16話-ドレイク捕り (9)
「えっ! 団長さん。団長! 奴が来てるよ。あっちからこっちに向かって来てるんだよ!」
ルタンの急な叫び声が聞こえた。ホーンドレイクが狩猟団のパリントノンに向かって突進してきていた。以前に銛班が打ち込んだ銛とは刺さった深さが違ったせいか、口でくわえて抜き取るのは諦めたようで、肩と前足に刺さっているパリントノンのボルトはまだドレイクの体に刺さったままだった。
-トン! トン! トゥーン! トン!-
パリントノンを再装填していたヌルテン、ダイロ、ルタン、トリンが横に立てかけてあった大きな大型弩弓を手に取り、ホーンドレイクに向かって発射した。4発の弩弓のボルトがドレイクに向かって飛んでいき、刺さる。すでにドレイクの体に刺さったボルトとその大きさを比べると小さく見えるが、それでもドレイクの狩りに使われる弩弓なので、普通の狩人や兵士が使う弩弓よりは大きなサイズだった。
「え...へっ....」
「止まらないじゃん?」
「......」
「団長さん...?」
4人の弩弓射撃にもホーンドレイクが止まらずに走ってくるのを見て、団員たちが一斉に固い表情でグロマイヤーの方へ顔を向けた。
「くぅ...へへへへ。」
グロマイヤーも今の状況にどうしたらいいか分からず、動作を止めて顔を固くしていた。
どんなドレイクがウェレンたちの銛を耐えて... エトたちの大剣に... 切り札のパリントノンの魔獣用ボルトまで食らって耐えるんだ...
耐えるレベルじゃない。今、自分に向かって突進してきている。普段狩るドレイクならウェレンたちの銛で動けなくなってゆっくり死んでいくか、またはエト、ラト、ウクの三人の大剣で足か首が切り落とされるはずなのに...
「くそドレイクめ...」
考えてみれば、もう一つ手段が残っていた。雇った冒険者たち。少しの間でもドレイクの注意を引いてくれたり、今走ってくるあのドレイクの突進を止めてくれるだけで、追ってくるエトとラト、ウクが合流できる。ウェレンの銛班が戻ってくれば状況はさらに良くなる。そうすれば、プロンがまたパリントノンを装填できるし...... グロマイヤーの思考が速くなる。計画が、対応法が立てられる。それなら!
「えへんえへん! ラミル狩猟団の団長グロマイヤーのお願いだ! 雇用書に書いてあった3倍支払いの条項を発動するよ。戦闘に参加してくれ! 冒険者の皆さん。それに追加で、あのドレイクの肉をお腹がはち切れるまでごちそうする! 一緒に狩ろうぜ! 戦おう!」
プルプル震える三本の指を立てて広げて見せながら、グロマイヤーが「鼓舞」的な助けの要請の演説をした。
グロマイヤーの依頼に、ルードとレインホルドがヴァリードの横から前へ向かって走り出る。そしてドシェルの横に立っていた肉厚な体躯のツラロックも巨大な盾を前に構えて走り出した。
「3倍だぞ。3倍! レインホルド、聞いたか?」
興奮を抑えきれず、レインホルドの肩を叩きながら歩き出していたルードが腰の矢筒から矢を三本手に抜き取った。そして力一杯弓弦を引きながら、顔に笑みを浮かべて言う。
「まずは挨拶だな。俺たちの3倍ドレイクさん!」
*****
ホーンドレイクの咆哮が聞こえる。ウェレン、スミル、ボームの三人が走っていた。続いて後ろからついてきたレサとクラウがウェレンを呼び止めた。また人数が増えて銛班の全員が集まり、グラベルとイリスが合流して狩猟団のパリントノンが見下ろせる小さな丘の上に集まっていた。
「いや~、みんな上手くやってるじゃないか?」
ウェレンが少し遠くからドレイクと対峙中の狩猟団の様子を観察した後、また動き出した。素早く小さな下り坂を駆け下りながら、ドレイクと戦闘中の場所へ向かった。グラベルの強化魔法のおかげで、自分たちの身長より大きな魔石ランスを背負ったままでも速い速度を保ち、軽やかな動きで走ることができた。
長く伸びた草たちが通り過ぎる銛班の人々とイリス、グラベルの足に散らされ、風に飛ばされて倒れる本のページをめくるようなサラサラという音を立てていた。
ウェレンの言う通り、ドレイクと交戦中の冒険者たちと狩猟団はかなり順調に戦闘中だった。重甲戦士のツラロックとレインホルドがホーンドレイクの攻撃を受け止める。遠くからはルードが矢を放ち、攻撃魔法にも長けたドシェルの魔法がドレイクに命中する。エトとラト、ウクも再び戦闘に合流してヴァリードの回復魔法と強化魔法を受け、以前よりさらに激しい勢いでドレイクに攻撃を加えていた。
順調に見えた。グロマイヤーの目にも... 戦闘中の人々の考えにも、今回の狩りでは最大限自分の力を出さずに見守ることにしたグラベルの目にも... このまま少しずつドレイクを削るように攻撃を続けていけば勝てそうだった。増えていくドレイクの傷、鈍くなる動き、よろめき。多くの兆候が周りの人々に今回の狩りは勝利するという確信を与えていた。
「うははは。もう終わりが見えてきたな。プロン、もう撃つ必要もない。ウェレンたちまで合流したらほとんど終わりだ!」
緊張が解けたグロマイヤーの笑い声が混じった言葉に、プロンが親指を立てて頷き、返事の代わりとした。グラベルの目にもホーンドレイクの終わりが近いように見えた。
『それでも攻撃魔法を一発くらいは使ってみようか?』ドシェルの魔法を見てグラベルも一瞬そんなことを思った。雇われた冒険者としての責任というか、単なる職業的な良心だったろうか。彼はそう思いながら、ゆっくりと魔力を指先に集めようとしていたところだった。
その瞬間だった。
—VIS!
—ROH!
周りの人々が動作を止めて耳を塞ぐほどの大きな音が響いた。近くの人々には耳を塞いでも全身が震える音だった。耳ではなく全身に伝わってくる音圧が感じられる音。ホーンドレイクの角がだんだん明るく輝き始めていた。
—FLA!
「魔法よ! 避けて!」
ドシェルの急な声が聞こえた。みんなに危険を知らせるその瞬間、ホーンドレイクの角の先に魔力が集まり始めた。小さな赤い球体が角の周りを回りながらだんだん大きくなり、やがて巨大な火炎球に変わって角から飛び出るように爆発した。そしてその中から分かれた三つの火の塊がそれぞれ違う軌道で散らばった。
遠くのパリントノンに向かって一つの火炎が飛んでいく。二つ目はドレイクに向かって走っていたウェレンの一行へ、そして最後の一個はドレイクのすぐ前に落ちて一番先に爆発音を響かせ、周りを燃やした。地面に触れて轟音を立てて爆発するドレイクの火炎球に、その下でドレイクと交戦中だった人々が散らばり、立ち昇る黒い煙の中に姿が隠れた。
「うわあっ! プロン、火! 火! 火の塊!」
「団長さん···。火···。火..火炎球が。」
グロマイヤーが腕を伸ばして指先で近づいてくる火の塊を指さしながら固まっていたプロンを引っ張って地面に向かって一緒にうつ伏せになった。その後すぐに飛んできた火炎の球体がパリントノンに命中して四方に燃える木の破片を飛ばしながら壊れた。
「何よ、今のあれ? どんなドレイクがドラゴンでもないのに火を使うの? 魔法? 口から出たんじゃないじゃん?」
グロマイヤーがうつ伏せのまま頭を上げて、遠くから立ち昇る黒い煙に姿がぼんやり見えるドレイクと、すぐ近くの壊れて燃えているパリントノンを眺めた。
ドレイクが飛ばした火炎の塊に驚いて体を避けて地面にうつ伏せになった狩猟団の人々が、パリントノンに付いた火を消すために水の入った木の桶を持って駆けつけた。
三つ目の火の球体がグラベルの前で走っていた狩猟団の銛班の人々の頭上へ飛んでいっていた。後ろについて走りながらドレイクから飛んでくる火炎球を眺めるグラベルの頭の中に素早くさまざまな考えが渦巻く。
『シールディングを使うか?、相殺するか?、いっそ当たらせてから回復魔法を使うか?、派手じゃなく...効果的な...』
考える速度が速いせいでグラベルの目の前のすべてがゆっくり動いているように見える。大きく叫びながら他の人々に言うウェレンと、横に体を飛ばして飛んでくる火の塊を避けようとするクラウとレサ、そしてスミル。魔石ランスを火炎球に向かって投げようと片手で持ち上げたボーム。周りのすべてが止まったように...
『ディリットの魔法矢で十分だな。』
グラベルが熟慮の末に下した最善の結論だった。1~2レベルの魔法ではダメそうで、それなりに高いレベルの魔法の中でも派手じゃなく、火炎球を相殺する威力は十分な魔法だった。
グラベルの指先から翡翠色の小さな魔法陣が生まれた。そして指先の魔法陣に沿って手の甲に別の魔法陣が。そして一直線に伸ばした腕の手首に一つ、腕の真ん中に二つ、肩の近くに二つ。そして肩の端に一つ。合計8つの淡く輝く翡翠色の魔法陣が生まれ、一つの線でつながるように具現化されて強い光を放っていた。
グランド・ワールド・オンラインでディリットという名前のNPCは、さまざまな属性を代表する魔法使いの中、無属性の魔法を代表する大魔法使いNPCだった。極度の効率とどんな属性にも染まらない純粋なマナの鍛錬で最高の境地に達した彼の魔法の一つである
『ディリットの魔法矢。』
1レベルの魔法である魔法矢を複数の魔法陣に重ねて詠唱した後、連鎖させてその威力と効率を極大化させ、5レベルの威力まで引き上げた魔法だ。ディリットというNPCの名を大魔法使いの列に上げた魔法だった。グランド・ワールドでも効率を極限まで引き出して消費マナ比で最も高い威力を出す魔法として、多くの魔法使いが愛用する魔法だった。
グラベルの肩上の魔法陣が光をさらに強く放ち、指先の魔法陣までつながった濃い翡翠色の魔法矢を具現化する。
「Dirit Jaduca Bana」
グラベルの叫びと同時に、一筋の光がグラベルの指先から伸びていく。嵐の夜に雲を貫いて地に落ちる落雷のように、ディリットの魔法矢がホーンドレイクが飛ばした火炎球を貫いてその形を乱れさせ、相殺する。
そしてその光の矢は直線の軌跡を止めることなく伸びていき、遠くにいたドレイクの角に命中する。
「え...っ? あれがなんで角に...」
幸い火の塊はグラベルの魔法で空中に散らばって消えたが、ディリットの魔法矢の先にドレイクの角があった。角の中央を砕き、岩が割れるような音が聞こえ、角の一部が大きな破片に分かれて落ちていった。そしてそのまま止まらずに伸びていく光の矢を眺めながら、グラベルが指先をドレイクに向けたままその場で石のように固まった。
ドレイク狩りが初めてのグラベルの目にもホーンドレイクの角は商品価値が高く見える部位だった。火炎球だけを狙って消すつもりで詠唱した魔法があっちへ飛んでいくとは思わなかったのだ。グラベルの予想と計画にはなかったことだった。
一瞬の静けさ。何かも分からない攻撃で角が砕かれたドレイク。あまりにも多くのことが短い時間に起きた。ホーンドレイク、狩猟団の人々、冒険者たち、グラベル。みんなが今起きたことに考えを巡らせて、とても短い瞬間だが動作を止めて、何が起きたのか、今のことがどういうことか分からず、何をどうすべきか分からない状態だった。
グラベル:(かっこよく魔法をかける)
-バキッ-
グラベル:「...」




