、それなのに、それらに触れなければかなりの美形だと気づき、女子生徒を中心にファンが増えているのだとか。

 

「魅了なんてしてない。そんな面倒な魔法、するわけないだろ。もし仮に魅了魔法がかかっていたとして、勝手に解呪すればいい」

「解呪はかけた本人にしか解けないのではなくって……?」

「知らないのか? ……ああ、高度な魔法だから学生には教えていないのか」


 事実を言ったまでのアタナシアだったが、アヴィゲイルには嫌味にしか聞こえない。

 アヴィゲイルはその場で地団駄を踏み、淑女とは思えないほどにギリギリと歯ぎしりをした。

 

「っ! ほんっっっとに癪に障る方ね!」

「はいはい、それはよかったね。解呪はお金さえあれば誰でもできる。さ、行った行った」

「待ちなさい! まだ話は終わっていませんわ!」


 解呪ができる店へと飛ばしてやろうと準備をしていたが、アヴィゲイルは慌ててそれを制した。

 

「お義母様は酷く悲しんでいますの。ですが、寛大なお方ですので、謝罪と慰謝料で不問にすると仰っておりますのよ」


 魔女に息子を奪われ、夫には逃げられた。祖父母には嘘の話を信じ込ませられており、縁切りの申し出までされた。

 周りからは息子を捨てた悪者扱い。夫は息子のことで俺まで被害を被るのは困ると言って離婚。

 祖父母は魔女が孫を大切に育ててくれたのだと思い込んでいる。

 

 お義母様から聞いたのだと言って語られたそれは、あまりにも悲劇のヒロインを騙っている。


「お義母様は泣いておられましたの。あんなに優しい方が嘘を仰るはずありませんわ!」

「君、騙されてるぞ」

「魔女の言うことなんて信じられませんわ」

「……ならこうしよう。君が今ここで自白剤を作ってくれ。私が作ってもいいが、どうせ信用ならないと言われるだろうしな」


 アタナシアはアヴィゲイルの目の前に調合代を召喚する。そして自白剤に必要な薬草をずらりと並べた。

 

 突然目の前に現れた調合代に、思わず悲鳴をあげたアヴィゲイル。涙目になりつつも、どこを睨んでいいのかわからず調合代を睨んでいる。


「薬草の鑑定くらいはできるだろう?」

「そんなの基礎中の基礎ですわ!」


 一つ一つ丁寧に薬草を調べ上げた後、アヴィゲイルは言われるがまま自白剤を調合した。

 素直な姿にアタナシアは騙されやすいやつの典型だなと一人納得していた。


「さあ、それをその女に飲ませて真実を知ってこい」

「貴女に飲ませるのではなく?」

「私にそんなもの通用しない」

「本当は怖いのではなくって?」

「試したければ好きにしろ。ただの時間の無駄だがな」


 アタナシアの言葉に、少したじろいだアヴィゲイル。あまりにも動じないアタナシアに"本当に効かないのかもしれない"と眉をひそめた。

 

「お茶会でもなんでも良い。とりあえず飲ませてみろ」


 そう言って解呪の店へと飛ばせるように準備を進めた。

 令嬢がどのような反応をするのか気になったアタナシアは、彼女を飛ばす直前、こっそりと監視用の小さな蜘蛛を一匹、ドレスの裾に張り付けた。


「……なかなか、扱いやすそうな令嬢だったな」


 アタナシアはベッドへと横たわり、蜘蛛の視点を借りて動向を待った。

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