青い春
しいな ここみ様の『瞬発力企画』参加作品です。お題は「青春」。。
最初、「青春」なんて書きたくもない。 と思ったんですが、全出席したいというのもあって書きました。
そしたら意外に評価してくださった方がいて、気をよくしてそちらからの転載です。(^^;)←単純
僕と青山美春ちゃんは、どういうわけか小学校の時から同じクラスになることが多かった。
中学生になっても美春ちゃんと同じクラスになれた僕は、しかし、ひとつ前の席だった美春ちゃんのセーラー服の真っ白な襟を、ちょっとドキドキしながら眺めていることしかできなかった。
2年生になった春。僕と美春ちゃんは別々のクラスになった。
通学路でしか会うことがなくなった僕は、相変わらず美春ちゃんの後ろ姿を見ていることしかできていない。
そんな僕の前で突然、道路のアスファルトに亀裂が入った。僕と美春ちゃんを決定的に引き裂くように。
そしてそこから何かつる植物のような植物の芽が、にゅるにゅると生えはじめた。
まるで定点撮影した映像を早回ししているみたいな勢いで、首を振りながらその青い植物は成長してゆく。
やや緑がかったその青は、ターコイズブルーというのだろうか?
驚いてふりかえった美春ちゃんの顔を、みるみる茂ってゆく青い葉が隠してしまう。
あちこちの地面、アスファアルトの亀裂や側溝の隙間、そんなところからもその青い植物は生えてきた。
そのツルは近くの木々にも巻き付き、巻き付かれた木は皆その葉を青に変えてしまう。
やがてその葉は、ターコイズブルーからコバルトブルーへと青を深めていった。
僕は青い植物に囲まれて、なぜか全ての気力を失ってしまい、その場にへたり込む。
なんにも‥‥したくない‥‥‥
突如世界を襲ったその青い植物によって、人間は気力を失い、ほとんどの経済活動は止まってしまった。
あらゆる排気ガスが出なくなったことで、空はコバルトブルーを取り戻し、植物と空の境が分からなくなるほど、世界は青に染まった。
「植物が、人間に怒りの反撃を始めたのではないか」
そんなことを言った学者がいたが、それを拡散するような気力を持った人はもはやどこにもいなかった。
その学者の言を証明するように、極端な暑さの夏が訪れると青い葉は燃えるような真っ赤な色に変わり、世界は朱に染まった。
ただ、唯一の救いは、その生い茂る赤い葉の陰で、僕たち人間はかろうじて息をすることができたということだろう。
やがて植物の葉は、燃え尽きたように真っ白な灰の色になり、はらはらと散り始めて季節は秋になった。
あたりの地面が真っ白な落ち葉に埋もれてゆく中、ほんの少しだけ残った薄紅色‥‥。
それは、白に埋もれるようにして僕の方を見ている美春ちゃんの頬だった。
のちに研究者たちはこの現象を、「青春」「朱夏」「白秋」と呼んだ。
お粗末さまでした。。m(_ _)m
あ。。 ひょっとしたらこれは1枚の幻燈‥‥かもしれません。