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25話-ディアラとの対話 (1)

会話の最中、ディアラが一瞬言葉を止めた。お茶を小さく一口飲んで、手で口を覆ったまま、短い沈黙の時間が天幕の中に漂った。


「グラベル様。もしかして、旅の予定を……延ばしていただけますか?」


ディアラが慎重に言葉を切り出し、グラベルに尋ねた。


「え? ええ……特別な理由があるなら、延ばすことはできます。でも、どうしてそんなことをお聞きになるんですか?」


「あなたたちお二人を雇いたいんです。ヴェス・ディナスまで、この石像が無事に届くようお手伝いください。」


ディアラの話を聞いた瞬間だった。お茶の入ったカップを口元に運ぶ短い一瞬だったが、二つの状況を心の中の天秤にかけ、考えを急速に巡らせた。


『このまま馬車が修理されるまで必要な情報を得て、迷宮都市へ向かう方法と、予定を変えて石像の護衛に加わるなら……このディアラという魔法使いと旅をしながら、より質の高い情報を得られるのか。そもそも迷宮都市アクイルンへ向かっていた理由は、大陸各地から集まる冒険者たちから、空に浮かぶ浮遊島に関する手がかりでも得られるかと思ってのことだったし。今、石像を運ぶヴェス・ディナスは公爵家の中心都市らしいから、情報の量と多様性でもアクイルン行きを相殺(そうさい)できるだろう。』


「はい! 私たちがお役に立てるなら、参加します。」


お茶を一口飲み干した後、テーブルにカップを置きながら、グラベルが答えた。


「ありがとうございます。先の襲撃で護衛隊の被害が大きすぎて、護衛に必要な人員が不足していたんです。そしてグラベル様とイリス様の実力なら、本当に……本当に安心できます。」


「そのグリックという人がまた襲ってくる可能性があるからですか?」


「ええ。それも十分あり得ますし、私たちの馬車はプロイクトンを経由して東へ向かうのですが、そこがカビル家の領地に近い場所なんです。バナス大公を非常に敵視する家系ですから、おそらくそのグリックという人はカビル家から雇われた可能性が高いんです。だから、お二人のお力添えが切実なんです。」


「でも、その石像にはどんな特別な力があるんですか? 普通の石像じゃないのはわかりますけど……」


グラベルの言葉とともに、三人の視線が天幕の一角を占める石像に向かった。


「解毒能力です。石像に触れると、どんな毒でも解毒できるんです。アクイルンの地下にある地下王国の玉座の間で発見されたそうですから、おそらく毒殺を防ぐためのものだったんでしょうね。」


「誰しもが欲しがるアーティファクトですね。カビルという貴族が狙う理由がわかります。」


「ええ。だからカビル家以外にも狙う貴族や勢力があると思います。」


ディアラがゆっくりと石像に向けていた自分の視線を戻し、テーブルに置かれたカップを見た。


「それでは、今日はここまでにいたしましょうか? 今日はいろいろありましたから、お疲れでしょう。」


グラベルが席から立ち上がりながら、ディアラに言った。欲を言えば夜を徹して話を続けたいところだが、ディアラの負傷と今後の計画を考える時間を必要として、早めに席を立ったのだった。


「では、明日また続きを……」


「はい。明日またお伺いします。それでは。」


グラベルが先に天幕の外へ出て、イリスがディアラに挨拶をした後、グラベルを追って出た。




*****


日が明けた後、少し時間が経ってからようやく野営地が人々の声で賑やかになった。馬車の修理まで移動がないことを兵士たちが知っていたこともあり、前日の疲れを癒すために、ディアラの命令でゆったりと一日を始めることを許されていたからだった。


グラベルも遅く起きて、野営地の中央の焚き火のそばで兵士たちと話をしながら時間を過ごした。そして時間が少し経った後、一人の兵士が夜に仕掛けた罠で兎を数匹捕ってきて、温かい兎肉のシチューで朝食を摂った後、イリスと剣術の稽古をしながら時間を過ごした。


ディアラも遅い朝に天幕を出て、兵士たちに天幕内の石像を守るよう命令した後、プロイクトンへ向かった。


再び兵士たちが集まって昼食を摂った後、さらに時間が経ってからようやくディアラが野営地に戻ってきた。その後、グラベルとディアラが昨日と同じように、天幕内の椅子で互いに向かい合って座っていた。


「お気に召すかわかりませんが。」


ディアラがテーブルに小さな袋を置き、グラベルの前にゆっくりと押し出した。小さな袋の隙間から、甘く鼻をくすぐる花の香りと木の皮の香りが混じって漏れ出ていた。グラベルが袋を少し開けてみると、紫色の乾いた花びらが入っていた。


「ラベンの蜜草と言います。グラベル様が香りの良いお茶をお好きそうでしたので、プロイクトンへ寄った帰りに手に入れてきましたの。」


「今日は新しいお茶を飲む楽しみも加わりますね。」


少し後、テーブルにはラベンの蜜草が入った香り豊かなお茶の香りが漂うカップが置かれていた。


「それでは、今日は魔法についてお聞きしたいんですが。ええと……正確には魔法の習得過程が気になります。エステタ王国での魔法の習得法は、私が知っている方法とは違うみたいで。」


グラベルが習得したすべての魔法はグランド・ワールド・オンラインで学んだものだったから。ゲームの背景知識では様々な魔法の習得方法があったが、この異世界での魔法を習得する過程が気になった。


異世界に来てから、グラベルのキャラクターのクラスである魔道学者(まどうがくしゃ)の影響か、それとも普段グランド・ワールド・オンラインの魔法に関する背景知識を読んでいたせいか、魔法を使う原理と方法は頭に刻み込まれているようだったが、そんな魔法たちの習得過程は記憶に残っていなかった。


グランド・ワールド・オンラインでの魔法の習得とは、魔法書を読むことで魔法を習得する。魔法の種類によって時間は違うが、大抵の魔法は書物や文書を通じて習得する。いくつかの例外では、クエスト上のNPCから伝授を受けたり、特別なイベントを通じて学んだり、またはユーザー間での魔法の伝授が習得方法だった。だからグラベルがこうした質問をする理由は、ある意味で記憶や情報の欠損(けっそん)を埋めるために、ディアラに魔法の習得過程を尋ねたのだった。


「え? グラベル様も魔法にはお詳しいんじゃなかったんですか? Dil(2レベル)の解毒魔法と回復魔法も唱えられるって、私は存じ上げておりますけど。」


「ええ。私もこの地の皆さんが言うマナの道を歩む者です。でも、私が魔法を学んだ場所の魔法の種類と体系があまりにも違ってて。そのDil(2レベル)というのはどんな分類法なんですか?」


「隠れ月の寺院を出てから勉強が足りなかったのかしら、魔法の分類は魔法使いたちの世界では共通の体系で分けられていると思っていましたわ。考えてみれば、東のキルビアとか南の砂漠王国でも分類は十の段階に分かれるのは同じですが、用語は違うんですのね。」


グラベルの質問に少し驚いた様子だったが、お茶を一口飲んで声を整えながら、ディアラが言葉を続けた。


「まずは魔法の分類についてお答えします。威力によって魔法はMon(1)、Dil(2)、Tro(3)、Teta(4)、Pentra(5)、Hexol(6)、Heptel(7)、Octo(8)、Nonal(9)、Decan(10)と分けられていますの。」


『1から10レベルの分類法と同じか? 10段階以上はないのか、それとも……。』グラベルが話を聞きながら、心の中でグランド・ワールド・オンラインの体系を思い浮かべ、ディアラの話を聞いていた。


「そして性質によって系列に分類されるのは、防護系(アブジュレーション)(Abjuration)、召喚術(コンジュレーション)(Conjuration)、付与術(エンチャントメント)(Enchantment)、幻影術(イリュージョン)(Illusion)、予見術(ディヴィネーション)(Divination)、放出系(エボケーション)(Evocation)、死霊術(ネクロマンシー)(Necromancy)、変容術トランスミューテーション(Transmutation)、そして神々が使われる神の属性である特殊系があります。」


「(系統分類はグランド・ワールドの設定と分類法が一致する。神の属性の存在まで……。)私が知っている知識と一致する部分もありますね。威力分類の名称だけが違うだけでした。」


「学派や国が違っても、マナという共通の力を扱うからそうなんですのね。」


その後、それほど長くない沈黙の後、再びディアラが話を続けた。


「それでは、お気になさっていた魔法の習得についてお話しします。魔法を学ぶ前、大抵の場合、主紋章(メインクレスト)(Main Crest)と補助紋章(サポートクレスト)(Support Crest)を学ぶ過程から始めます。」


ディアラがグラベルとの間のテーブルの上の虚空(こくう)に向かって手を伸ばし、小さな魔法陣を実体化(じったいか)させた。


「今のような、この魔法陣の中央の紋章が主紋章で、そしてその主紋章の周りに繋がった紋章たちが補助紋章です。」


グラベルが体を前に傾け、ディアラが実体化した魔法陣を詳しく見た。


「紋章の形は違いますが、主紋章とそれを補う紋章の組み合わせで魔法の能力が変わるのは同じですね。」


「魔法を習得するということは、今のように体から放出したマナを制御して魔法陣を実体化させるのが始まりです。でも、その始まりに先立つもっと基本的なのは、使う魔法の紋章たちを記憶することですの。細部まで、目を閉じても描き出せるほど完璧に記憶して、目の前に実体化して実装するのが、魔法を唱える準備ができるんです。」


グランド・ワールド・オンラインではゲームだったから、ディアラが言ったように紋章を覚えて実体化する過程はなかった。主紋章とそれと共に使える数百の補助紋章の組み合わせと応用が魔法使いの必須能力だった。ディアラの話を聞きながら、頭の中に記憶され整理された紋章たちを思い浮かべ、グラベルが微笑んでいた。


『予想外の収穫だ。魔法の使用方法が同じなら、この地の魔法、異世界の魔法も習得できるということだ。』


知識を得た喜びなのか、それともさらに強くなれるという欲望の充足(じゅうそく)なのか、わからない感情がグラベルを微笑ませ、喜ばせた。


「それでは、私が知っている紋章と似たような、または同じ効果の紋章があるか見てくれますか?」


グラベルが指先でテーブルの上に絵のような紋章一つを実体化させると、小さな紋章がテーブルの上で光を放っていた。


「うん……見たことのない紋章です。どんな能力の紋章なんですか?」


ディアラが椅子から体を半分起こし、紋章をより詳しく見るためにテーブルに体を傾けた。


「マナを集める紋章です。どんな魔法とも応用して使える紋章ですよ。似たような能力の紋章をご存知ですか?」


「いいえ。全然わかりません。マナを集めるというのは、唱える者が魔法陣に注入(ちゅうにゅう)するマナとは違って、紋章自身がマナを集めて魔法陣の主紋章にマナを注入するというお話ですか?」


目を大きく見開き、ディアラがさらに近くでテーブルの紋章を見ながらグラベルに尋ねた。


「(しまった! それなりに時間差発動と遠隔発動に必須の紋章を見せたのに……)ええ。この紋章を使うと、紋章自身が周囲のマナを引き寄せて主紋章を発動させます。ただ、紋章自体には唱える者が発動にかかるマナを注入しなければいけませんが。」


「それでは、私にもこの紋章を教えてくださいますか? お願いします、グラベル様!」


「ええ。教えるのは問題ないですが、思っていらっしゃるより紋章の実体化と発動自体にかかるマナの量が多いです。そして自身でマナを集める速度に慣れるには長い時間がかかりますよ。」


「はい! 構いません。魔法使いとして一つの紋章をさらに習得するほど嬉しいことはありません。」


ディアラの少し大きくなった声が、新しい知識を習得する魔法使いとしての喜びの心を代わりに表していた。

魔法って難しいな…

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