21話-馬車襲撃 (2)
勇気を奮い立たせる叫び声、痛みを隠そうとする低い呻き声、鉄がぶつかり合う轟音、再び力を振り絞ろうとする深い息遣いが、あちこちから聞こえてくる。馬車の周囲に次第に集まってくる兵士たちは、体中に傷を負っていた。倒れた仲間を後ろに残し、急いで魔法の障壁の後ろに身を隠していた。
「ディアラ様! 大丈夫ですか?」
馬車の上にいる女魔法使いに、兵士が声をかけた。
「ええ。まだ少しは持ちこたえられます。」
ディアラの杖から、青い光がより明るく輝いた。
「みんな! ディアラ様もこれ以上は持たないぞ。傷が重くない兵士以外は、陣形を整えよう!」
兵士の一人が槍を高く掲げ、周囲の仲間たちを呼び集めた。
「ダルト! ケイン! 俺が突入したら、後ろからついてきて援護してくれ!」
「リブの言う通りだ! みんな集まれ。早く! 早く!」
散らばって馬車の周りで盗賊たちと対峙していた兵士たちが、集まり始めた。肩と肩を寄せ合い、槍を前に向け、両手で握って構えを取った。
「ディアラ様がいつまでも魔法の障壁で俺たちを守ってくれるわけじゃない。ここから打って出るぞ!」
「突入に合わせてプロテクティブ・ウォールを解除して、私も一緒に攻撃します。」
ディアラの左手から炎の球体が生まれ、次第に大きくなっていった。燃え盛るように丸く凝縮していた炎の塊が、形を保ったまま安定していく頃、馬車の周りに陣形を整えて集まっていた兵士たちが、馬車を包囲して対峙していた敵たちに向かって駆け出した。
「うわあああ! この盗賊どもめ!」
「遅れるな! 早く前へ!」
兵士たちの雄叫びとともに、ディアラの炎球が爆発し、周囲に火花を散らし、爆発とともに残った残火が地面の草に移って黒い煙を上げていた。
ディアラも炎球を敵の真ん中へ飛ばした後、馬車の屋根から降りて戦場に加わった。
「私が前に立ちます。」
兵士たちの間を通り抜け、最前列にディアラが駆け出た。
ディアラのローブとつばの広い魔法使いの帽子が、走る速さに翻った。そして最初に出くわした盗賊に向かって杖を振り回した。
「は! もう魔力が尽きたのか?」
鼻で笑った盗賊は、向かってきたディアラの杖を受け止めようと、剣を抜きざまぶつけた。
「うおおおっ!」
ディアラの杖が触れる前に盗賊の剣が折れ飛ぶと同時に、華奢な女魔法使いが振り回した杖に当たったとは思えない勢いで、盗賊が地面に転がって倒れた。
「兵士の皆さん、無理はなさらないで!」
駆け寄ってきた二人の盗賊に再び杖を振り回して飛ばした後、兵士たちにディアラが言った。手に持った杖の周囲は、淡い青い気配に包まれていた。
(もっと強く魔力を集中しなくては。)「エンハンス・ウェポン! メイス!(Enhance Weapon: Mace)」
両手で杖を握り、ディアラが魔力を集中すると、杖を覆っていた光がより鮮明に線を成してその形を現した。小さな魔法陣の文様が杖の先に丸い球体の形を見せ、そして伸びた光の筋が華やかな模様が刻まれた光の線でできた巨大な鈍器の姿を見せていた。
『馬車を包む防御壁の呪文に魔力を消費しすぎた。』
炎球のような小規模範囲魔法では、周囲を包囲している盗賊たちを倒すのは無理だと考えた。だからディアラが選んだのは、最もマナの消費が少ない魔法の使用だった。魔法の中でも最もマナの消費が少ない武器具現魔法。その中でも無から形を成して召喚魔法に近い物体の魔法武器の具現魔法ではなく、既存の武器を強化するエンハンス・ウェポンを用いた。
「ディアラ様! 矢が飛んで来ます!」
ディアラを追ってきたリブという名の兵士が、槍先で遠くから弓を射る盗賊たちを指した。
「教えてくれて、ありがとう。」
顔に少し疲れた気配が見えたが、流れる汗を袖で拭った後、ディアラが微笑んでリブに言った。その後、飛んでくる矢たちに向かって手を伸ばし、作り出した魔法の盾で矢たちを弾き飛ばした。
「あの魔法使いを攻撃しろ!」
ディアラを囲んだ盗賊の一人が叫んだ。そしてその叫びとともに、ディアラの巨大な魔法の鈍器に当たって声も出せずに地面に叩きつけられた。
続いてディアラは動きを止めず攻撃を続けた。青く光る魔法の鉄槌とともに、敵を一人一人攻撃する。周囲の盗賊たちは、素早い動きで巨大なサイズの魔法鉄槌を振り回して攻撃するディアラに動きが一瞬戸惑ったようだったが、まだ周囲に多くの仲間がいるため、逃げる者はなかった。いつものように、数が多いと個人の恐怖を消すものだ。
「そこの前! どけ! どけ!」
ディアラと兵士たちを囲む盗賊たちの間から、一人が大きく叫ぶ声が聞こえた。ビクッと避けた盗賊たちの間を、馬に乗った盗賊たちがディアラめがけて駆け寄ってきた。
ディアラも地面を震わせて駆け寄ってくる馬の蹄の音に体を振り向き、近づいてくる馬に乗った盗賊に向かって杖を構えて対峙する姿勢を取った。
杖の先端を両手で最大限長く持ち、後ろに引いて振り回す準備をした。そして深く息を吸い、再び吐き出しながら目を大きく見開いて、自分に向かって疾走してくる盗賊を睨んだ。
「魔法使いの分際で、鎧も着けず布切れなんか着て戦場で暴れ回るなんて!」
一番先頭の盗賊が、剣を握った手の反対側の肩に横に武器を掲げた後、ディアラに向かって振り下ろした。
すぐに自分の剣に当たって倒れる紺色のローブの魔法使いを想像し、その想像の喜びを表すように、盗賊の口元に笑みが浮かんでいた。
「ぐわああっ!」
苦痛に満ちた悲鳴とともに、馬上の盗賊が鞍から落ちて跳ね上がるように空中に飛ばされた。
ディアラは一番先頭の馬上の盗賊に杖を振り回して命中させて飛ばした後も、その攻撃を止めなかった。馬上の盗賊を打った杖の先は、その場で止まっていた。そして続いて馬に乗って駆け寄ってきた盗賊たちに次の攻撃が続いた。
「ウェポン・バースト!(Weapon Burst)」
ディアラの叫びとともに、杖先の丸い鉄槌の形が一瞬膨張して爆発した。周囲を押し出す強力な爆発に、駆けていた馬たちとその上の盗賊たちは、空気を引き裂く轟音とともに馬上から弾き飛ばされて倒れた。
ディアラも爆発の力で後ろに押し戻された。
「うあぁ…」
「ふぅぅ…」
「くぅっ、くそっ!」
ディアラが起こした爆発で戦況が変わったように、盗賊たちが動揺し始めた。お互いに目配せをし、前へ出る者なく躊躇する動きでディアラと兵士たちを見てためらっていた。
「今だ! 盗賊どもを殺せ!」
一人の兵士が槍を前に立て、仲間たちに向かって叫んだ。
「そうだ! 数が多いだけの盗賊どもだ!」
何人かの兵士が声を上げて飛び出した。士気の上がった兵士たちの突進が、彼らを包囲していた盗賊たちの陣形を崩した。一人、二人、兵士たちの槍に刺されて盗賊たちが苦痛の悲鳴を上げて倒れていく。一兵士の言う通り、数に頼って攻撃してきた盗賊たちが一人ずつ倒れていくたびに、兵士たちの士気が上がった。再び盗賊たちと兵士たちの激しい戦闘が始まった。
「リブ! 気をつけろ!」
リブの後ろから斧を振り上げて駆け寄ってきた盗賊の首を、ダルトの槍が貫いた。
「ぐぐぐっ!」
首に槍先が刺さったまま血混じりの呻きを上げて倒れる盗賊の音に、リブが振り返った。
「ふぅ~。ありがとう、ダルト。後ろから来るなんて全然気づかなかった。」
リブがダルトに感謝の言葉を伝えた後、再び体を振り向いて別の盗賊を警戒した。
「はは! 馬鹿め、俺が言っただろ? 敵はいつも後ろから来るって…うぐっ!」
ダルトの胸を後ろから貫いた剣が見えた。そしてその剣の主人が後ろにいた。
「違うな。敵はいつも後ろから現れるんだよ。残念ながら、自分の後ろを見てくれる友達はいなかったみたいだな。」
言葉を終えると同時に続くグリックの一撃で、ダルトの首が地面に落ちた。
「ダルトぉぉ!!」
ついさっきまで生きていた仲間であり友達を失ったリブが、絶叫してその名を叫んだ。
「これは。反応が激しいところを見ると、友達だったか? それとも古い戦友? ふははは。申し訳ないとは言えないな。まあ、兵士として雇われた以上、いつかはこんな日が来るって、あいつだって覚悟はしてただろうよ。」
グリックが剣に付いた血を地面に払い落としながら、リブに言った。
「うわあああ!」
リブが叫びながらグリックに駆け寄る。歯ぎしりの音がグリックにまで聞こえるほどだった。抑えきれない怒りと、友達を守れなかった後悔が同時に頭の中をかき乱した。目の前の男を殺さなければならない。ダルトの復讐をしなければならない。頭の中の絡まった糸くずのような考えが断ち切られ、鋭い一つの考えだけがリブの体を動かした。復讐、復讐。ダルトの復讐。ただ一つの考えだけが頭に残った。
「おお。相当怒ってるみたいだな。あ、そうだ、紹介してなかったな。俺がこの連中の…」
「うわああっ!!」
-カァァン-
リブが駆け寄ってグリックに槍を振り下ろした。強く振り下ろした槍にグリックが体をかわすが、地面を打って跳ね返った槍が再びグリックに向かって飛んできた。
「へ! こんな目くらましの槍に当たるわけないだろ。」
グリックが歯を剥き出しにした明るい笑みを浮かべていた。しかし、ほとんどの攻撃をかわしながら浮かべていた笑みは、自分に向かって猛烈な勢いで振り回すリブの攻撃を剣で受け止めた瞬間、その笑みが崩れて眉間に皺を寄せた。
「適当に遊んでやるのもここまでだ!」
グリックがリブの槍を受け止めた後、ガキッという音とともに槍の柄を折った。そしてリブが反応する間もなくグリックが距離を詰め、リブを剣で斬った。
「ぐっ!」
リブの胸元にグリックの剣によって肩から斜めに腰に向かって血が噴き出し、長く斬られた傷ができた。
騎士たちの鎧のように、普通の刃物や矢を弾く立派な鎧ではなかったが、鎖帷子を着てその上に革の鎧を混用して着ていたため、普通の熟練した冒険者や裕福な商人を護衛する護衛兵に比べて遜色ない装備だったが、グリックの剣を防ぐことはできなかった。
「少し浅かったか? それとも我がバナス家の兵士様たちの鎧が丈夫だからかな?」
後ろに倒れたリブを見下ろした後、手首を使って剣をぐるぐる回しながら、グリックが再びリブに近づいた。
「まあ、もう一度斬られてみたんだから、二三回は耐えられるだろ? 兵士様?」
「くっ! 盗賊め!」
胸の傷を押さえながら、リブがグリックに叫んだ。
「ん···。盗賊めじゃないな。自分で目で見てみろよ。」
グリックが手を広げて自分の周囲を指した。
「盗賊、馬賊、強盗、何でもいいけどさ。あんな連中にしては少し多すぎると思わないか? まあ実際、何人かはそっち出身だけど。一応これだけの数なんだから、盗賊って呼ぶのはちょっと悔しいよな。」
グリックが再び体を振り向いてリブに向かった。
「よし~! それじゃあ話が長くなりすぎても面白くないから、この辺で兵士様は友達が待ってる所へ行ってもらおうか。」
グリックが剣をリブの首に構えた後、力一杯振り下ろそうとした瞬間だった。
「ぐわああっ!」
突然、遠くから飛んできた光を放つ鋭い魔法の矢が、グリックの肩に刺さった。
「魔法使いなのに、なんでそんなに殴るんですか?」
「魔法の武器だから大丈夫です。」
(合法的な暴力)




