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20話-馬車襲撃 (1)

グラベルとイリスが少しの間も休まずに道を駆け下りると、御者(ぎょしゃ)が教えてくれた馬車の襲撃現場に到着することができた。


小さな下り坂を下った先で、数十人の人々が絡み合い、互いに武器を向け合って戦闘を繰り広げていた。御者の言った通り、統一された鎧と兜を着用した正規兵らしい一団と、革鎧と鎖鎧(くさりかたびら)を無秩序に混ぜて装備した集団が戦闘中だったため、どちらが盗賊団かは大いに悩む必要はなかった。


しかし、正規兵らしい兵士たちは数的には劣勢だった。周囲の数十人の敵に囲まれ、敵と武器を突き合わせ、後ろの馬車に向かって少しずつ押し戻されていた。


御者が雇われて運転していた馬車も見えた。馬車の上で、御者が言っていた女魔法使いの姿も見えた。大きなつばと尖った先端の円錐(えんすい)帽子に黒いローブ、そして帽子から流れ落ちるような長いオレンジ色の髪の女魔法使いは、目の前の戦場で馬車の周りに魔法の障壁を張り、飛んでくる火矢や松明などを弾き飛ばしており、戦場で唯一魔法を使っているため、遠い距離でも簡単に認識できた。


御者が言っていたもう一人の華やかな鎧の騎士も、数十人が絡み合って戦う戦場でも簡単に探すことができた。馬車が停まっている道の脇には小さな丘があり、そこに立っている敵に向かって、華やかな羽飾りの兜と精緻な模様が刻まれた銀色の鎧を着た騎士が駆け上がっていた。


華やかな鎧の騎士が向かっていた丘の上の人物は、駆け寄る騎士の鎧ほどではないが、他の盗賊たちの装備よりは良い鎧を着ていた。華やかな外見ではないが、灰褐色の兜の外に飛び出た髪と、きれいに整えられた(ひげ)。そして、丘の下の騎士を見下ろしながら爽快に笑う大きな口が、戦場での余裕を示していた。上体を覆う金属のハーフプレートと、本来は顔を覆う兜だったが、バイザーと顔の頰を覆う部分の鉄板の半分を外した独特の兜をかぶっていた。


そんな姿だったため、グラベルは丘の上に立っている人物が今、この馬車を襲撃している盗賊たちの頭領(とうりょう)だと考えた。


「おい! そこのお前!」


戦場の状況を眺めていたグラベルに、一人の男が近づいてきて剣先を向けながら言った。剣の先をグラベルに向けたまま、少しずつ足を動かしてグラベルを警戒し、距離を詰めてきていた。相手との戦闘で勝利したらしい剣にはべっとりとした血が付着しており、着ている鎧にもあちこちに染み込んだばかりの血痕があった。グラベルとイリスの姿を確認した男が、顎で顔を流れる汗を肩をすくめて拭き、周囲の仲間たちを呼び集めた。


「こっちだ!こいつら二人だぞ!」


男の叫び声を聞いた五人の仲間が、女魔法使いのいる馬車に向かっていた足を返し、グラベルとイリスの方向へやってきた。


「二人とも、今日は運が悪いな。普段なら通りすがりの奴くらいは見逃してやるんだがよ?」


「そうだな。」


それほど脅威にならない盗賊の言葉に、目を合わせることもなく馬車の方を眺めながらグラベルが答えた。


「今日は目撃者は残さないって、頭目が言ってるんだよ。」


言葉の終わりと同時に、グラベルとイリスに向かって周囲の盗賊たちが攻撃を仕掛けてきた。


「うん……どうしても馬車の方へ行きたいんだがな。」


駆け寄ってくる盗賊たちを全く脅威に感じていないようなグラベルの態度。瞬間、グラベルはプロイクトンで過ごした経験を通じて出会った敵たちのほとんどが、自分とイリスに比べてあまりにも弱かったため、傲慢さが身についてしまったのだと思ったが、続いたイリスの行動で自分の考えが幸いにも勘違いだったことを知ることができた。


「ぐわああっ!」


イリスが剣を(さや)から抜きながら、最も先にグラベルに向かって駆け寄ってきた剣を持った盗賊と、その後ろを追って両手で槍を握ったまま従っていた二人の男を斬り払った。イリスが抜いた剣の長さでは届かない距離の二人だったが、盗賊の一人が持っていた槍の間合いに入る前に、二人の腕と胸が下半身から分離され、地面に力なくどさりと音を立てて動きを止めた。


二人の盗賊を斬ったイリスの剣の周りに揺らめく銀白色の気配が見えた。剣を包むように覆った銀色の気配が揺らめきを止め、剣の刃に固く形を成して凝縮(ぎょうしゅく)した。


目の前で斬り飛ばされた仲間たちを見た衝撃からか、駆け寄ってきた残りの三人の足がその場で止まり、どうしたらいいかわからずその場で武器を構えてイリスに向けているだけだった。


「ひいいいっ!!」


「ちょ、今、何をどうしたんだ……」


このようにグラベルにはイリスに対する絶対的な信頼があったため、多少の脅威には緊張感が生まれなかったのだ。だから、自分の行動は敵を侮る傲慢(ごうまん)から来るものではないとグラベルは確信した。


「盗賊さんたち、今のこの距離より近づいたら、ああなるよ……」


地面に倒れた二人のバラバラの死体を手先で指し示しながら、グラベルが遠くにある馬車の方向へ歩き始めた。


そんなグラベルの歩みに合わせて、銀白色の剣を手に持ったままイリスがグラベルの横で歩いている。


『イリスのあの光る剣……ソードスキルが一定値に達さないと使えないはずだったよな。いつか俺もイリスのレベルに追いつけるかな?』


横で歩くイリスの剣を眺め、揺らめく銀白色の剣に魅了されたように一瞬歩みを止めてぼんやりと見つめた後、グラベルが再び馬車に向かって歩いた。


その間、グラベルが進む道を塞ぎながら、イリスに斬られないよう遠く離れてその距離を保つために後ずさりしながら、三人の盗賊が一瞬でも逃げようとせず、体内の僅かな勇気を絞り出して耐えていたが、三人のうち一人が武器を投げ捨てて逃げ出すと、残りの二人もすぐに先の者を追って武器を地面に放り投げて逃げ出した。


「とりあえず、あそこの馬車の上の魔法使いのところへ行ってみるか。」


もう警戒すべき相手がいなくなると、イリスが剣を収めて鞘に納めた。


「じゃあ、イリス。馬車まで俺が行く間、今みたいに近づいてくる盗賊は全部斬っちゃっていいよ。」


「はい! グラベル様。」


「けど、さっきのあれ、俺にも教えてくれよ。」


「え?」


「あの白い光の……。いや、次の授業の時にまた言うよ。」




*****


「そこの、この軍を率いる頭領らしい者よ! このベルデ男爵家のダービンが決闘を申し込む!」


甲冑の金属が擦れ合うガチャガチャという音を立てながら丘を登る騎士が、叫び続けながら駆けていた。


丘の上からその姿を眺めていた盗賊たちの頭領らしい男が、自分の髭を親指と人差し指で整えながら、ベルデ男爵を丘の上から見下ろしていた。


丘の上に一人で登ってくるベルデ男爵の勇気が立派だったのか、横に立っていた弓を持った部下たちが弓を構えようとすると、そんな部下たちを制止しながら、丘の上の男も騎士道を示すように見えたが。


「んんー。これくらいでどうかな?」


足を乗せていた石塊を拾い上げ、丘の下に向かって転がした。


「落石だよ~! ふははは!」


丘の上から聞こえてくる声に、兜のバイザーを上げて自分に向かって転がってくる石を確認したベルデ男爵が、素早く横に身を投げて転がる石を避けた。


「ああ…くそ、わざわざ叫んで知らせることなかったか…?」


口元に悪戯っぽい笑みを浮かべながら、丘の上の男が地面を足で蹴って惜しがった。


「はあ……はあ……はあ……卿に、このベルデ家の……ダービンが……」


「ほらほら。息を整えて。ゆっくり……。いや、ベルデ男爵様が息を整える間、俺が話しておくよ。えへん。盗賊団に偽装した傭兵(ようへい)団の頭領、グリック・デ・ロスだ。ベルデ男爵にご挨拶申し上げます。」


片膝を突き、グリックがわざとらしく大げさな姿勢でベルデ男爵に挨拶した。


「えへん! では、このダービン・ベルデがロス家のグリック卿に正式に決闘を申し込みます。」


兜のバイザーを上げ、ベルデ男爵が剣を抜いて自分の胸に剣を握った手を当て、騎士の挨拶法でグリックに返した。


「わはは! それが騎士の挨拶か? 残念ながら、うちのロス家は潰れてから長すぎるんだよ。だから、礼儀作法なんて学んでないさ。」


「では! 始めます。」


ベルデ男爵が剣を握った腕をまっすぐに伸ばしたまま、グリックに向かって突進する。厚い鉄の甲冑を信じて頼ったまま駆け寄る姿は、典型的な戦場で見られる騎士の姿だった。駆け寄っていたベルデ男爵の剣が相手に届く距離に入ると、腕を高く上げてグリックに剣を振り下ろした。


「うわあっ!」


「お~ほ? 騎士学校じゃこんなふうに教えるのか?」


グリックがベルデ男爵の攻撃を、地面に突き刺して立てかけていた長剣を抜き、鋭い金属の響きを残しながら受け止めた。


「くっ! これは!」


自分の剣を落としそうになるほど強いグリックの剣に、兜の中のベルデ男爵の表情が歪んだ。


「それでも西北の騎士たちは首都の馬鹿どもよりマシだと思ってたけどな。」


ベルデ男爵の剣を受け止めた後、グリックが素早く剣を握っていないもう片方の手で腰の短剣を抜き、ベルデ男爵の肩甲(けんこう)の隙間に短剣を突き刺した。


「ぐあっ!」


ベルデ男爵がすぐに再び剣を振り回すと、グリックが後ろに下がった。


「それでもまあ、他の貴族の豚どもよりはマシか?」


「ふう……。見事な攻撃でした。鎧の……隙を狙った……」


傷ついた肩を一度見つめた後、ベルデ男爵が再び姿勢を正した。


「ただの一撃の攻撃に過ぎません。この程度で倒れませんよ。グリック卿。」


再びベルデ男爵がグリックに向かって駆け出した瞬間だった。


「ううむ! これは……」


ベルデ男爵がめまいを感じるようによろめく。かろうじて立っている程度の動きだった。


「おお? 結構長く耐えたじゃないか? 普通ならかすり傷でも手足が麻痺(まひ)するはずなのに。」


グリックが毒を塗った自分の短剣を見ながら、よろめくベルデ男爵に言った。


「やはり毒か! グリック! 卑怯(ひきょう)にも決闘で毒を使うとは!」


「お? まだ喋れるのか? 騎士は騎士だな。この毒はかなり強い麻痺毒だぜ。」


「くうっ! 体が……」


ベルデ男爵の剣が手から落ちた後、すぐに耐えきれず地面に膝を突き、毒によって徐々に動きが鈍くなる体を動かそうと苦しんでいた。


「無理だろ? 言っただろ、強い麻痺毒だって。そして、俺が食う獲物を狩る時以外、毒を使うことに何の問題もないと思ってるよ?」


「…………」


地面に両手を突き、頭を垂れたベルデ男爵が、目を吊り上げてグリックの言葉を聞いていた。


「はは! それでも一応貴族だから配慮したんだぜ。ここ、もう一本の短剣には麻痺毒じゃなくて、南の砂漠の……何の蛇だったかな? まあ名前はどうでもいいけど。とにかく、十歩も歩けずにそのまま死ぬ毒だから。今の麻痺毒にかかったのをむしろ感謝しろよ。」


グリックが腰のいくつかの短い鞘を見せながら、膝を突いた男爵に近づいた。


「グリック……。忘れないぞ。こんな卑怯な……ことを。」


もう耐えきれず、ベルデ男爵が地面に倒れた。


「まあ、男爵とはいえ人質としての価値はあるかな? 少なくとも数日分の酒代くらいは出るだろ。」


グリックが手振りで遠くで待機していた部下たちを呼んだ。


「さあて。男爵のおかげでこっちの仕事は簡単に片付いたし。問題はあの下の魔女か?」


グリックが再び丘の端まで歩いて行き、下の馬車を見下ろしながら言った。


馬車の周りでは武装した兵士たちと女魔法使いが馬車の周りに魔法の障壁を張って、グリックの部下たちと対峙していた。何人かの負傷した兵士たちが馬車に背をもたれて座って休んでおり、女魔法使いの指示に従って他の兵士たちが仲間たちを馬車の方へ呼び入れていた。


「こりゃあ。結構苦戦してるな。どうしても俺が直接行かなきゃいけないか。」


グリックが細めた目でため息をつきながら、丘の下を見ていた。

決闘の基本:武器は剣、礼儀作法、そして少々の毒。

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