告白のお願いタイム
二人がぽつぽつと話はじめた内容は、実にくだらんものだった。
俺とは別の奴に告白したいということだった。反応としてはあのもじもじして早く言いなよっていう行動そのものが紛らわしく、甘い期待をしていた自分がばからしく感じた。
「なら、自分たちで勝手にしたら」当然、俺以外の男がいい目にあうなんて面白いはずがない。
すると目が離れた方が「先輩がいる時の方が、告白の成功率が上がるって噂が広まっているんです」
「なっ、何?」だから最近俺の周りで、やたらとイベントがあるのか。
「はあ、つまり俺に見てろってこと?」しかし誰がそんな噂ながしたんだ。これじゃ一人になれないじゃないか。しかも告白相手は、俺のクラスの林田 昭人っていうニキビ面で声のでかい男が脳裏にうかんだ。俺の方が断然いい男だ。
別に断ってもいいんだが、今まで女子に何かを懇願されたことがあっただろうか⁉
そう考えるとまあ引き受けちゃるかあ。
別に今まで通り屋上で好きにしてればいいんだから‥と気楽に考えていた。
ということで目の離れた方、木下 優紀というらしい。これは完全なる名前負けだなあ。もう一人の太っちょが伊藤 可憐。どっちも名前に思いを込めすぎだ~。彼女たちには口が裂けても言えないが……。
「まあ、別にいいけど」というと彼女達はまるで願いがかなったかのように、満面の笑みで喜んだ。傍から見るとフツーに俺への告白シーンだよなあ。くそぉ。
それから、教室に入りいつもの1日が始まるはずだった。
だが今日は、斜め前の席の林田 昭人のことが気になってしょうがない。しかし、この男のどこがいいんだ?丸一日観察していてもわからない。わかったことといえば、やたらに汗っかきで音楽と英語の授業以外は先生にわからないように寝ていることだった。
それでもやるべきことは、4日後までにこの男に例の下級生の伝言を伝えなければいけないことだ。だが、その日は案外早くきた。
自分で思ってた以上に昭人に目がいっていたらしい。たまたま便所で一緒になった昭人に問い詰められた。
「お前、やたらと俺のこと見てないか? すっごく視線感じているんだけど‥。悪いが俺、男には全く興味ないから」
「冗談は顔だけにしてくれ。俺もお前にはまったく興味ないから」
この機会に告白タイムのことを話しだすとまんざらでもない顔になる。(くそお。つまんねぇ。でも、もう俺の役目は終わったよな。ああせいせいした。あとは当人同士で勝手にやってくれ)