第67話 状況整理と追っ手
冤罪をかけられていることを知った俺たちは、自分たちの手で俺たちの名前を使って悪さをする奴らを捕まえることになった。
さっそく、捕まえに行きたいところだが、その前に整理しないといけない情報がある。
「さて、まずは調査をしないといけないわけだが……リリナ、アリシャ。その偽金が流通している街ってどこにあるか分かるか?」
俺が二人に聞くと、リリナが思い出すように言葉を続ける。
「被害が大きな街はガランっていう街みたいです。ガランって、金が取れる採掘場を仕切ってるっていう街だよね?」
リリナがちらっとアリシャを見ると、アリシャはリリナの言葉に頷いた。それから、俺に視線を戻して口を開く。
「南の方にあるのは知ってますが、詳しい位置までは分かりません」
「ガラン……ガランかぁ」
どうしたものか、まるで聞いたことのない街の名前だ。アニメでも聞いたことがなかった気がする。
俺は基本的にこの世界のことはアニメでしか知らない。アニメではケインに道案内などは任せっきりだったわけだし、街の名前を聞いてもそこがどこなのか分からない。
要するに、その街への行き方がまるで分らないのだ。
まぁ、その辺は御者に聞けばどうとでもなると思うが、今から街に戻って御者を拾うことは難しい気がする。
リリナとアリシャに御者を拾ってきてもらうというのもありかもしれないが、あの街では俺とリリナとアリシャが一緒に行動していることがバレている。
指名手配されているのが俺だけといえど、リリナとアリシャが馬車を拾おうとしていれば、なんとなく俺が後から合流することは分かるだろう。
仮に上手く馬車を拾ってこれたとしても、俺だけ乗車拒否なんてことも十分にあり得る。
冤罪といってもロイド関連の面倒ごとだからな。絶対に引き受けてくれない気がする。
「とりあえず、近くの街までは歩いて移動しないとだな。遠いけど、それが一番――リリナ?」
俺が二人に話をしていると、リリナの耳がピクピクッと動いた。それから、リリナは後ろを振り向いて今度は大きく両耳をピクピクッと動かす。
「ロイドさま。何者かがこっちに向かってきてます」
「……追っ手がもう来たのか?」
どうやら、追っ手がリリナの『気配感知』のスキルに引っかかったらしい。
俺は顔を歪めてリリナが見つめている先を見るが、まだ俺が見て分かる範囲には追っ手は来ていないみたいだ。
でも、なんで俺たちの場所がバレたんだ?
リリナとアリシャがつけられていた? いや、この二人がいてそんなことになるだろうか?
俺がそう考えていると、アリシャもリリナと同じ方角をじぃっと見つめ始めた。
「『遠視』……リリナの言う通り、一人男の人がいますね。街で見たようなガラの悪い男が、うろうろしている感じです。あっ、戻っていきますね」
「戻っていった?」
俺はアリシャの言葉に眉根を寄せる。
うろうろとして、その後に戻っていったってことは、俺たちの居場所を正確に分かっている訳ではないということか。
俺たちが街にいなかったから、ただ捜索範囲を広げているだけの説が高いな。その証拠に、すぐに引き返している訳だし。
「それなら、ここでもう少しここで大人しくしてるか。男が完全に離れてからここを離れよう」
俺がそう言うと、二人も同意見なのか頷いた。
正直な所、俺を追ってきている奴らの情報が欲しい所ではある。でも、これ以上あの街にいるわけにはいかない。
ガランを目指しながら途中で可能な限り情報収集をしていくしかないな。
「ん?」
見えない男の背中を見つめながらそんなことを考えていると、不意に一つのアイディアが浮かんだ。
森の中で一対三という状況が、少し前にケインのパーティのレナを攫った状況と重なった。
「……アリシャ。男は本当に一人なのか?」
「はい。間違いないかと」
「リリナ。他に俺たちを追ってきているものはいるか?」
「いません。あの男だけです」
俺は二人に確認を取ってから、少し間を置いて頷いた。
「よっし。あいつを攫うぞ」
「「え?」」
俺の言葉を聞いて、二人は間の抜けた声を漏らしていた。
今の俺たちには情報が足りな過ぎる。それなら、追っ手を捕まえて、吐かせてしまえばいい。
……俺たちのパーティの不意打ちから、逃げられる奴なんていないだろう。
俺はそんなことを考えて、悪巧みをするようににやりと笑みを浮かべるのだった。
少しだけ、反撃に出ることにしよう。




