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3話-冒険者ギルド

グラベルとイリスの二人は、都市の中央にある広場に向かって歩いていく。道を進みながら、周りの人々や建物をきょろきょろと見回すグラベルの姿は、まさに都会に初めて来た田舎者のようだった。それに比べて、イリスはただ黙って先を行くグラベルの後を静かに追いかけるだけだった。


二人が都市の中央広場に到着した後、雑貨店の主人が話していた商人ギルドと冒険者ギルドの場所を尋ねるため、広場の花壇(かだん)に腰掛けている、灰色の髭がふさふさと生えた老人にグラベルが近づいて道を尋ねた。


「商人ギルドは、あっちの北門の方へ行くと、青い屋根の建物だよ。冒険者ギルドは……」


老人は言葉を止め、あごを上げてグラベルの後ろを指さした。


「ありがとうございます!おかげで……あ?すぐ後ろに?」


グラベルが振り返って背後を見ると、羅針盤(らしんばん)と剣の紋章(もんしょう)が刻まれた5階建ての大きな建物があった。もう一度お礼を言うために振り返ると、老人の姿は消えていた。


「とりあえず、入ってみよう」


グラベルが先頭に立って走り、冒険者ギルドの正面玄関を開けて入ると、最初に目に入ったのは、広いホールの片側の壁を占める、小さな依頼書(いらいしょ)が貼られた長い壁に沿った大きな掲示板(けいじばん)だった。


グラベルは掲示板に近づき、貼られている依頼書を調べ始めた。


「北の街道の盗賊退治(とうぞくたいじ)、南のウィルクミル村近くのゴブリン退治(お?ゴブリン?この世界にもゴブリンがいるのか?)、南西(なんせい)の森のダイアウルフの群れ退治……(ダイアウルフ?グランドワールドオンラインにもいたモンスターだ)ほとんどが退治の依頼か……。じゃあ、あっちは?」


壁には、モンスターの退治や野生動物の狩猟が主流の掲示板と、採集(さいしゅう)調査(ちょうさ)の依頼が主に貼られている掲示板、護衛(ごえい)同行(どうこう)を求める依頼が主流の掲示板と、大きく分かれているようだった。


「とりあえず、これにしてみようか」


グラベルは掲示板の依頼書を一枚剥がし、他の冒険者たちが向かう受付と思われる場所に向かった。


きちんとした黒い制服を着た受付員(うけつけいん)が数人、待ち行列を少しでも短くするために忙しく動いていた。


依頼を受けるために相談する冒険者、完了した依頼を報告するために忙しく手を動かして何かを書く受付員と、その前で話す冒険者。走り回って何か書かれた紙の束や本を運ぶ冒険者ギルドの職員たちが見えた。


「西の鉱山(こうざん)で新しい遺跡(いせき)が見つかったって?」


「また山脈(さんみゃく)の下の大迷宮(だいめいきゅう)とつながっている遺跡なのか?」


「わからない。でも、盗掘(とうくつ)の跡がない新しい遺跡らしいよ」


厚い鎧を着た人とローブを着た男。軽い革の鎧を着て、クロークのフードで顔を半分隠した冒険者たちの会話が聞こえた。


「ああ!この辺りは本当に平和すぎるよ」


「そうだね、王国の端の辺境(へんきょう)とは思えないほどだ」


「ここ、トルド伯爵領(はくしゃくりょう)は王国の外れにしては治安がいいからね。伯爵が自ら歩き回って、モンスターや山賊(さんぞく)みたいな奴らまで処理しているって聞いたよ」


「俺たち冒険者も食っていけるようにしてくれよ、トルド伯爵!」


「今日は休んで、明日は南に行ってみよう」


「お?ちょうどいい、俺もそのつもりだったんだ。あの時の斥候(せっこう)にも一緒に来るように誘ってみようか?」


腕を組んで会話する背の高い冒険者と、その前で髪を整えるように触りながら会話する冒険者。その他にも、自分の計画を相談したり、依頼を終えて戻ってきて話している冒険者たちの声で、ギルドホールは騒がしかった。


周りの会話を聞きながら並んでいると、いつの間にかグラベルの番になった。


「はい、お二方、ギルドにいらっしゃったのはどのようなご用件でしょうか?」


金髪をきちんと束ねた、柔らかな微笑みを浮かべた女性がグラベルを迎えてくれた。


「依頼を受けたいのですが」


グラベルは手に持った依頼書を受付員に差し出した。


「はい、では、ギルドに登録はされていますか?お二方ともお見かけしたことがないお顔ですが……。他の支部で登録されているなら、必要な情報が書かれた冒険日誌(ぼうけんにっし)を引き継ぐ必要がありますので」


最近見たことのない顔だったので、受付員がグラベルに尋ねた。


「登録はしていません。今できますか?」


「お二方とも登録されるのですか?」


「はい、私たち二人ともお願いします」


「はい、では、まずこれに記入してください」

受付員は身をかがめて、受付台の下の引き出しから茶色の紙を二枚取り出した。


名前・性別・年齢・特技など……簡単な内容だったので、グラベルは受付台に置かれていた羽ペンを手に取り、インク瓶に浸した後、紙に書き始めた。


「私が代わりに書くよ、イリス」


グラベルのガントレットに比べてイリスのものは厚かったため、ペンを取るにはほどかなければならない小さな紐やバックルが多く、わずかな文字を書くためにガントレットを脱ぐのは面倒そうだったので、グラベルはイリスの書類も書くと言ったのだった。


「ありがとうございます、グラベル様」


イリスは軽く頭を下げて感謝の意を示し、グラベルから二枚の紙を受け取った受付員は、紙の内容をざっと見た後、前の受付台に置いた。


「お二方は冒険者登録が初めてですので、簡単な外見登録のために少々お待ちください」


二人に声をかけた後、席を離れていた受付員が、しばらくして白い髭を長く伸ばした老人と一緒に席に戻ってきた。


肖像画(しょうぞうが)を描く必要がありますので、あまり時間はかかりません……お二方の顔を」


イリスはヘルメットを、グラベルはローブのフードを深くかぶっていたため、受付員はジェスチャーで自分の頭に目に見えない仮想のフードを両手で脱いで後ろにめくる真似をして知らせた。


「あ、そうですか」


受付員と目が合ったグラベルは自分のフードを脱いだ。イリスも自分のヘルメットを脱いで片腕で抱えた。


「お二方は遠くからいらしたのですね」


二人の濃い黒色の髪と黒い瞳の色を見た受付員が言った。


「受付員の言葉を聞いてみると、周りの人々の髪の色は金髪、茶色、赤色など、さらには銀色の髪色もあったが、黒い髪の人はいなかった……。さっき受付員のお嬢さんが言った遠い場所には黒い髪の人が多いということか?情報が足りない……。こういう時は適当に」


「はい、ははは……」


ばつの悪そうな笑いと微笑みを交えた返事でグラベルはうやむやにした。老人がグラベルとイリスの顔を描いていた頃、不気味な静けさに気づいたグラベルが振り返ると、数十人の冒険者たちが二人を取り囲むように集まっていた。


「あ、女神……」


「美しい方だ……」


「綺麗だなぁ〜」


目の焦点が定まらないまま、ぼんやりとイリスの周りに群がって見つめる冒険者たち。

グラベルも周囲の視線を感じたが、それはイリスに向けられた好意ではなく、嫉妬が滲んだ視線のようだった。


「一体どんな奴なんだ、女神のように美しい人と一緒に冒険を!!」


グラベルもイリスと一緒にいるという理由だけで、外見を評価する審査台に立たされたが、「男はああいう見た目じゃ何の役にも立たない!俺みたいじゃないと!」と同僚に自分の顎を親指で指しながら筋肉質の腕を自慢し、現実を否定しようとする冒険者以外は、なかなかどうして非の打ち所のない端正な容姿で、他の周囲の女性冒険者たちの注目を集めていた。


イリスの周りはますます混雑した。イリスをより詳しく、より近くで見るために椅子を持ってきてその上に立ち、さらにはつま先立ちで見ている冒険者、ほんの少しでもイリスの姿を見るために飛び跳ねている冒険者たち。次第にイリスの周りを囲む人々が増えていた。


どこかで非常に馴染みのある状況に直面するまで、グラベルは忘れていた。過去のグランドワールドオンラインでイリスが持っていた美の破壊力を……。イリスの容姿はグランドワールドオンラインでも時折話題になるほど有名だった。キャラクターカスタマイズで有名な彫顔作家(ちょうがんさっか) たちでさえ、「これ以上の完成度の高い美を持つキャラクターはいない」と認めるほどの容姿だった。


グランドワールドオンラインのユーザーの中には、イリスとグラベルを専門に追跡し、リアルタイムで位置を共有する者たちもいた。さらには、グラベルに「イリスにぜひ着てほしい」という言葉と共に、丹精込めて(たんせいこめて)用意した「贈り物」を捧げる者たちも数多くいたほどだった。


そうした数人のプレイヤーからの評価が広がり、さらに広がって、情報を交換するウェブサイトで噂がさらに広まり、しまいにはグランドワールドオンラインのランカープレイヤーやストリーマーよりも有名になった。RPロールプレイプレイヤーの中の自称吟遊詩人(ぎんゆうしじん)たちは、イリスに歌を捧げるほどの有名さ。さらには、大型ギルドのギルドマスターだったあるユーザーは、イリスの姿を模した巨大な彫像を建てたとも言われていた。


そんなイリスの美貌のおかげで、グラベルもグランドワールドオンラインでさまざまな便宜を図ってもらった。今グラベルが着ているローブや鎧でさえ、有名な製作ギルドのユーザーたちがイリスとその主君(しゅくん)に捧げる贈り物として手に入れたものだった。


しばらく過去の思い出を振り返っていると、二人を描いていた老人の声が聞こえた。


「もう終わりました」


受付員の横で絵を描いていた老人がうなずき、絵が完成したことを知らせた。


登録料(とうろくりょう)銀貨(ぎんか)5枚です。お二方なので銀貨10枚になります」


受付員は、混雑して冒険者たちが周りに集まっている状況を素早く整理するために、手足を忙しく動かした。グラベルもそれに合わせて受付台に銀貨を素早く置き、多くの人の視線を感じたイリスは急いで髪を整え、再びヘルメットをかぶった。


「ギルドへの登録は完了しました。依頼も受けるとおっしゃっていましたね?」


「あ?あ、はい。ええと……南西の伐採場(ばっさいじょう)のダイアウルフ退治の依頼で」


受付員から渡された、すべての冒険者に共通して支給される羅針盤と剣の紋章が刻まれたバッジをローブの肩のあたりに付けたグラベルは、依頼書を再び受付台に置いた。


「伐採場の……ダイアウルフ退治ですね……。あ、こちらにあります。伐採場の位置を示した略図(りゃくず)です。退治の証として、(きば)2本が1匹退治の証として認められます。報酬は1匹退治につき金貨(きんか)2枚です」


受付員は小さな紙に印をつけた後、グラベルの前に差し出した。


「ありがとうございます。では」


グラベルとイリスは周りを囲む人混みを抜けて、冒険者ギルドの建物を出た。






Extra


ギルド登録のために肖像画を描いている最中、グラベルが受付員に尋ねた。


「それで、私たちはどのランクから始めるのですか?銅ランク(Copper)?それより下があるのですか?」


「はい?どういうことでしょうか?よくわかりませんが……」


思いがけない質問を受けて戸惑った受付員が首を傾げながら答えた。


「ええと……つまり、初心者の冒険者と熟練の冒険者を区別するためのランク制度のようなものですが……」


「ああ、東の国のギルドではそのような制度で運営されているのですね。私たちはそのような制度はありません。代わりに、依頼を完了するたびに報告書のような形で内容を記入し、評価と一緒に保管します。いわば冒険日誌のようなものです。そのように集められた評価を通じて、私たちは熟練の冒険者を判断するのです」


「そうなんですね。では、受付員の方がその冒険者に依頼を任せるかどうかを、報告書を見てから決めるのですね」

「はい。そうすることで、依頼の内容についてもう少し詳しく説明することもできますし、人員が足りないと判断すれば他の冒険者を紹介することもできます」


「いい制度ですね。でも、そうやって一人一人相談するよりも、あらかじめランクを分けて、例えば貨幣のように金、銀、銅とかで。そうして依頼も金、銀、銅級の依頼に分けて配布したらどうでしょうか?余計なお世話かもしれませんが?はは」


グラベルは照れくさそうに笑いながら言った。


「いいえ、冒険者様のご意見にも一理あります。いいシステムだと思います。もう少し練って、既存の制度に補強してみてから上司に意見書を出してみようかと思うほどです」


「私も今思いついたまま言っただけなので。冒険者のランク制度についてもっと詳しくお話ししたければ、いつでも言ってください。しばらくこの街に滞在する予定なので」


「はい、グラベル様。承知しました」

"今日も読んでくださってありがとうございます! 今回の章では、ついに冒険者ギルドに登録する場面が登場しましたが、思ったより書類作業が多いですね(笑)。 皆さんならどんな依頼を受けてみたいですか? コメントで教えてください! 次回はいよいよ最初の依頼遂行が始まります! お楽しみに!

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