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90話 アルトゥス・ボア 狩猟依頼 (1)

秋風がそよそよと森に吹いている。


ヴェス・ディナスの西側の城壁から遠く離れた外郭(がいかく)のブランディビアンの森。黄色、茶色、赤色に染まった葉が広大な森に広がっている。


びっしりと生い茂ったブナの木々が落とした無数の葉が地面を覆い、まだ落ちていない葉たちは黄金色の黄色と濃い赤色に変わり、秋の森にふさわしい装いで森の姿を変えている。


陽を遮る地面の上に垂れ下がった枝の下の影の濃い涼しい地面からは、湿った土の匂いが水を含んだ草葉の香りを加え、花の香りとは違う甘美な香りを森に加えている。


静かな森の中に似つかわしくない、藪を荒々しくかき分ける音が聞こえてくる。


濃く暗い茶色の硬い毛を持つ獣。頭は大きく短く、首は太く体躯に直結しており、頭の前方には突き出た(ふん)に鼻がついている。


アルトゥス・ボアと名付けられたこの猪は、優れた繁殖力と適応力でエステタ王国ほとんどの森と山で見られる獣である。


体長は5~10キュビト(2.5~5m)、高さ5キュビト(2.5m)、体重は実に400~700ストーン(400~700kg)まで成長する大型の猪であるアルトゥス・ボアには、普通の森の猪より三、四倍も大きいサイズ以外にも、もう一つの特徴がある。


普通の猪たちとは違う上顎(じょうがく)に生える牙の二対、もちろん他の親戚筋の猪のように下顎(かがく)にも大きな牙の一対(いっつい)が生えているが、上顎にも一対がさらに生えるアルトゥス・ボアの上牙は独特な形で成長する。


下顎の牙とは異なり、丸く曲がって目間の額に向かって成長する上牙の用途は不明だが、個体によっては目の近くで二股、三股に分かれて成長し、まるで騎士たちが使う兜のバイザーのように見えることもある。だから一部の人々はアルトゥス・ボアを兜猪(かぶといのしし)と呼ぶこともある。


「こっちだる! 猪!」


森の中に響き渡るニアの声が聞こえる。


―クルルルル―


藪をかき分けて気分よく甘い果実を噛み食べていたアルトゥス・ボアの一匹が、見知らぬ声に反応して警戒の音を出し、遠くから自分に向かって叫んでいるニアに向かって体を振り向かせた。


「ふぅお! ものすごく大きいやつだる!」


感嘆の声を上げ、ニアはその場で高く跳び上がり、大きな獲物を見つけた喜びを表現した。


―クェェェェェェ―


それに対して、平和な朝食を邪魔されたアルトゥス・ボアは怒った鳴き声を上げ、地面を蹴ってニアに向かって猛烈な勢いで突進していった。


果実の汁が入って紫色に見える牙とその中の歯が見えるほど口を開けて相手を威嚇する大きな音を出しながら突進してくる巨大な猪を迎えるニアの顔には、溢れんばかりの余裕が見える。


一瞬、ニアの手にある先端の尖った槍刃(そうじん)の表面に反射した光が突進してくるアルトゥス・ボアの目に映り、目を(またた)かせたが、それでも突進する動きは止まらず、ニアに向かっていた。


ニアの手にあるのは、普段愛用していた両手剣「180金貨」ではなく、3キュビト(1.5m)長さのボアスピアだった。先端に尖った木の葉形の刃の下にラグス一対の刃がついた槍である。


広くて厚い槍刃は幅が広いため、一度に大きな傷を負わせながら刺さるようになっている。戦闘と狩猟の両方の役割を果たせるように作られたこの槍は、基本の刃の下についた(とげ)たちのおかげで、槍に刺された猪が使用者に向かって突進して攻撃するのを防ぎ、刃が深く刺さりすぎないようにしてくれる。戦闘時には刃の下の棘たちを敵の盾に引っかけて引き寄せられるように設計されたボアスピアは、王国の狩人や兵士の両方に愛用される武器である。


ヴェス・ディナスで冒険者として正式登録を終えたニアの最初の依頼として選んだアルトゥス・ボアの狩猟。


大都市の冒険者ギルドはいつでも仕事を探す冒険者たちでいっぱいだ。


ニアがギルドの受付台で登録を終えたばかりの冒険者だと知った男が、ニアが選んだ最初の依頼の内容について尋ね、その依頼が西側の森のアルトゥス・ボアを狩猟しなければならないことを聞いた男は、「猪狩りをするならボアスピアを(たずさ)えていけよ。別に理由もなくボアスピアなんて武器にそんな名前をつけたわけじゃないんだから。武具店で15金貨くらいでいいボアスピアが手に入るはずだよ」と、最初の依頼を遂行しに旅立つ冒険者に惜しみない助言をしてくれたのだった。


そんな心の広い先輩冒険者の助言を受けて購入した槍がニアの手にある。特別な装飾がないため素朴な形状だったが、ニアの小さな手でも二幅を超える長い槍刃の先は鋭く研がれていた。


「もう少し近く…来るだる!」


突進してくるアルトゥス・ボアと自分との距離を測りながら、槍杆(そうかん)をさらに強く握りしめたニアが頭上高く腕を上げた。


ニアとアルトゥス・ボアとの距離がだんだん近づく。巨大な猪が動いて地面が揺れるような足音と、猛烈な勢いで突進する獣の音が森に響き渡る。


「うやっ!」


片足を上げた後、すぐに前方に向かって長く伸ばし、手にある槍を突進してくる巨大な猪に向かって投げつけた。


腰と上体を捻って投げるダイナミックな姿勢で投げられたボアスピアは、小さな体躯のドロコから投げられたとは信じがたいほど、とてつもない速度で飛んでいった。


まるで繊維を捻ってその張力を利用して大型の矢を飛ばすバリスタから発射されたような速い速度だった。


パカッ!


アルトゥス・ボアの眉間(みけん)に向かって成長していた太い牙が折れる太く重い音とともに、猪の頭に向かってまっすぐ飛んでいったボアスピアが巨大な獣の頭に深く刺さっていった。


短い鳴き声を上げた後、顎を地面に突っ伏せてそのまま崩れ落ち、滑りながらまだニアに向かっていたが、すでに命の糸が切れたアルトゥス・ボアはズルズルと滑り続け、やがてニアの前に続く土埃の風とともに止まった。


「くひひひ。捕まえたる、王猪。」


興奮した笑い声とともに猪の頭に刺さったボアスピアを抜きながらニアが言った。


ボアスピアは普通の投槍とは異なり、その先端が大きく重いため、投げる用途で使うには相当な熟練度と力が必要だ。だから直接手に持って刺したり振り回したりするのが一般的にボアスピアを扱う方法である。


おそらく冒険者ギルドでニアにボアスピアの装備を勧めた男も、猪の横から急所を狙って攻撃する方法ではなく、正面から突進してくる猪の頭に向かって槍を投げてアルトゥス・ボアを仕留めるとは予想していなかっただろう。


満足げな表情で倒れているアルトゥス・ボアの周りを一周回って大きさを測ってみたニアが、その場に止まって深く息を吸い込んだ。そして吸った息を吐き出しながら大きく叫ぶ。


「カルカ~! ここに一匹捕まえたる~!」


ニアの声が森に響き渡る。ニアの声に驚いた小さな鳥数羽が止まっていた枝を蹴って飛び立つ音が聞こえ、さらに遠くでは馬車の車輪の音が地面を交互に踏む馬の蹄の音とともに聞こえてきた。


「ニア~」


二頭の馬が引く荷馬車の座席に座ってニアに手を振って挨拶するグラベルが、アルトゥス・ボアの死体横に立っているニアに向かって馬車を駆って近づいていった。


「どうだる! カルカが捕まえたものより大きいみたいだる。」


腕組みをして自信たっぷりな表情を浮かべ、グラベルの馬車が近づいてくるのを待ちながらニアが言った。


「うーん~ どれどれ、見てみようか?」


馬車を停め、倒れているアルトゥス・ボアの姿を見てグラベルが言った。そして気づかないうちに、グラベルがニアを扱う態度と話し方がより親しげになっていた。


相手の心の警戒を崩して壊すニアの親和力が、短い時間でその能力を十分に発揮した結果だった。


「これは相当な大きさだな……? 解体するのに時間がかなりかかりそうだ。傷を見ると、その新しく買った槍で捕まえたみたいだね?」


「そうだる。イリス師匠がいろいろな武器を使ってみるのがいいと言ってたる。そして冒険者ギルドで禿頭(とくとう)の冒険者がボアスピアを勧めてくれたる。」


「イリスがよく教えてくれているみたいだね、僕もたまには他の武器を使ってみようかな……」


少しの間、腰に差した剣の柄を触っていたグラベルが、手を再び動かして腰元に吊るされた独特な形状の短い刀を抜き出した。


「どう? 皮剥ぎ用に新しく買った刀だよ。アルトゥス・ボアみたいなでかいやつでも問題ないって言われて選んでみたんだ。」


先端が尖っておらず、丸い半月形の厚くて広い黒い刀身が短い柄についた、珍しい形状の刀だった。


「ここに来る前に僕が捕まえたアルトゥス・ボアを解体しながら使ってみたんだけど、形状が独特で手に馴染むまで少し時間がかかったけど、性能は確かだったよ。」


「おおん~」


グラベルの手に持たれたスキニングナイフをニアが見つめ、ヴェス・ディナスに戻ったら購入するだろう刀の姿を目に詳しく収めようとした。


「ニア。お前は……今のナイフに慣れてから買うべきだよ。」


購入欲でいっぱいのニアの顔を確認したグラベルが、手に持ったナイフで猪の皮を切りながら言った。


「え……え……予備用を買っておこうと思っただけだる。」


「(買わないつもりはないんだな……)大公家から貰ったお金は結構な額だけど、それでも節約して使わないと。」


「わかったる……」


ニアの気分ほど下がった肩を見せながら、アルトゥス・ボアの解体を手伝うために死体近くへよたよたとニアが歩いた。


「(ふう……仕方ないか。) んん……今回だけだよ。このくらい使いやすいナイフは確かに珍しいから。一つくらい持っておく価値はあるよ。」


「くひひひ! わかったる。」


そんなに喜ぶニアの笑みを背に、グラベルとニアはアルトゥス・ボアの解体に集中した。


「ギルドから受けた依頼の内容が……アルトゥス・ボアの肝と胆嚢(たんのう)、心臓、そしてできるだけ多くの量の肉だったよね?」


「そうだるカルカ。」


鋭い刀先を皮と肉の隙間に押し込んで切り、依頼の内容を思い浮かべながらグラベルが言った。


「皮は必要ないのか? 少し粗いけど、これくらいならまともな素材の皮だと思うよ。皮もきれいに剥いで持って行こうぜニア。商人ギルドに持って行けば、適当な値をつけてくれるはずだよ。」


「わかったるカルカ。」


そうしてしばらく二人はアルトゥス・ボアの皮を剥ぎ、肉片を切り、馬車に積むのを何度か繰り返した後でようやく馬車に再び乗り、近くの小さな森の中の川へ場所を移して体についた血を拭き取ることができた。


「イリスがよく鍛えてくれているみたいだね。」


ニアの体に流れるマナの流れを見つめたグラベルが、腰元に皮剥ぎに使ったナイフを収めながら言った。


「そうだるカルカ。イリス師匠が明日からはマスターレックュヒナーの剣術を教えてくれると言ってたる。」


「ふむ? (レックュヒナー? 聞いたことある名前だけど……)あ、そうか。よかったね。」


「くひひ。」


「前に見た時よりマナの量が明らかに増えてるよ。うん……そろそろ1レベルの魔法を……」


「まほう~! カルカ! 今魔法を教えてくれるって言ったる!?」


ニアの目から閃く光が輝き、グラベルに向かって叫んだ。


「はは。今日すぐは無理だよ。その代わり、魔法を学ぶための基礎修練法を教えてあげるよ。」


呪文刻印(じゅもんこくいん)で簡単にニアに魔法を教えてあげられるけど、グラベルは基礎からじっくりニアに魔法を教えてあげたかった。


ニアが石像を護送するディアラの馬車に合流した後、ヴェス・ディナスまで来る途中でイリスとの修練を見守った結果、ニアの成長は目に見えて速かった。マナの成長だけでなく、剣を扱う能力の習得も速かった。


ニアが石像を護送するディアラの馬車に合流した後、ヴェス・ディナスまで来る途中でイリスとの修練を見守った結果、ニアの成長は目に見えて速かった。マナの成長だけでなく、剣を扱う能力の習得も速かった。


時間を置いてニアが少しずつ経験値を積みながら変化する姿を見るのも面白いだろうと思った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。ニアの初依頼、楽しんでいただけたでしょうか? 次回の展開も、どうぞご期待ください

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