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17話-ドレイク捕り (10)

瞬間の静寂(せいじゃく)を破り、最初に動いたのはホーンドレイクだった。乗っている木々や草、黒い煙が立ちのぼる場所で、周囲の対象を選ばず攻撃する。


爪を立てた前足を振り回して引っ掻こうとする攻撃にツラロックが盾ごと押し出され、尻尾を振り回してドレイクの後ろから飛び上がって両手剣を振り下ろしていたエトを吹き飛ばす。続いて全身を回転させて体をぐるりと回し、尻尾を振り回して周囲に残っていた狩人(かりゅうど)や冒険者たちを攻撃する。


レインホルドとラト、ウクの三人が鈍重なドレイクの尻尾に当たって押し出され、地面に倒れる。


「くっ!ウェレン!そっちに行くぞ!」


自分に向かってくるもう一つの小さな狩人の群れを見たホーンドレイクが素早く動いて、ウェレンが来ていた方向に向かって突進していった。


「魔石ランスを構えろ。確実に刺し込んだ後に装置を起動する!」


ウェレンが自分の魔石ランスを両手で握り締め、走ってくるドレイクに向かってその先端を狙う。


「スミル!ボーム!前へ!レサとクラウは横に回って行け!」

ウェレンの指揮に銛班(もりはん)の人々が動き始めた。そして人々が散らばる前にグラベルが魔法陣を広げて強化魔法を詠唱しようとした瞬間、これまで黙ってグラベルの横に立っていたイリスがグラベルの前に立った。


「出ます。グラベル様。」


イリスはグラベルに向かってくるホーンドレイクを脅威だと判断した。グラベルが以前に言った力を示すなという言葉は、グラベルに脅威となる存在がいない時の話だ。イリスはグラベルほど慎重な性格ではない。戦闘において相手との力の差を測り、落ち着いて相手を把握し、相手が示す行動を予測したり、自分がどのような行動を取る時に生じる余波についても考えて行動するグラベルとは違う。


主君(しゅくん)であるグラベルに脅威になると判断すれば、まず自分から出て攻撃する。相手との力の差を測る必要はない。相手が自分より強ければ命を失うのは自分だ。グラベルを守って死ぬならそれでいい。だから深く考えず、脅威となる存在はすべて排除するのが自分の使命だと考えていた。


爆発的なマナの流れがイリスに向かって集まり始める。小さな渦のように始まったマナの流れはすぐに巨大な螺旋(らせん)を成し、イリスの足元から頭の先まで巻きついた。マナの渦が周囲の空気たちを吸い込む。草葉が空に持ち上げられて舞い上がり、足元の小石が自然に浮かび上がった。風は鋭く鳴りながらイリスに向かって集まる激しいマナの流れだった。


近づいてくるホーンドレイクなど半分に裂いてしまうような勢いだった。収拾しなければならない数多くのことがグラベルの頭の中に浮かぶ。説明しなければならないことが生じる。望まないことに巻き込まれる。そんな数十の考えが頭の中を渦巻いたが、それらを断ち切ったグラベルの結論が行動として移される。


(ごめん、イリス!後で説明する!)「ロカス(Locas)!イテラン(Iterum)!」


グラベルが指先で指したイリスの足元に青い光の魔法陣が一瞬光を放って輝いた後、イリスと共にグラベルの前からその姿が消えた。


―クァクァクァチャン―


遠くから聞こえる爆発音と岩が崩れる音が聞こえた。


イリスがグラベルが詠唱した強制転移の呪文でドレイクを攻撃しようとした瞬間、峡谷(きょうこく)の入口に強制転移されたことに気づかず峡谷の壁に向かって放ったのがイリスが出した音だろうとグラベルは考えた。


『ふう…凄まじいマナ量だったのに……イリス、まだ力を示す時じゃないって言ったじゃない…』


最悪の状況は防いだのでグラベルは安堵の溜息を長く吐いた。


その間にウェレンの銛班がドレイクの周りを回って広く広がって位置を取った。


「レサ!クラウ!こっちから先に行くぞ!隙を見て俺の合図がなくても攻撃しろ。」


ウェレンの指示にボームとスミルが魔石ランスを前に長く突き出した状態で姿勢を低くし、ホーンドレイクに向かって少しずつ近づいた。


「よし。あいつが俺たちを攻撃する瞬間がチャンスだ。前足、尻尾、噛みつき、何でもいい。あいつが俺たちを攻撃する瞬間、無条件で俺たちは攻撃する!わかったな?」


「はい。」


「はい、ウェレン兄貴!」


レサとクラウの返事と同時にドレイクの攻撃を誘い出すためにウェレンがさらに近く前に出た。ウェレンの動きに反応するようにドレイクの前足が地面から離れてウェレンに向かった。


「今だ!」


ウェレンが魔石ランスを投げた後、前へ飛び出した。グラベルが詠唱した速度強化の効果がまだ残っているので前に飛び出したウェレンは投げた魔石ランスがドレイクに届く前にかなり近くドレイクに接近できた。


続いてスミルとボームがドレイクに槍を持って接近していた。まるで銛班の動きが時のぜんまいを未来へ一気に巻き上げるかのように見えた。


約束通りクラウとレサもホーンドレイクの死角から突入して槍を突き刺した。五つの槍がドレイクの体に刺さった。苦痛に身をよじる怪物の咆哮(ほうこう)がウェレンが他の人々に伝えようとする声をかき消した。声が伝わっていないことを確認したウェレンがドレイクの体に刺さっている魔石ランスの柄を両手で握り締めた後、頭を上げて大きく叫んだ。


「魔石装置!魔石装置を使え!」


―クァン―


爆発音と共に魔石ランスの装置が槍の先端をドレイクの体の中により深く刺し込み、その反発力を耐え抜いたウェレンの体には噴き出したドレイクの血がウェレンの顔と鎧を濡らした。


続いてボーム、スミル、レサの魔石ランスが次々と爆発音を上げてより深くドレイクの傷を抉った。そしてクラウが自分の魔石ランスを再び強く握り締めて魔石ランスの装置を起動した瞬間だった。


「うわあああ!」


先の四回の爆発とは違い、比較にならない大きな轟音と共にクラウの悲鳴が聞こえ、ドレイクから跳ね返されるように飛んでいった。


「クラウ?」


「何事だ?」


普通の魔石ランスでは出せない爆発音と爆発の反動で飛んでしまったクラウの姿を見て、魔石ランスが誤作動を起こしたと思い銛班の全員がクラウが飛んだ方向に首を回して、飛んで地面を転がるクラウの姿を確認した。


「うううう…何だこの魔石ランス、こんな大きな爆発を…前回はこんなじゃなかったのに。」


クラウがよろよろと体を辛うじて起こす。よろめくクラウにグラベルが素早く近づいた。


「大丈夫ですか?」


クラウの肩の上に置いたグラベルの手が淡い緑色に輝いていた。


大爆発を起こした魔石ランスがホーンドレイクの脇腹に刺さったまま大きな傷を負わせた。ドレイクが苦痛の咆哮を上げて頭を高く持ち上げた。


「VIS. RAS. TOL. FLAAAA!!」


苦痛の中で絞り出すようなホーンドレイクのわからない言語の叫びと咆哮が混ざって奇怪な音が周囲に反響のように響き渡った。


ドレイクの折れた角の先から小さな炎が次第に大きくなり、続けてドレイクが吐き出す息に合わせてその大きさを増していった。赤い炎と橙色の炎が互いに絡み合い混ざり、柔らかくうねって動きながら巨大な炎の球体を作り出していた。


「こ、こんな…あれ、どんどん大きくなってるぞ?」


「みんな避けろ!」


「避けられる大きさ…じゃないだろ…?」


グラベルがドレイクの角の先に生まれた小さな太陽のような炎の球体を眺め、人々を救うためには仕方なく高いレベルの魔法を詠唱しなければならないと思った。先のディリットの魔法矢よりさらに強力な魔法が必要だった。ドレイクに向かって手の平を広げて魔法を詠唱しようとした瞬間だった。


―トゥウゥ~ン―


木がねじ曲がり折れる音と共に再びパリントノンの発射音が聞こえ、肉を貫く音と共にホーンドレイクの首には三本の大魔獣用ボルトが刺さった。


「ふふふふ…ふ~っ…ふ…くそったれのドレイク、そろそろ倒れてくれないか。」


全身が汗でびっしょり濡れたグロマイヤーは荒く息を吐きながら、ドレイクが放った火の玉によってあちこち焦げたパリントノンの横に腰掛けて言っていた。彼の両手はまだ振動が消えない巨大な発射装置の上に震えていた。


ホーンドレイクの口から大量の血が流れ出た。頭上の巨大な炎の球体は小さな炎に散らばって次第にその形がぼやけ消え、止まらない血を口からずっと流し続けていたドレイクの頭が力なく地面に落ちる。あちこちにできた傷と刺さった銛たちが今回の狩りがどれほど苦しい戦いだったかを示しているようだった。倒れたドレイクの周囲に狩猟団の人々とようやく体を起こした冒険者たちが近づいた。


「うわあああ!」


「うははは!」


「やった!倒れたぞ!」


狩人たちと冒険者たちの喜びと勝利の歓声が聞こえた。倒れたドレイクの周囲に集まった人々が顔を合わせ笑い声を上げ、狩猟に成功した実感が湧き始めたのか互いの肩を叩き合い、湧き出る成功の喜びを分かち合った。





*****


ホーンドレイクが倒れた後、既存の野営地をドレイクが倒れた場所の周辺に移した。通常の場合なら馬と人の力を合わせてドレイクの死体を引きずって野営地の方に運んだ後で解体をしたが、今回のホーンドレイクはその大きさや重さが運ぶのが難しいと判断したため、グロマイヤーの指示に従って天幕の杭が抜かれ、高く積み上げていた薪の山と箱たちが馬車に積まれてドレイクの横に移された。


ドレイクの死体の姿を見て驚きヒヒンという音を上げて逃げようとする馬をトウモロコシとニンジンを与えて落ち着かせ、太い木の杭に馬たちを縛り付けてようやくすべての人が少しでも休むことができた。


再び野営地の中央に巨大な焚き火が焚かれた。肉を焼く音が聞こえ、木の酒杯(しゅはい)をぶつける音と狩猟団と冒険者たちの笑い声が聞こえてくる。一方の手には大きな肉が乗った皿と、もう一方の手には酒がチャプチャプと入った酒杯を持ってグロマイヤーがみんなの注目を受けながら話していた。


「くあははは。まあつまりさ、あの火の玉がドカン!って俺たちのパリントノンの支柱(しちゅう)が完全に飛んだんだよ、それをみんなと一緒に水桶を持ってきて火を消して~、ルタンこの野郎はまた飛んだ魔獣用ボルトを探すって走り回って、大騒ぎだったぜ、まったく。」


「それでも、壊れてないのを見つけるのにどれだけ苦労したんですよ。」


グロマイヤーとルタンが持っていた互いの杯をぶつけた後、酒杯を飲み干した。


「くっ!だからとりあえず傾いたままルタンが持ってきたボルトをはめ込んだんだよ。そしたらあのドレイク野郎がズズズ~っと右側にウェレン側に向かって走るんだよ。でも俺たちのパリントノンはさっきの火の玉に当たって横に倒れててさ、その…左、右には回せないんだよ。だからプロンとかみんなに俺が『おい~!これ押せ~!』って言ってそれをやっとこさドレイク野郎の方に向けたんだよ。発射ー!」


「って言ってドレイクに最後の一撃を食らわせて息の根を止めた~!だろ?」


「俺はそれ押しただけでまだ手足がボロボロだぜ。」


グロマイヤーの話を聞いていた団員たちが酒杯を頭の上に持ち上げて再び勝利の喜びを満喫した。


「さあ!みんな腹もいっぱいになったし!少し休んだし…仕事だ!早く始めるほど早く寝られるぞ。」


グロマイヤーが持っていた酒杯を立てて置いた丸い木の樽の上に置いた後、ホーンドレイクの死体がある方向に向かって歩いた。


「休憩時間終わりだ!早く動け、この野郎ども。」


グロマイヤーが腕を大きく振り回しながら言った。


「うわ…もう少し食べたかったのに!」


「ええ?今座ったばかりなのに!」


酒杯たちを箱の上と野営地のテーブルの上に置く音が次々と聞こえ、狩猟団の人々がトボトボと疲れた足取りでグロマイヤーの後を追って歩いた。

「狩りは終わった、残るは労働のみ… でもその前に一杯!」

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