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「このときを待っていました」
二人の少女が対峙している。
一人――黒いセーラー服にショートケープを羽織り、手には鞘に納まった刀が握られている。銀灰の髪に白い花の飾りがぼんやりと光っている。
もう一人――艶のない黒の外套、漆黒の長髪。その手には切先が鑿のように平たい剣。
黒髪の少女の背後には、白い月が浮かんでいる。
少女たち以外のすべてが闇の中にある。帳の内には、二人しかいない。
黒セーラーの少女が刀を抜いた。その刀の刃は半ほどから折れていた。
「――あなたを殺します」
「……なめられたものね。その刀を折ったのはわたしよ。……それに、たとえ折れていなくともそんな低級の神秘遺物ではわたしに敵うはずもないと思うけれど」
「でしょうね。……でも、あなたが知っているのは折れる前のこの子のこと」
峰を撫でる。
「天昇れ」折れた刀に呼びかける。「――《夜鷹》」
その傷を覆うように青白い炎が湧き上がる。炎は失われてしまったはずの刃を形作っていく。
この刀は、一度壊れたことで、隠れていた本当の姿を得た。
月影を上塗りせんばかりの眩い炎の刃。夜闇の中に、灯台のように耀う。夜を駆ける導きの星。
――そして、すべてを燃やし尽くす浄化の炎。
それを見て、黒髪の少女は一瞬薄っすらと笑い、すぐに冷たい表情へと戻った。
「そう……なら、撃ち落とさなきゃ――」