選択
「着艦の、許可を求める」
「許可できない。あなたは、当艦の、所属では無い」
「着艦を、許可する。収用姿勢を、維持して、着艦せよ」
艦長ぽい声がして、許可が下りた。
収用姿勢と言うのは、今日、最初に、会った艦長と、同じ事を、言っている。
大人しくしてろて事ね。
着艦台に、固定する。
コックピットを、開いて、すぐに、整備班がやってくる。
「階級と、所属を、申請してください」
「何故、コロニー所属の、整備班パイロットが、ここに居るんです」
「私が聞きたいですよ」
やっと、ヘルメットを、脱いで、軽食を、いや、重カロリーチューブを、飲んでいる。
お腹がすいたのも有るけど、それだけでも無い様な気もする。
何だろうな。
その次に、尋問室に入れられてる。
まあ、別名、懲罰室とも呼ばれてるんだけどね。
艦長、自ら、尋問してくれている。
「それで、君は、何故、ここに居るのかね」
「少々、長くなりますが、・・・・」
話を、終えて、艦長が、感想を、言う。
「そう長くも無かったな」
「簡略化しましたから。詳細は、ガンダムの、交戦データーで、確認いただければ、よろしいかと」
「そうしよう」
ガンダムの、コックピットから、回線を、開く。
交戦データーが、送られる。
「転送完了」
受領の、確認を、確認する。
そうしたら、しばらく放置されていた。
手持ちぶたさに、暇に成る。
その時に、視界際の、アイコンが、気になった。
「これって、ハッキングソフトた」
呆れ気味に、言う。
「誰が、こんなの入れたんだ」
一応、軍規違反。
憲兵が、飛んで来るが、ばれたらの話だ。
内容は、おもちゃの様な、レベルのものだ。
トップレベルを、破れる物じゃない。
「使ってみるか」
アイコンを、クリックして起動する。
五分間の、長い沈黙の後に、アクセスが、完了する。
「展開しろ」
モニターが、艦内映像から、宇宙の映像に変わった。
「宙か」
なんとなく上を、見上げてみる。
格納庫に居ながら、宙の様子が見える。
ただ、それだけの、ハッキングソフト。
なんとなく言ってみた。
「チェック」
AIが、起動する。
なにも、期待していなかったが、反応が、有った。
後方からの、敵の、接近だった。
「敵だ、気密室に、退避しろ。サイレン鳴らせ」
「敵発見。後方に、ムサイ一機」
「ハッチを、開けろ」
格納庫が、真空に、成って行く。
ハッチが開いて、命令が、降りてくる。
「ナンバー順に、順次、発進しろ」
「出遅れたな」
台に固定されていたら、しょうがない。
外は、真空の地獄。
おとなしく、していよう。
沈黙が、何かを、想起させる。
「艦長に、つないでくれ。艦長権限が必要に成った」
「いきなりなんですか。そんな事、出来ません」
「死にたいのなら、そうしなさい。間違いでも、始末書一枚で済むことでしょ」
「何の用だ」
艦長が、割り込んでくる。
相変わらず、判断が早い。
「敵の狙いが、解りました。ガンダムです」
「理由は」
「もう三回も、敵と遭遇しています。十分でしょ」
「確かにな。で、何がしたい」
「プロペラントを、下さい。反対側に、逃げるのに、推力が欲しい」
「それで、どうなる」
「ガンダムが、狙いなら、こちらに、向かって来るでしょう。この艦は、逃げ切れます」
「そうなら無かったら、どうする」
「今と、状況は、変わりません」
「君は、上手く逃げられるわけだな」
「はい。それとも、この艦は、今、戦力不足ですか」
「いいや。その心配はない。だが、敵の、目的は、もう一つ有るかもしれん」
「なんですか」
「君だよ」
「私ですか」
「ガンダムと、常に同時に居たもの。君だよ」
「有り得ないですね」
「そうでもないさ、君が、ジオンの、お姫様なら、有り得ん事でもない」
「ふふ、そんな、都市伝説、信じてるんですか」
「成程。では、そんな事は無いと、言っておこうか。だが、君に、装備を、貸与するのは、構わんが、言い訳が必要だな」
「そんなの、私が、勝手に、やったと、言えば良いじゃないですか」
「それだと、君に、手を貸したものが、罪に成る」
「そんな人、何処にも居ないんじゃないですか」
「そう言う事に成るのか」
「ええ」
「全部、私が、やったんです」
「では、そう言う事にしようか」
「では、地球の、反対側で、会いましょう」
「そう言う事なら、こちらも努力しよう」
バックパック、脚部にも、増槽タンクが、装備される。
ありったけの、予備ブースターも。
現場は、お祭り騒ぎである。
後方への、発進の、ため、半回転しハッチに、押し出される。
いよいよ、宙だ。
数を数えながら、船から離れていく。
私は、おとりだ。
敵に捕捉されなければならない。
でも、長すぎれば、墜とされる。
その辺の感を、根拠なく研ぎ澄ませる。
「ブースター点火」
加速に、引きつる体。
でも、私は、笑っている。
「ムサイ転進」
「狙いは、あっちか」
「賭けは、こっちの負けか」
足なら、あっちが、有利だ。
でも、こちらの武器も、スピードしかない。
全点火なら、私を、ひき肉に出来るほどのブースターを、積んでいるんだ。
それを、時間を、ずらして、点火して、加速を、稼いでいる。
点火のタイミングで、敵の、弾を、避けるしかない。
外れた砲撃が、脇を、通り過ぎて行く。
「お姫様なら、こんな目に合わないでしょうよ」
加速。
引き離せるか。
敵は、意外に、しつこい様だ。
地球の、青に、目が眩む。
「以外に、暇だな」
次の、加速までに、あと何秒か。
その後、二回の加速。
これで弾切れ。
敵は、振り切れない。
段々、近づいて来るように見えるのは、事実か、錯覚か。
さて、最後の加速に、入りましょうか。
装備を、全パージする。
盾を、前方に、構える。
「さて、行きましょうか。地球へ」
スラスターで、軌道を、変える。
地球への、降下コース。
慣性圧縮で、加熱された、大気が、輝きだす。
冷却、最大で、炎の中を、駆け抜ける。
重力加速で、振り切れる。
ムサイは、大気圏に、入れない。
今更シャトルを出しても、私を、追い越して、しまうのがオチだ。
ムサイとの、距離が、離れる。
やっと、振り切れた。
高度が、上がって行く。
私は、再び、宇宙へと、帰り着く。
水面を、跳ねる飛び石の、原理で、私は、宇宙に、返り咲いた。
やがて、連邦の、軍艦が、見えて来る。
地球の反対側で、私は、それを、見る事が、出来たのだ。