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百年ぼっち魔女は、弟子に永遠を迫られている  作者: 勿夏七


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14/14

14森の中の青年

 動物たちと戯れていると、一人の男がやってきた。

 この森は、自力で魔女のもとへは辿り着けない「迷いの森」と称される場所だ。

 そんな森をいとも簡単に抜けてくる男など、一人しかいない。

 唯一、無断で侵入することが許されている男――カルロだった。

 

「不老不死になったら、俺と結婚してくれるって言ったよな?」

「……は?」


 帰ってきて早々、言った覚えのない言葉に咄嗟に反応できなかった。

 間を置いて、言葉を探しながらアタナシアは言う。


「言ってない……多分。そもそも私と貴方の歳の差を考えたことはある?」

「歳の差は関係ない。俺たちは不老不死だからな」


 僅かに口角を上げたカルロ。

 言い負かしてやったぞとでも言いたげな表情に、アタナシアは大きくため息を吐いた。

 そしてカルロに近づいたかと思えば、容赦なくカルロの頬にビンタを叩き込んだ。


 なかなか良い音が鳴った。

 十年分の怒りがこもったような音と言っても過言ではないだろう。

 アタナシアは満足気に痺れた手を振った。


「アタナシア……?」


 頬を叩かれたことに驚きを隠せないカルロは、熱くなった頬に手を添え目を見開いている。

 魔法で治療してしまえばすぐだというのに、カルロは頬をさすり、ただアタナシアを見つめた。


「いきなり帰って来たかと思えば寝言のようなことを……。まずは謝罪ではないのか?」


 手紙を書かなくなった理由。

 長い間放置しておいて、連絡一つ寄越さず突然帰ってきた理由。

 そして勝手に話を進めてしまう理由。


 何もかもがアタナシアにストレスを与え続けていた。


「皆、不老不死になったら時間感覚がおかしくなるから、百年なんてあっという間だと思っている」


 アタナシアはそう言った後、続けて話す。

 

「だが、私は違う。どれだけ時を重ねても、長く、遠いものに感じるんだ」

 

 アタナシアは、小動物たちに森へ帰るよう手で合図をすると、カルロへと詰め寄っていく。


「お前が私の前から旅立って、手紙も書かなくなって……何年経ったか、わかっているのか?」

「すまない。時間を数える暇はなかった……」


 少し申し訳なさそうにするカルロに、アタナシアは答えた。

 

「十年は経ったぞ」


 カルロに手紙を出したが返事はなく。

 仕方なくアヴィゲイルの結婚式に一人で参加して、幸せそうな二人を見てとても羨ましいと思った。

 いろんな男に出会う機会があったが、どうも誰もしっくりこず。

 アヴィゲイルに理想を聞かれた時に、すぐに頭に浮かんだのはカルロだった。

 恋愛対象として見ているつもりはなかったのに……


「いなくなった後に自覚して、触れられないことにもどかしくなって、六年だ」


 「お前のせいで気がおかしくなりそうだったよ」とカルロを家の壁まで追い詰めた。

 だが、カルロは気にする様子もなく、少し口角を上げた。


「……そこまで俺のことを想ってくれていたのは、正直驚いたな」

「手紙を書かなくなったのはわざとか?」

「違う。引き継ぎ転生の際、人に見られてな。上手いこと死ねなくて動けなかったんだ」

 

 山奥で死のうとしていたカルロだったが、山菜を取りに来た知らない人に、自殺を止められて転生失敗。

 数年安静にして体は思うように動かせることになった。しかし後遺症が残り、引き継ぎ転生を繰り返すのも予定より遅くなってしまった。

 

 手紙が溜まっていたのは知っていた。しかし、心配の手紙が届くたび、それだけアタナシアに想われていることに嬉しくなってそのまま放置。

 自身のことで頭を一杯にしてくれていると思うと嬉しいなどと純粋に喜んでいたのだ。


「それで、もういっそサプライズで行くことにしたわけだ」

「半分はわざとじゃないか。ムカつくやつ」

「でも好きだろう?」


 しれっと言うカルロをアタナシアは強く睨んだが、アタナシアは怒ることに疲れた。

 カルロの体に腕を巻き付けて、その温もりを感じてやっと帰ってきたことを強く実感した。

 それが嬉しくてアタナシアは顔を緩ませ、背の高いカルロの頭を撫でた。


「おかえり、カルロ」

「ああ、ただいま。アタナシア」


 差し出されたカルロの唇を、アタナシアは拒むことなく受け入れた。

 この瞬間、アタナシアの長い長い孤独な時間に、ようやく終わりが告げられたのだった。

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