75話 農園 (8)
「 ぜぇっ、ぜぇっ、やけに遠いな。」
ロパーは、荒い息を吐きながら、呪いの言葉を混ぜて言った。汗が雨のように流れ落ち、頭に巻いた包帯は汗でびしょ濡れになり、上着も汗が染み込んで色が濃くなっていた。首と顎に流れる汗を拭いながら、ロパーは遠くの丘の上に見える黒い煙の柱に向かって走っていた。
「くそっ、なんて丘だよ! ちくしょうの丘め! おい、ガラド、あっちには誰の家があったっけ?」
「アケット、ロティ、ラントと……リノルダの家だよ」
「はっ! みんな似たような奴らが集まって住んでるんだな! 四つのうちどいつの家に火がついたって、俺の腕は火を消すための水桶を運ぶ気になんねえよ。へえっ……へっ……」
「そんなに言うなよ、ロパー。みんな一緒に農園で働く仲間じゃないか。まだ誰の家に火がついたか見たわけでもないんだし……」
ガラドは息が上がって喘ぐロパーの背中を押し、丘を登りながら言った。
「じゃあ、あの煙は肉でも焼いてるみたいか? あんだけ煙が上がるなら、豚を十匹は火の上に載せなきゃならねえぜ!」
「だから、早く行ってみようぜ。行ってみなきゃ、豚を焼いてるのか誰かの家が燃えてるのか分かんねえよ」
二人がそんな会話を交わしながら丘を登ると、遠くに煙が立ち上る場所が見えてきた。
ガラドとロパーが黒い煙の柱を見て駆けつけたように、農園の他の人たちも煙の上がる場所に駆けつけて集まっていた。
揺らめく炎が風に揺らぎながら、木造の家一軒を焼き尽くしていた。すでに何人かは大きな木のバケツに水を汲んで駆けつけ、火のついた家に向かって水をぶちまけていた。
そうして何人も丘の下の湖から水を汲み、揺れる水をバケツに満たして火のついた家に投げかけ、火を消そうとしていた。
「何があったんだ! なんで火がついたんだよ!」
ロパーが火を消すために集まった人たちに向かって駆けつけながら言った。
「分かんないよ、俺も黒い煙が上がるのを見て駆けつけたんだ」
「ロパー! 早くこれを手伝ってくれ! え? でも、どこか怪我したのか?」
茶色の髪の瘦せた体型の男が、二本の長い竿を持って近づき、ロパーに一本を渡しながら言った。
「大したことじゃねえよ。だから、まずあの火を消してから話すぜ。これで何をどうしろってんだ?」
ロパーが受け取った竿の先には大きな鉤がついていた。農園で高く伸びた木の実を採るための道具だった。
「それで燃えてる部分を引き剥がせ。そうすりゃ火がさらに広がるのを防げるし、落ちた木の小さな火は消しやすいんだ。準備できたか?」
「ああ! よし。行こうぜ」
ロパーは竿を肩に担ぎ、激しく炎が上がる家に向かって駆け出した。
ロパーより先に歩いていた男は、もう一本の鉤付き竿を持った人たちに手招きで合図を送り、自分たちのところに集めていた。
そうして木造の家をどんどん大きくなる炎が飲み込んでいた。ロパーと共に長い竿を持った男たちが燃える家の壁を剥ぎ取り、ガラドと他の人たちは休む間もなく丘を上り下りし、丘の下の湖から水を汲んできて揺らめく炎の勢いを抑えようとしていた。
「うわああ! いったい誰がこんなことしたんだよ!」
必死に体を動かして火を消そうとする人たちの間で、ラントの声が響いた。
「なんだよ。お前の家だったのか、ラント?」
ロパーは顔に付いた黒い煤を手の甲で拭いながら言った。
「ロパー! お前だ! お前の仕業だろ! お前が火を! 俺の家に火を!」
ラントはロパーの姿を見るや否や、彼に駆け寄り、両手で襟首を掴んで、怒りに満ちた声を大音量で叫んだ。
「ふん! こりゃあおかしいぜ。自分の家に火がついたのを消してる奴に、よくもそんな狂ったことを言うな……」
ロパーが言葉を言い終えるや否や、素早く頭をラントに向かって下げ、ぽんという音とともに、自分の襟を掴むラントの手を振り払った。
「ううぅん……」
ロパーの頭に当たったラントの鼻から、赤い血が鼻の下に流れ落ちた。流れる鼻血を手の甲で拭いながら、倒れた場所から立ち上がったラントが、再びロパーに向かって言った。
「ロパー、お前じゃなけりゃ、毎回農園の種を農民のために分けるのを拒むお前を慕う、利己的な連中の仕業だろ!」
「ははっ。こりゃあ、昨日今日で俺の頭がずいぶん苦労してるぜ!」
持っていた鉤付き竿を地面に投げ捨て、ロパーはラントの胸元の服を掴み、頭を叩きつけた。
鈍い衝撃音とともに、ラントが地面に叩きつけられるように倒れ、転がった。
ロパーは包帯を巻いた額を撫でながら、地面に倒れたラントに向かって歩いた。
「一発じゃ足りねえよな? そうじゃねえか、ラント!」
倒れたラントを引き起こしながら、ロパーが言った。そして再びロパーの頭突きがラントに命中しようとした瞬間だった。
「二人ともやめろ。まずはあの火を消してから話せよ」
二人の間にいつの間にか近づいて割り込んだガラドが、ラントの服を掴むロパーの拳を解きながら言った。
「ガラド! 邪魔すんな! お前がこいつの言う狂った言葉を聞いてねえからだよ!」
ロパーは大声で叫び、自分を止めるガラドに向かって言った。
「分かったよ。火を消してから、火を消してから話せ……。え……? あれは何だ?」
「どうした? 何だ? 火が移ったのか? え? 何だよあれ?」
ロパーはガラドの視線が自分の背後、空に留まっていることに気づき、すぐに体を振り向いてその理由を確認した。
ロパーの手から振り払われるように解かれたラントも、ロパーの背後の空を眺めていた。
「水? あれ水だよな?」
「うわっ! 魔法だろ? あれ魔法じゃねえか!」
何人もの視線が、まだ炎が上がるラントの家の上、空に向かって固定されていた。
炎の熱で揺らぐ煙の向こうに、巨大な水の球体が空に浮かんでいた。
青く澄んだ塊はゆっくりと家の上に降りてきて、下の煙を押しつぶすように潰し始めた。
空中から流れ落ちる水の筋が球体の表面を伝い落ち、
その水滴が炎に触れるたびに、ちっ——という音を立てて煙と蒸気を噴き上げた。
ちいいいいっ——!
熱い炎と水が出会い、蒸気の音が響き渡り、それに続いて白い水蒸気と黒い煤が絡み合って空に舞い上がった。
水滴が飛び散るように弾け、煙の中で水分が染み込んだ木が熱い息を吐くように蒸気を噴き、静かに冷えていった。
炎は徐々に押し戻され、丘の上の空気さえ湿って沈んだように落ち着いた。
その瞬間、人々の間で誰かが感嘆に近い声で叫んだ。
「うわあ……すげえな……」
「リシア様が来られたのか?」
「ああ! リシア様の魔法だよ!」
球体は燃えていたラントの家を包み込み、形を保てなくなると一瞬で散らばり、周囲の地面に激しく流れ落ち、何本もの水の筋が丘の下に流れていった。
「申し訳ありません。消えたワレンという方の馬車が見つかった森に行っていたので、遅くなりました」
つい今し方、目の前で起きたことを目で見ても、空から突然現れた円形の水の塊が燃える家の上に降りて火を消したという事実を信じがたいのか、火を消すために集まった人たちの表情はまだぼんやりと、半焼したラントの家を眺めていた。
そんな中、大きなつばの帽子を被ったディアラが姿を現し、人々の間を通り抜け、ラントの家の前に立って話し始めた。
「遅くなりましたが、火は消しました。もう一度、遅れたことをお詫びします。そして!」
ディアラは「そして」と大きく声を上げ、地面に向けた杖の先を地面に叩きつけながら言葉を続けた。
「農園では今、考えが二つに分かれて対立しているようです」
ディアラの言葉に、周囲の人々がざわめき、小さな声でつぶやく音が聞こえた。話す口元を見られて自分の言葉が遠くの誰かに聞こえるのを恐れ、手で口を覆いながら隣の人と話し合う者が多かった。
「では、続けます」
ディアラが再び杖を上げて地面に叩きつけると、周囲のざわついた雰囲気を整理するほどの大きな鈍い音が響いた。
「確かにリシア様がおっしゃった通り、農園の皆さんの意見をヴェス・ディナスのラタク様に私が伝えることになっています」
「ああ。早く伝えてください。農園でさらに大きなことが起きる前に」
「なんだよ? じゃあ今、ラントの家に火がついたのは、誰かがわざと火をつけたのか?」
「しっ。だいたい察しろよ」
再び周囲がざわつきそうになると、ディアラは少し頭を下げて喉を整え、大きな声で周囲の注意を集中させた。
「ですから、私がラタク様に今の状況を伝え、そのお言葉をいただくまでは、今日のようなことが二度と起きてはいけません」
言葉を終え、固く口を閉じ、周囲の人々を睨むディアラの眼差しは鋭かった。
「今日、この時間以降は、どんな小さな事故も、事件も起きないことを願います」
落ち着いた口調で話し、自分を眺める農園の人々と目を合わせながら、ディアラは言葉を続けた。
「隠れ月の寺院で学んだ一つの教えを、ここにいる皆さんにお伝えします。寺院では、人間の善は月光のようなものだと教えます。大きな光で周りを照らし、光が小さくなるのは常に警戒せよと。ですから、全ての存在は自分だけの光の守護者です。どうか自分の光である善を失わないよう、警戒してください」
ディアラの短い教えの言葉を朗読するような演説に、一時しんみりとした雰囲気が広がり、互いにどうしたものかと目配せするばかりだった。
「さあ! さあ! 火は消えたんだから、みんなディアラ様の言葉を胸に刻んで、それぞれの仕事に戻ろうぜ。夕方また会おう」
ロパーが大声で騒ぎ出し、静寂と厳粛さが降りた場から農園の人々が抜け出せるように助けた。
「火が広がる前に来てくださってよかったです、ディアラ様」
ガラドがディアラのそばに近づいて言った。
「いえいえ。もっと早く来るべきでした」
「そんなふうに思うのはディアラ様だけですよ。あまり自分を責めないでください」
「はい。そうします、ガラドおじさん」
頭を下げて苦笑いを浮かべるディアラが、再び頭を上げてガラドに答えた。
「それより、リルゥはどうですか? 少し元気になったでしょうか?」
ガラドは朝に聞いたリルゥが目覚めたということを思い出し、ディアラに尋ねた。
「何が起きたのか子供に聞いてみたけど……本当に何も覚えていなかったんです。でも、その子の目は何か思い出したように大きな涙の粒を作って、ずっと泣くばかりで……」
「それは……可哀想に」
良くない知らせを聞いたガラドの表情が悲しげに見えた。そして少し後、大きく息を吸い、下げた頭と地面を見るために曲げた腰を伸ばし、ディアラに言った。
「兎を何匹か捕まえてきます。農園の子供たちは甘いタレを塗って焼いた兎のローストが好きですからね。私があの子にできるのはそれくらいです。それじゃ、行ってきます。家に寄って罠を仕掛ける道具を取って、遅くならないうちに罠を仕掛けなきゃ」
ガラドはディアラと短い手の挨拶を交わした後、急ぎ足で丘の下の道に向かった。
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