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9話-ドレイク捕り (2)

< グロマイヤーのプロイクトンでの一日 >


濃い黒赤色の髪の男、ぼさぼさの髪は適当に整えて後ろに流していた。頰には目元のしわを横切る古い傷の跡が、袖をまくり上げた飾り気のない粗い素材のリネンシャツの下に露わになった前腕(ぜんわん)にある数々の傷跡が、この男が過ごしてきた時間を物語っているようだった。


腰に差した二振りの剣、歩くたびにカチャカチャと音を立てる複数のバックルがついた革靴の音が、階段を上るたびに響いてくる。このグロマイヤーという名の男は忙しい。数時間前、彼が率いる狩猟団がプロイクトンに到着した。


団員数人に冒険者ギルドの倉庫に下ろす箱類と工房街の商人ギルドに納品するリストを指示し、急いで冒険者ギルドの5階に用意された自分の部屋に向かって階段を上る。重い革靴のバックル音と、それに合わせて腰の金属飾りのある剣鞘(けんしょう)と吊り下げられた道具類がチャラチャラとぶつかる音が、リズムよく響く。


冒険者ギルドが提供した高級な部屋だったが、疲れた脚にはあまりにも過酷な階段を苦労して上り、ようやく部屋に入った。


部屋に入るなり、背負っていた鞄を床に下ろし、腰帯と腰帯につながった剣鞘と道具袋をベッドに向かって投げ捨てた。すでに何度もやったように慣れた手つきで靴のバックルを外し、脚を伸ばして部屋の隅に靴を飛ばす。そして投げ捨てた剣鞘と腰帯を避けてベッドに身を投げ出し、横になった。


「ふぅ~う~、疲れたな。くそったれの階段が・・・。人を二度殺す気かよ。」


グロマイヤーはそのまま横になって少し目を閉じ、考えに沈む。


『荷物はプロイクトンで全部下ろすし・・・。ルセンが何か調味料が切れたって言ってたけど・・・。あ、あれは自分で買ってくるって言ってたか?』


こんな感じで処理しなきゃいけない事を頭の中で整理している最中、部屋のドアを叩くノック音が聞こえた。


「団長、俺です。」


「あ? ああ。クルートか、入ってこい。いきなりノックなんて・・・。他の奴かと思ったぜ。」


白いシャツの上に茶色のベストをきちんと着込み、ヘアオイルを塗って整えた金髪の男がドアを開け、笑みを浮かべて部屋に入ってきた。


「へへ。まあ、久しぶりに野営(やえい)じゃなくてちゃんとした部屋ですからね。」


「くはははは。まあそうだな、俺たちがこんな部屋で寝られるのは今みたいな時くらいだよな。で、何の用だ?」


「えーっと・・・。あの・・・魔石ランスに使う魔石のことなんですが・・・。」


これから出てくる厄介な話のためか、クルートが頭を指で掻きながら言葉を続けた。


「この前来たランプトンで結構安く魔石を買ったのはいいんですけどね。」


「ああ。安く買えたじゃねえか。何か問題か?」


続く言葉がいい話じゃないのを予感したグロマイヤーが、横になっていたベッドから体を起こした。


「うーん・・・。それが、このプロイクトンに持ってきて、商人ギルドで魔力注入済みの魔石と追加料金払って同等の魔石と交換する予定だったんですけど・・・。それが・・・。」


「そうだよな、プロイクトンくらいの規模の都市ならそのくらいの量は十分にあるって言ってたじゃねえか?」


「はい、ありますよ。いつもありますよ、そのくらいの量はいつも。でも・・・。数日前に入ってくるはずだった魔力注入済みの魔石が届かなくて、中途で連絡が途絶えて、商人ギルドでも困ってるんですよ。それでも商人ギルドが気を遣ってくれて、天然魔石の中から魔力がたくさん溜まってるやつと俺たちの持ってきた魔石を無料で交換してくれたんで、当面は魔石ランスに使えはするんですけど・・・。」


クルートが流れる汗を袖で拭きながら、グロマイヤーに悪いニュースを伝えていた。


「使えはするけど、直接マナを注入して魔力を満タンにした魔石より火力が出ねえよな。よりによってこんな時に・・・くそ・・・。」


グロマイヤーが顎髭を指先でガリガリ掻きながら言った。気に入らなかった。最高、最強、最大級のドレイクの狩りを控えて、魔石ランスに使う魔石の確保から事がこじれるなんて。


先代団長の遺言(ゆいごん)、自分が死んだら墓に最高のドレイク肉料理を供えてくれと言ったのを思い出した。ドレイク料理なんて・・・。一生飽きるほど食べてきたくせに、魂までドレイク狩人になりたい先代団長のラミルを思い浮かべると、頭の中を掻き回していた怒りが少し落ち着いた。


「それでも今上がってきた時に魔石100個くらいは魔力注入の依頼を出したんで、そこに期待するしかありませんね。」


「ああ。プロイクトンは大きな街だから期待するしかねえな。他に報告する悪いニュースはもっとあるか?」


「ありませんよ。魔石も全くないわけじゃないです。予備の予備用として完全に充電された魔石が20個くらいはありますし、商人ギルドからもらった中にも使えるやつがありますから。」


「ぐははは!! そうだな、予備の予備!! それくらいあれば問題ねえよ!」


予備の魔石があるという言葉に、グロマイヤーが大きく息を吐いて安心したようだった。


「あ、そういえばトルパ狩猟団の話、聞きました?」


「トルパ? トルパ・・・。トルパか? あ・・・。あの亀狩りの奴ら? あいつらがどうした?」


「それがさっき商人ギルドに行った時に聞いたんですけど、今回の沼亀狩りがかなり上手くいったみたいですよ。昔みたいに深い沼の近くまで行く必要もないくらい亀がたくさん出てきて、もうプロイクトンだけじゃなく南のカビル公爵領にまで噂が広がったのか、あっちの商人たちまで薬材用の沼亀の殻を買いに北部沼地帯まで商隊(しょうたい)や狩人たちが集まってるそうですよ。」


「くははは~。トルパの奴、今回ちゃんと一儲けしたみたいだな! 後で会ったら酒でもおごってもらうか?」


グロマイヤーが大きく笑いながら席から立ち上がり、部屋のテーブルの側の椅子に移りながら言った。テーブルの上に置かれた濃い茶色の瓶を手に取り、大きく一口飲んだ。傾けていた首が再びクルートを見られる位置に戻ると、会話が続いた。


「それにしてもクルートよ、偵察に行った奴らの話が本当なら、狩猟図鑑に載るレベルの大きさだぜ。だからラミルの爺さんの願いも叶えて、俺たちも大儲けして! 史上最高のドレイクを狩った奴らとして図鑑に載ろうぜ! なあ?」


クルートの肩を片手で掴み、決意のこもった言葉を吐き出したグロマイヤーが、掴んだ手に力が入りすぎたと思ったのか、肩を掴んでいた手に力を抜き、クルートの肩をポンポンと叩いた。


クルートもそんなグロマイヤーの気持ちをわかっているのか、無言で頷いた。ドレイクの狩りに成功して大金を手に入れられるという期待感でもなく、最高のドレイクを狩るという緊張感でもなかった。


ただ、グロマイヤーとラミル前団長が過ごしてきた時間、そして自分も二人の団長と一緒にいた時間を知っているから、グロマイヤー団長に劣らない決意の心が自分にもあることを、自分自身が知っていたからだった。


グロマイヤーのプロイクトンでの一日 -終わり-







< グラベルの一日 >


早朝から道を歩くグラベルの足取りが軽かった。翌日がドレイク狩猟団が西の山脈地帯に出発する予定の日だったため、遠く離れた村や場所に行く依頼は受けられず、簡単にプロイクトンや都市の近辺でできる依頼がないかと思って、冒険者ギルドに朝早くから訪れていた。


冒険者ギルドの象徴が刻まれた厚い木の扉を開いてグラベルが入ると、遠くからグラベルの姿を認めたギルドの受付嬢が席から立ち上がり、グラベルに近づいてきた。素早い足取りで近づいた受付嬢が『ちょっとこちらへ』と言って、受付台の裏側の部屋にグラベルを案内した。


部屋につながる廊下には小さなサイドテーブルの上のランプ一つ以外に光源がなく暗かったが、部屋に入ると窓がないはずの部屋なのに、天井から光を放つ装置があって、薄暗かった廊下とは違い部屋の内部は真昼の陽光(ようこう)の下の屋外のように明るかった。


魔石灯(ませきとう)です。魔石に込められた魔力を利用して光を出す魔道具ですよ。」


グラベルの視線が上に向いているのを察した受付嬢が、グラベルに声をかけた。


「そうなんですか。」


受付嬢の説明にぼんやりと天井の魔石灯を眺めていたグラベルが、首を再び下げた。グラベルが魔石灯に視線を留めたのには理由があった。今までプロイクトンで見てきた暗闇を照らす手段は油を使ったランプや、ろうそくのようなものだけだったため、今の魔石灯という道具の存在自体を受付嬢を通じて初めて知ったからだった。


グランド・ワールド・オンラインではなかったが、同時代の他のゲームでも魔石という名称は一般的だったため、魔石が存在すること自体はそれほど驚くほどではなかった。しかし、この世界での魔石に関する好奇心は生まれたため、あれこれ受付嬢に尋ねた。


受付嬢も今回グラベルに頼む依頼の内容が魔石に関連していたため、グラベルが尋ねる質問に自分が知る範囲では親切に答えてくれた。


グラベルが受付嬢との会話を通じて知った魔石に関する話はとても興味深かった。そして、いくつかの事実は自分が想像した常識とはあまりにもかけ離れていて驚きもした。


魔石は光源を確保する装置以外にも様々な魔道具に使われるという。そして高価な品物だ。そのため、大半の魔石が採掘される鉱山は領主たちが直接管理し、軍隊を送って守っている。


『モンスターを倒せば魔石が手に入るんですか?』というグラベルの質問には、受付嬢が首を傾げて戸惑った様子を見せたが、すぐに何かを思い出したように、ロックワームやストーンゴーレムのようなモンスターや、魔石を摂取(せっしゅ)するモンスターから入手したという記録を見たことがあるとグラベルに答えた。


『まあ、すべてのモンスターが体内に魔石を持っているという設定のクソみたいなゲームはもう淘汰(とうた)されて消えたよな。ましてや野猪(やちょ)が金貨を持ってて死ぬとルートで落とすゲームもあったし・・・今思うと本当に古くて幼稚な発想だったな。』そう彼は少し昔の記憶を思い浮かべ、自分の質問がどれほど愚かだったかを悟り、すぐに他の質問に話題を移した。


このままでは終わりそうにないと思った受付嬢が、グラベルとの会話を続けながら少し会話が止まった隙を狙って、部屋の一角に置かれた大きな金庫に向かって歩いた。黒光りする鋼鉄で作られた華やかな金飾りがついた金庫を開け、様々な色で光る小さな石が入った袋を取り出し、テーブルの上に置いた。石たちの形と大きさはそれぞれだったが、すべて柔らかな光を放っていた。


「これが私たちのギルドで依頼仲介を請け負った魔石です。通常は自然状態でも魔力を持っているんですけど、これらをグラベルさんが魔力を注入していただければと思います。普段魔法を詠唱(えいしょう)する時みたいに、魔石にマナを注入するだけでいいんですよ。」


受付嬢が言葉を終えた後、袋に入っていた魔石の一つを取り出し、テーブルの上に置いた。少しテーブル上の石を眺めて頭を下げていたグラベルが、すぐに魔石を手に取った。


そして自分の手に握られた石に向かってマナを集中させるようにし、手を開いて見せた。


開いた掌の上に置かれた石が、グラベルが手に取る前より明らかに違うほど明るく輝いていた。


「これでいいんですか?」


グラベルが手の上の石を再び下ろしながら受付員に尋ねた。


「はい、ここにあるものを今みたいに注入していただければ。途中でマナが足りなくなったら無理せず止めてくださいね。」


受付嬢が魔石が入った袋を持ってグラベルの方に移動させた。100個の魔石のうち20個でも注入できればと思いつつ、受付嬢が部屋の隅の椅子に座った。


そうしてしばらくテーブルに石を置く音と、ガチャガチャと袋から魔石を取り出す音が繰り返し聞こえるのをしばらく後、グラベルは部屋から出てきた。


テーブルの上の魔石がすべて魔力注入完了したのを他の魔道具を使って確認した受付員が、何度も大丈夫かと体調を尋ねたが、それ以外は特に何事もなく、厚い金貨の袋を依頼の報酬として受け取ることができた。しかしその大きな金貨の袋を持ち歩くには重すぎてどうしようか困っていたところ、受付嬢がギルドでも通貨保管ができると教えてくれた。


偽造防止の保管証を書いてくれたり、新しくギルドに導入された魔道具に血の一滴を使って登録すれば、同じ魔道具がある大陸のどこでも、冒険者ギルドで預けた金額を引き出したり、保管したりする方法があるという。


大陸各地に、大都市ではとっくに普及した魔道具だったが、王国の辺境(へんきょう)であるプロイクトンには最近になってようやく配置された魔道具だと受付嬢がグラベルに教えてくれた。


まだ新しいギルドの制度を信用せず、自分だけが知る場所に埋めておく人、家がある人なら自分の家に隠したり、金庫を買って保管する人もいるという。冒険者の中には金貨と銀貨を再び高価な宝石に替えて、動きに邪魔にならない服や鎧の内側に布を重ねて縫い付けて保管する冒険者もいるという。


この街からあの街の依頼を受けて移動しながら生活する冒険者たちの特性を考えて導入した通貨保管制度だと、グラベルに説明してくれた。魔道具に一滴の血を落として登録を終えたグラベルは、金貨の袋をギルドに預け、軽い体でギルドの建物を出ることができた。

魔石もA5ランクとかA4ランクに分けられたりするんですかね? まるで和牛みたいに。

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