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23話-馬車襲撃 (4)

番外編: 深い海底の剣


ある日、タウトに一振り(ひとふり)の剣が献上された。埃にまみれ、あちこちに糸くずが飛び出た粗い綿布にぐるぐる巻きにされていたため、タウトはさして期待もせずに臣下に命じて布を解かせた。まるで長い歳月を耐え抜いて色褪せたような黄色い布を解くと、そこに包まれていた剣が姿を現した。黒い波模様が流れ、刃が光に反射するたびに角度によって時折青く見える剣だった。


剣から反射した光がタウトの顔をかすめた瞬間、彼の目が鋭く輝いた。何かに取り憑かれたように目を離せずにいた彼は、やがて席から勢いよく立ち上がり、一歩、二歩と前に進んだ。周囲の臣下たちが驚いて様子を窺う中、タウトは両手で慎重に剣を手に取った。指先に伝わる冷たい刃の感触に息を止めたまま、彼はそれをゆっくりと高く掲げた。陽光(ようこう)が剣の上を染み込むように流れ落ちると、その波模様が一層鮮やかになった。


不思議と目を引く淡い青い光が、見る者の視線を捉えた。柄は握りやすいように模様が刻まれ、刃の根元にも繊細に彫られたオニキスと金箔で飾られた文様が見えた。銀色の刃の下に現れる深い青い波が、あまりにも美しい剣だった。


タウトが自分の腰に()いた愛剣をちらりと見やり、撫でた。しばらく剣を何度か振り回し、あちこち持ち上げてみて、タウトは悩む様子を見せた。


時間が少し流れ、タウトが臣下を呼び、金床(かなとこ)を二つ持ってこいと言った。そして目を閉じて、金床が来るまで待った。


やがて目を開けたタウトの前には、二つの金床が並んで置かれ、金床の間に持っていた青い模様の剣が乗せられた。


タウトが腰から自分の愛剣を抜き、金床の間に置かれた剣を叩きつけた。


二つに折れて床に落ちるはずだったが、タウトのそんな予想は外れた。剣はその場に無傷の姿でいた。


タウトは最初驚いた表情を浮かべたが、それも束の間。沸き上がる怒りを込めて再び剣を叩きつけた。王の間に剣を叩きつける音が絶え間なく響き、タウトの叫び声が混じって間を越え、王宮に広がった。何度叩きつけても剣は折れなかった。王国内で最も熱いという王の溶鉱炉に入れても、すでに形を成した剣はどんな手段でも形を変えられなかった。


数百日間にわたり、あらゆる手段でその剣をこの世から消し去ろうとした。溶鉱炉に数日入れておいたり、数百頭の牛を使って剣を折ろうとしたり、月の形が何度も変わるまで(つち)で叩きつけたりした。


この剣は存在してはならない。俺の剣より優れた剣などあってはならない。


狂気と執着が深まっていくある日、王は臣下たちを呼び、海に出た。数十隻の船が王とともに海へ向かった。風の神々に祈りを捧げ、祝福を受け、王の船団は遠く遠い大洋へ向かった。


水平線に何もなく、周囲に島さえ見えない遠い大洋の真ん中に到着してようやく、王はすべての船に止まれと命じた後、そこから自分を苦しめていた悪夢のようなその剣を深海の底へ沈めた。


消え去るべき、この世に存在してはならないその剣を、もう見なくて済む。俺の愛剣だけがこの世で最も美しく強く、柔らかく、鋭く、鋭利だ。


俺の剣だけが。ただ俺の剣……何とも替えられない俺の剣。俺のすべて……。俺のすべて……今は一つ。タウトは安堵し、安心し、懐かしみながら……。


狂っていった。


番外編: 深い海底の剣 -終わり-






*****


グラベルとグリック、二人の距離が次第に狭まっていく。グリックの部下たちと兵士たちもそれぞれの戦いを止め、二人の周りに分かれて円状に集まり、二人だけの小さな円形の舞台を作った。


何人かのグリックの部下たちが「戦場で決闘なんかねえよ」とグラベルに向かって矢を放ったが、ある瞬間現れたイリスの剣によって両腕が斬り落とされ、手に持っていた弓と矢を自分の血でできた血溜(ちだま)まりに落として床に倒れた。


「今の位置から何もするな。」


イリスの言葉に、手にした武器を持って前へ飛び出そうとしたグリックの部下たちは、最前列の者の首が床に落ちた後にようやくイリスの言葉に従い、静かにその場でグラベルとグリックの対決を眺めた。


「騎士のお嬢さんが舞台を整えてくれるなんて? くふふふ。」


グリックが目を細めて苦笑いを浮かべ、剣を再び鞘に収めて元の位置に戻るイリスの後ろ姿を見ながら言った。


「ふぅ~、今日はあれこれ頑張る日だな。まあ、貰ったもんがあるから頑張らねえと?」


長い息を吐きながら、グリックが再び姿勢を正した。目の前のローブを着て剣を持った冒険者……。そして目で追うのも難しいほどの動きを見せる騎士のお嬢さん、そして部下たちの士気、依頼の内容、複雑な思いが頭に浮かんだが、まずは目の前の目標に集中することにした。


「いくぜ!」


姿勢を低くしたグリックが一瞬でグラベルとの距離を詰め、グラベルの首に向かって剣を上へ振り上げて斬りつけた瞬間、短い金属の衝突音とともにグリックの手に握られていた剣が砕け散って折れた。


「やっぱり、さっきのはその剣の能力か? それとも魔法?」


「さあね。」


「ほう? 秘密主義か? でもこっちも剣はたくさんあるぜ。」


グリックが腰を屈めて太ももに付けられた三つの小さな鞘から短剣を三本抜き、右手には二本、左手には一本を握った。


「これも防げるか見てみようか?」


左手に握った短剣にグリックが気を集中させて投げつけると、普通の金属同士の衝突音とは違う、重く響く音とともにグリックが投げた短剣がグラベルの剣によって弾かれ、地面に深くへこんだ跡を残して突き刺さった。


「お? こんな辺境にいる冒険者のレベルじゃねえな? 普通の騎士の鎧だって貫く攻撃だったぜ?」


「そうかな?」


グラベルが続いて飛んでくる二本の短剣を防ぎながら、グリックに答えた。


「おい! 誰か剣を投げてくれ! できれば長いやつで!」


グラベルとの距離を広げて後退したグリックが、後ろに立っていた部下たちに向かって叫んだ。


「親分~! ここですよ、投げますよ。」


二振りの両手剣が飛んできて地面に突き刺さって立った。グリックが近づいて地面に刺さった二振りの剣を抜き、肩に担いだ。


「うっしゃ! ちょっと重いけど、やってみようか。ちょうどいい重さだぜ。」


グリックが肩に担いだ二振りの剣を振り回しながら言った。


「ふむ……。(今からでも嫉妬(しっと)のタウトの能力を解除するか?)」


グラベルが剣を握ったまま悩んだ。ソード・オブ・イースト・エンドの能力の発現は完璧だった。ディアラを救いに行く前からグリックの部下たちが嫉妬のタウトの能力を十分に試せるように助けてくれたし、グリックとの対決ではイリスから学んだ剣術を練習するのにむしろ邪魔になっていたからだ。


『あのグリックって人も相当な実力者みたいだな……』


異世界から来た後でできたグラベルの癖。相手のマナの流れと身体内部のマナの応用。そして継続的にそのマナを使って戦闘時の効率を観察し、相手の強さを測る癖が生まれた。そして今、目の前のグリックという男は他の兵士や盗賊たちよりはるかに高いレベルであることを確認した。


「考え事が多いんじゃねえか?」


グリックがグラベルに向かって高く跳び上がった。


そして両手剣をそれぞれの手に握り、地面に向かって叩きつけた。


グラベルが剣を頭上に掲げて叩きつけるグリックの攻撃を防いだが、攻撃を防いだ剣の外見はさっきグラベルが持っていた剣とは違う姿の剣だった。


『剣が折れなかった。何だ? 別の剣か? そんな時間はなかったはずだが? 剣の外見が変わる魔法か?』


刹那(せつな)の瞬間、目の前の変化にグリックの思考が加速し始めた。


「くははは! 剣にかけた魔法でも解除されたか?」


グラベルが向き合っていた剣とともにグリックを押し返すと、グリックが後ろに下がりながら言った。


『それでもこのグリックって人。今まで見た人の中では一番強い。戦いに慣れてる。』


グリックを押し返した後、再び姿勢を正しながらグラベルが思った。自分を相手にしながら見せるグリックの余裕、虚勢かもしれないが、ソード・オブ・イースト・エンドの能力で自分の剣が砕けてもすぐに対応する戦闘での柔軟さ、息の乱れなく続く攻撃。グラベルは少しグリックとの戦いを続けなければならないと思った。ゲームでの数値である経験値とは違う意味の経験値が得られそうだった。


「普通の冒険者じゃねえみたいだな。何やってる奴だ?」


グリックが再び一振りの両手剣を肩に担ぎ上げながらグラベルに言った。そして再び構えを取り、続く攻撃のために力を集めた。


「さあね。ただあちこち旅してる人って言ったらどうかな?」


「いや! 全然説得力ねえよ!」


弓弦を離れた矢のようにグリックの攻撃がグラベルに向かった。両手剣二振りをそれぞれの手に握っているとは思えない速度の攻撃。最初の攻撃が防がれたことなど関係なく、猛烈な連続攻撃が続いた。叩きつけ、振り回す両手剣がグラベルの剣に防がれ、連続する金属の轟音が響いた。


「ふははは! まだ余裕たっぷりか? 旅人よ!?」


息を吐きながら笑いとともにグリックが言った。


「ふん!」


自分の攻撃をさして苦労せずに防ぐグラベルの姿に、グリックがさらに気を集めて二振りの剣を水平に斬る強力な一撃を加えたが、それでもグラベルは軽くグリックの攻撃を防いだ。それでもグリックを注意深く見つめ、剣を向き合わせる表情と態度にはどんな(おご)りも、自分がはるかに優位だという傲慢も見えないという点が、グリックをさらに苛立たせた。


「くそ! くそ! くそぉ!」


怒りが混じったグリックの攻撃が続く。しかし剣を振るうほどに、グリックは次第に明確に分かってきた。今自分の剣を防いでいるこの男の実力は、今まで相手にしたどんな人より強いということを。


『ずっとこう防ぐだけじゃダメだな。そろそろこっちからも行ってみようか。』


グラベルが剣にマナを集中させながら、イリスから学んだ内容を思い浮かべた。


『最初は集中させたマナを剣を包むような感じで広げて……散らさないように抑える。威力の増加のためにこれを何度も重ねたり、一度に包むマナの量を大きくしたりするんだっけ。』


「まずは一回で。」


グラベルの手に握られた剣の周囲の空間が陽炎(かげろう)のように揺らめく。


『そして抑えた剣周りのマナを剥がすように剣を素早く振って!』


グラベルが剣を振ると、剣から揺らめいていた気が剣から剥がれるように素早く射出され、グリックに向かって飛んだ。


「おっと! これはまた何だ!」


()のボルトより速く自分に向かって飛んできた射出物(しゃしゅつぶつ)を、両手に握った二振りの剣を交差させて防ごうとしたが、そんな努力は無駄だった。


二振りの剣は折れるどころか数十の欠片に砕け散り、砕けた剣の後ろにいたグリックの鎧は鋭い牙に噛み砕かれたように裂け、引きちぎられた。それでも剣が砕け散る際に射出物の軌道が逸れたおかげで、二振りの剣、ずたずたになった鎧、肩を伝う血だけで被害を抑えることができた。


「うわ……思った以上だな……」


グラベルの一撃を受けたグリックは、もはや自分に勝利の可能性がないことを悟った。剣に集中したマナを何の苦労もなく実体化させて飛ばすほどの腕前。自分も短剣や剣にマナを集中させて攻撃できるが、剣に込めた気だけを別に飛ばすほどになるには相当な実力と経験が必要だと知っていた。


「ふふふ。これ以上は計算が合わねえよな。」


グリックが首にかけていた小さな角笛を取り出して吹いた。小さな小石サイズの笛を口に当てて吹くと、耳を刺す音が周囲に響いた。今でなければ逃げる機会はないとグリックが判断した。


-ピィィ~イ~ク-


「お? 親分のウサギ笛の音だ!」


「ウサギ笛か……」


「親分の笛の音だ。」


グラベルとグリックの周囲にいない他の部下たちにも聞こえるほど鋭い笛の音は、周囲に広がっていった。

「深い海底の剣」は、嫉妬と執着が人をどこまで狂わせるのかを描いた物語でした。

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