連邦
トリガーから、指を離し。
直立姿勢を、維持する。
軍艦から、シャトルが、出て、ガンダムに、ワイヤーを、繋いで牽引する。
「動かないでくれよ。仕事が増えるだけだ」
作業員が、警告してくる。
主砲は、今だに、こちらに向いている。
「管制塔に、連絡を取れ。入港する」
「応答が、ありません」
「どういうことだ」
「わかりません」
「とにかく連絡を取れ。ガンダムは、どうなった」
「回収を、確認。パイロットも、投降しました」
「管制塔からの反応は、どうだ」
「以前、沈黙。反応なし」
「三十分、反応が無ければ、シャトルを送れ」
「どうなっている」
「反応なし。エアロックに、シャトルが取り付きましたが、強制パージのせいで、修復に、二時間ほど、掛かるとの事です」
「強制パージなど、誰が、やったんだ」
「解りません」
中には、二万人を超える市民が、居るはずなのに、なぜ沈黙している。
「どうするべきだと思う」
副官に、といかける。
「入港するのが、最善でしょうが、撤退すると言う手も有りますが」
「撤退するには、物資が、足らんな。途中で、補給が受けられれば、話は、別なんだろうが」
「受けられますかな」
「運次第かな」
「ここでの、示威行動の、維持と言う義務も有りますが」
「誰に対しての、示威行動だ」
「解りません」
艦長は、少し考えた後、命令した。
「微速前進」
「了解。微速前進」
「機雷でも、転がっててくれた方が、楽かもな」
「見える脅威と、見えない脅威ですか。わたしゃ、どっちも、御免こうむりたいですね」
艦長と、副長の、愚痴だった。
「後方より、高速接近物あり。三隻の、ムサイです」
「なんだと」
艦長が叫ぶ。
「射程圏内です」
「エンジン全開」
副長が、叫ぶ。
「エンジン全開」
機関士が、復唱する。
「砲門九十度会頭。撃て」
担当士官が、復唱する。
「左横転」
その時に、敵弾が、着弾する。
振動と、爆音が響く。
「そのまま、全力で、コロニーに、隠れろ」
「敵の死角に、入りました」
「独断専行、申し訳ございませんでした。艦長」
「いや、構わん。よくやってくれた」
一つため息を、付いた。
「しかし、いきなり死角からの、奇襲とは、あいつら、こっちを、潰す気だな」
少しの沈黙の後、艦長が言った。
「仕掛けるか」
「そうですな。それしか無いでしょう」
「モビルスーツ全機発進。散開しろ」
「ガンダム。発進します」
「了解」
「ガンダムを、出したのか」
艦長が、驚いた。
「構わん。全機発進を、急がせろ」
副長が、命令する。
怪訝な顔をした艦長が、問いかける。
「いいのか」
「構わんでしょう。それよりも、展開が、遅れるのが、問題です」
「成程」
「それに、敵の、的が、多い方が、こちらに有利です」
「かけ率を、上げるわけか」
「はい」
「ふーう。それじゃ。行くか。機関全速、仕掛けるぞ」
「コロニーに、隠れて、射撃するのでは、無いのですか」
オペレーターが、問いかける。
「馬鹿野郎。こっちが、撃てば、相手も、撃ってくる。コロニーを、巻き込めるかよ。突っ込むぞ」
「ガンダム先行してます」
「解ってるじゃないか。各員、後れを取るなよ」