プロローグ
大学生の夏休みは長い。本来であれば、この期間を使って各々の課題に取り組むべきである事は重々承知しています。重々承知しているのでありますが、私が通っている大学はFランク。
「学費を納めていただいた上、新聞沙汰になるような事に手を染めさえしなければ卒業する事が出来ます。」
が謳い文句であるため、悪い意味で放置されているのが現状。
就職率100%が目標らしく、支援体制は整えられているのでありますが。求人票を見る限り……
(高校で就職した方が良かったかも?)
アルバイト先からそのまま就職を目指す者が多いのが実情。そんな私もその1人。とは言え身分は学生。自由な時間は欲しいもの。バイト先の店長にお願いし、1週間の休みをいただく事になったのでありましたが……。
(使えるお金が余り無い……。)
奨学金制度はありますが、奨学金は
(基本借金。)
正規雇用されるのかどうか?正規雇用されたとしても、続ける事が出来る所なのだろうか?定かで無い中、奨学金に手を出すのは極力避けたいもの。アルバイト代がそのまま学費に消えて行く中、
「残った少ないお金を使って出来る事。しかも見聞を広める事が出来るものは無いか?」
と尋ねた所
「青春18きっぷは如何でしょうか?」
の答えが。1日あたり約2400円(東京駅から沼津駅までの片道料金)でJRの普通列車が乗り放題との事。これなら私にも手を出す事が出来ると5回分12050円を購入。
「この切符で行く事が出来、かつ普段の旅行では行かない所は?」
と尋ねた所
「なら姨捨駅が良いですよ。」
の回答。
朝6時中央線の快速で新宿駅を出発した私は、高尾駅に甲府駅。そして松本駅を乗り継ぎ正午過ぎ姨捨駅に到着。景色は良い。駅舎も趣がある。ただそう言った光景は他にもある。にも関わらず何故友人は姨捨駅を勧めたのだろうか?と思い返した所……。
「線路に特徴がある。」
と言っていたよな……。しかし線路は線路。1067ミリの何処にでもある線路だよな……。
と気付いたら線路に足を踏み入れてしまっていた私。この先に何かあるのでは?と列車が走り去った方向に歩を進めた私が目にしたもの。それは……私が先程降りた列車。信号で止まっているのかな?と思ったのも束の間。その列車は大きな警笛音を鳴らしながら……。