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アニメ計画

二佳がノートPCを持ってリビングに降りてきたかと思うと、慣れた手つきでケーブルをつなげて、テレビとの接続を完了させた。

僕が仕事へ行っているときもこうしてリビングの大きいテレビで観ていたのかもしれない。


「…にい、好きなジャンルはある?」

「ジャンル?」

「…ラブコメとか、なろうとか、サスペンスとか」


二佳にそう聞かれても何も思い浮かばなかった。子供のころはある程度好きなものの傾向があった気もするけれど、ここ最近、全く娯楽に触れてきていなかったから自分でもどれが好きなのかさっぱりわからない。


「えっと...、二佳のおすすめを教えてくれると嬉しいかな」

「…うん、わかった」


結局、二佳に全てを委ねることにした。

あまりに二佳に頼りきりなのは申し訳ないけれど、二佳のことを知るという目的のことを考えればこれも悪くない選択だと思う。

大人しく二佳の選定を待つ。二佳はあーでもない、これは苦手そうとか呟きながらも僕にハマりそうなモノをピックアップしてくれた。


「…決めた。これはネットでも評価されている作品だし、まずはこれから観るのがいいと思う」


画面に表示されたアニメのタイトルは「胸の鼓動、キミの音」というものだった。二佳によると王道のラブコメ作品で、涙あり笑いありの作品らしい。二佳は既に視聴済みで普通に面白かったとのことだ。


「うん、面白そうだしいいんじゃないかな」

「…じゃあ再生」


そうしてしばらくアニメを視聴し続ける。さすがは人気作と思わされる先が気になる導入で、飽きずに1話を観終わることができた。何も操作をしなくてもすぐに2話目が自動で再生されて、そのまま見続けることになる。

2話が始まって10分程度経った頃、隣に座っていた二佳がうとうととし始めた。

というか、完全に目を閉じていて、もはや半分寝ているといっても過言ではない状態になっていた。


「…眠いなら止めようか?」


僕がそう言っても、二佳はマイペースを崩さなかった。


「…ん~、別にいい。にいも眠いなら寝て」

「でも、一緒に見るんじゃ…」

「…完璧を求めず、寝たい時には寝るぅ。それがぐーたらの心得だよ...?ふわぁぁぁ...」


二佳はふにゃふにゃボイスでそう言ったきり喋らなくなった。どうやら本当に眠ってしまったらしい。

僕は一度動画を止めて、二階からタオルケットを持ってきて二佳にかけた後、続きを再生した。

二佳はああ言っていたけど、昨日たっぷり眠れたから僕はまだ眠くない。それに、せっかく二佳がおすすめしてくれたのなら最後まで観たかった。

そうしてぶっ続けで最終話である12話を見終わったころには、夕方になっていた。

見終えた感想としては二佳と同じ。普通に面白かった。

ただ、僕としては話の細かいところが気になって集中できなかった。

とりわけ気になったのは、キャラクターたち、報連相しなさすぎ問題。

心配をかけたくないだの、まだ仮説の段階だの、言うタイミングを逃しだのと、お互いの気持ちや状況がすれ違いまくるのには、正直ひやひやさせられた。

もしそんなことを以前の職場でやっていたら、どんな罵声が飛んでくるかわかったものではないだろう。


「…ん、にい、まだ起きてたんだ」


上司に報連相のことで叱られたことを思い出していると、二佳が起き上がってきた。


「ああ、面白かったからずっと見ちゃった。いい作品を紹介してくれてありがとう」

「…ん?んん…、それより目、疲れてない?眠くなった…?」

「いや、全然!まだまだ余裕だし、また二佳のおすすめを教えてくれるかな?」


僕が前のめりでそう答えると、二佳は目をしょぼしょぼさせながら天を仰いだ。


「嬉しいような…、嬉しくないような…」

「ん?」

「…普通はアニメを一気見なんかしたら、頭がパンクしてすぐにでもベッドにダイブしたくなるものだと思う…」

「社会人時代に培われた体力が発揮されているのかもしれない」

「…体力というか、解除不能の不眠の呪いがかかってるんじゃない…?」


なんだか無駄にかっこいい言い方になっているけれど、そうともいえるかもしれない。呪いうというかただのストレスだろうけれど。

というか、二佳としては僕にそんなに安眠してほしいのだろうか。てっきり、いっぱいアニメ観れるならおすすめの作品を教えまくって沼に堕としてやるぜー。みたいな、そういう流れを想定したのだけれど、二佳としてはまた別の目的があるらしい。


「……わかった。じゃあアニメ計画は中断して、次の堕落計画に移る。にいには、とにかく眠れるようになってもらわないとダメだから…」

「よくわからないけど、二佳がそういうなら従うよ」

「……というわけで、にいには今から安眠のために…」

「安眠のために?」

「…耳かきASMRを体験してもらうね?」

「耳かきえーえすえまーる…?」


こうして早くも堕落計画は次のテーマへと移行したのだった。

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