▼〖タイトル画面〗
ピーッ……ガガッ……
~ピコンッ!~
テーッレッテレッテレーッレッ
レーレッテレッーレーッレーレーッ
「いや~この曲、懐かしい!
この画面を見るのは25年ぶりくらいかな。」
「そうねぇ、まさか2代続けて起動するなんて。
親子って似るのねぇ。」
「うっ…耳が痛い…。」
大陸に存在する国の一つ、オトゥムゲール王国の王城にて。少女達の理想を絵に描いたような金髪碧眼の第一王子、フィーロウは暗く広い部屋の中で椅子に縛り付けられていた。
そして、何が起きているのかも分からないまま、目の前で楽しそうに準備をする両親…国王と王妃を呆然と眺めるしかない。
「今回の難易度調整はどうするんだい?」
「“〖立場〗公爵令嬢、〖所属〗王政派、〖傾向〗ランダム、〖ルート〗王妃”でお願いするわ。」
「よし来た!」
▼Option
~ピコンッ!~
「あ、あの…父上、母上…?」
「何かしら。」
足はしっかりと椅子にくくりつけられているせいで動けないが、フィーロウの口や手は自由にされたままだった。呆けていた頭を何とか回転させ、カチャカチャと何かを操作する両親に声をかけた。
すると返ってきたのは、母である王妃のゾッとするほど冷たい声。フィーロウは母からの敵意混じりの冷気にゾッとして、もう言葉を紡げない。王妃はそんな我が子を無視し、準備に勤しむ国王の方へ向き直った。
「王妃、クリアは“全ステータスの目標数値クリア”で構わないか?」
「それじゃコルヤークシャの努力と釣り合わないの、生温くてよ。
“収集要素の全回収”の追加と、“クリア必要値を2倍”に設定しておいて。」
「鬼だなぁ~…これでよし、と!」
そうは言うが、国王の声にはどこか楽しさが滲んでいた。そしてあっという間に、準備は終わったらしい。国王は立ち上がると、椅子に縛り付けられた息子の元へ向かって手にしていた“装置”を渡す。
「息子よ、私達は親として、国王夫妻として。
お前の間違いを正さねばならない。これは…試練だ。
と言う訳だから、操作にはこのコントローラーを使いなさい。」
「えっ。」
「まずは十字になってるところの上ボタンを押して、そう、“START”って書いてあるところに合わせなさい。
で、○ボタンを押して、そう、それ。」
「え、あ、はい?」
「じゃあ全画面表示にするわね。
フィーロウ、目の前の壁をご覧なさいな。」
王妃の声と、カチッという音と同時に、フィーロウの目に激しい光が差し込んだ。咄嗟に瞑った目を開けると、そこには。
チャラララーッラーラーラーラーッ
『夢見る少女の幻想夢幻』
デカデカと壁に映し出されていたのは、謎のロゴと謎の青空と謎の草原の映像。そして無機質な楽器?で奏でられる謎の音楽と、感情の抜けた機械的な少女の声は、自身の婚約者、コルヤークシャ公爵令嬢にどこか似ている。
その不思議な声に読み上げられた謎の呪文によって、どうやらそれは幕を開けたらしい。
「さ、頑張れフィーロウ!
目指すはイベントとスチルの全コンプだ!」
「全ての能力値も必要値以上に上げなさいね。」
国王夫妻は、いつの間にかフィーロウの後ろに用意されたソファーに仲良く座っていた。どこからともなく現れた給仕が2人へ飲み物をサッと差し出す。まあつまり、国王達はフィーロウの“プレイ”を観戦するつもりらしい。
ちょっと待ってくれ、とフィーロウは思った。ただ“寝る前に両親に呼び出されただけ”だったのに、どうしてこんなことになっているのか。
「まずは!!!説明してくださいよ!!!」
真夜中の王城に、王子の声が虚しく響いた。