第20話 デートの約束アシスト付き
その後も楽しい時間を過ごし、瑞望が帰る時間になった。
「やっぱさぁ、今日一日見て思ったんだけどー、おにぃとズモちゃんぜーったい前と雰囲気違うってぇ」
玄関の外へ出た俺たちに付いてきて、歩衣が言った。
こいつはどうしても俺と瑞望をくっつけないと気が済まないらしい。
まあ、もうくっついてはいるんだけど……。
「あーあ、早くおにぃとズモちゃんが付き合っちゃわないかな~」
とうとう遠慮なく願望をさらけ出す歩衣。
「え? 翔ちゃん、歩衣ちゃんに言ってないの?」
瑞望が体ごと首を傾げる。
「いや、機会がなくて」
あと、言ったらめんどくさそうだから。
「なにそれー。妹に冷たいんじゃない?」
「口をとがらせられてもだなぁ」
「え? え? どういうこと?」
「実はね」
瑞望は、ドヤ顔を浮かべながら、俺の腕に抱きついてくる。
「あたしたち、付き合ってるんだよね!」
「え~~!? ま!?」
ま! ま! 連呼しながら、俺たちの周りをぐるぐる回る歩衣。奇妙な生き物だ。
「ヤバ!? いつの間に!? おにぃ、やるじゃん」
俺の背中をバシンと叩く歩衣。こいつはいちいち物理で訴えて感情表現するんだよな。俺の体が持ちそうにないから自重してくれ。
「じゃあもうキスしちゃったんだ!?」
「……してないです」
ずーん、と沈んだ様子を見せる瑞望。
「おにぃ。ナメてんの?」
「ナメてないわ。ナメるナメないの問題じゃないだろ」
「ズモちゃんに大恥かかせるような真似して!」
怒られても困る。
「歩衣ちゃん、怒んないでー。ほら、そういうのは時間の問題だから」
瑞望が歩衣の手をぎゅっと握る。
「そのうちキスなんて挨拶気分でするようになるよ。ふふふ」
「ヤバ! ズモちゃんもうそうなったら結婚秒読みじゃん」
「け、結婚~!? それはまだ気が早いよぉ」
「大丈夫だって! あと一年でイケるし!」
「が、学生結婚!?」
「おい、もうやめとけ……瑞望の頭から湯気が出すぎて破裂しそうだ」
「もう! おにぃは覚めすぎじゃね? もっとアゲてこーよ、初彼女じゃん!」
「えっ、えー、あたしが初めてなの!?」
瑞望は別に煽っている風ではなく、純粋に驚いているみたい。
初めてもなにも、俺みたいなモンがそうそうモテるわけないでしょうが。
「そうだよ! おにぃはズモちゃんにキュンキュンのビンビンなんだから!」
キュンキュンはいいがビンビンは聞き捨てならんぞ。
「ところでー、おにぃは今までズモちゃんとどんなデートしたの?」
「え?」
「は?」
「一緒にお出かけしたことがあるかってこと……か?」
「決まってるでしょ。なに、付き合ってるのにデートもしてないの?」
「一応、瑞望の部屋には行ったけど」
すると歩衣は、遠慮なくクソでかため息をついて。
「そんなの、小学生のときに散々やってんじゃん。恋人同士なんだからもっとそれっぽいことしなよ」
「そ、そうだよね! まだデートしてないのはあたしも変だと思った!」
じっ、と俺を見上げてくる瑞望。
「翔ちゃん、デートしよ!」
俺の両手をがっしり握ってくる瑞望。
泰栖さんへの返事が保留になっていることで、気兼ねなくデートへ行くことは無理そうだ。
けれど、考えようによってはいい機会なのかもしれない。
ここでデートといういかにも恋人らしいイベントを経験すれば、瑞望と恋人のままで居続けようという覚悟が決まり、泰栖さんへの気持ちに踏ん切りを付けられるはず。
「わかったよ。一緒に――」
「ちょーっと待って」
「なんだよ、歩衣」
「そういうのはズモちゃんじゃなくて、おにぃの方から誘うべきじゃね?」
我が家の恋愛マスターは厳しいな。
でも、歩衣は派手な陽キャのわりには彼氏がいたなんて話を聞いたことがないんだけど。
「女子としては、まだまだそういうのは男子にリードしてもらいたいんだから」
「あ、あたしはそこまで気にしないけどー、そうだったら嬉しいなぁ」
「……わかったよ」
俺は、瑞望としっかりと向き合い。
「瑞望、俺とのデートに付き合ってくれ」
「いいよ!」
こうして俺は、瑞望とデートすることになった。
これで俺の覚悟も決まるといい……いや、決めないといけないんだ。
「やったね、ズモちゃん!」
瑞望だけじゃなくて、歩衣まで大喜びだ。
これ、泰栖さんを選ぼうものなら、歩衣まで悲しませることになるのか……。




