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第34話 ケインが変わった理由


 それから、俺たちは最近のケインの素行について色々と聞かされた。


 酒場で暴れるのは常習的で、街の人たちにも罵声を浴びせる始末。


 気に入らない奴らは『支援』を使って、他のパーティメンバーに手を上げさせて、気にいる女の子がいれば手を出しまくる。


 護衛の任務先では、恐喝に近いことをしてチップを巻き上げたりしているらしい。


 その結果、『竜王の炎』は以前よりも嫌われてしまい、ロイドが抜けた後の前衛職を埋めることもできずにいるとのこと。


 アニメのロイド以上に調子に乗った行動の数々を聞かされて、俺は頭を抱えていた。


 そして、そんな俺の隣ではリリナがぷりぷりと可愛らしく怒っている。


「まったく、そんなことをするなんて信じられません! ロイドさまを見習って欲しいものです!」


「そうですね。今のケインさんなら、以前のロイドさんの方がマシだったかもしれません。今まで押さえ込んでいた分、ケインさんはひど過ぎますよ」


 二人がそう言いながら頷く近くで、俺は一人冷や汗をかいていた。


「ロイドさま?」


 俺は可愛らしく小首を傾げているリリナを見てから、顔を俯かせる。


 ……これって、俺がケインをパーティから追放しなかったからだよな?


 ケインが俺にざまぁをしないようにと考えて、パーティ内に居場所を作って、ロイドを追放させたのだが、どうやらそれが見事に裏目に出たらしい。


 他のパーティメンバーに担がれてしまったせいか、ケインは調子に乗って、以前のロイドのような性格になってしまったみたいだ。


 それも、溜まりに溜まった鬱憤をざまぁで解消できなかったからか、弱者を見つけて憂さ晴らしをしているとのこと。


 いやー、まさか、あの優しいケインがこんなふうに変わるだなんて、想像つかなかったなぁ。


 これって、森の生態系がおかしくなりそうなのも、間接的に俺のせいだったりするよな。


 俺はそう考えてから、申し訳なさそうに顔を上げる。


「ちなみに、ケインが放置した魔物たちの駆除依頼は出したんですか?」


「出してはいるんですけど、誰も受けてくださらないんですよ」


「え? なんでですか?」


 冒険者をやっている者なら、今の事態が早急に解決しなければならない事態だということくらいは分かるはずだ。


 緊急事態ということは、それなりに報酬だって弾むはず。


 それなのに、頑なに依頼を受けない理由が分からない。


 俺がそう言うと、レミさんは深くため息を漏らす。


「『クソ野郎どもの尻ぬぐいなんてやるか!』って人が多いんです。ロイドさんがいた頃から、『竜王の炎』って街中から嫌われていましたから」


「な、なるほど」


 俺はレミさんの言葉に、思わず顔を引きつらせる。


 確かに、ロイドたちのパーティがやらかした問題を、他のパーティがどうにかしようと思うわけがないよな。


 それだけのことをしてきたわけだし、仕方がないことだろう。


 そうなると、こんな状態でも森の魔物の駆除を引き受けるパーティはいないだろう。


 ……俺たちを覗いて。


「分かりました。俺たちがその依頼を引き受けますよ」


「え?! 引き受けてくださるんですか?!」


 俺がそう言うと、レミさんは驚きながら顔を上げる。


 俺はそんなレミさんの反応に笑いながら、言葉を続ける。


「そもそも、そのために個室に呼んだんですよね?」


「そうですけど、その、ダメもとだったと言いますか……」


 レミさんは気まずそうに頬を掻きながら、俺から視線を逸らす。


 まぁ、こんな面倒ごとをロイドが引き受けるだなんて誰も思わないだろうな。


「むむ。ロイドさま、さっきの嫌な人のために依頼を受けるんですか?」


 俺がそんなことを考えていると、リリナが不満そうな顔でむくれていた。


 嫌な人っていうのは、多分だけどケインのことを言っているんだよな?


 どうやら、ケインの好感度は下がっていく一方みたいだ。


 俺はそんなリリナに笑みを浮かべてから、小さく首を横に振る。


「それもあるけど、これは今までの俺の行動が原因だったりするんだ。だから、責任を取るために引き受けるんだよ」


 多分、今までのロイドの悪逆非道な行為がなければ、他のパーティも今回の依頼を受けてくれたかもしれない。


 それに、ケインを追放しないという選択をしたのは俺だ。


それらの責任を取るためにも、何もしないわけにはいかないだろう。


 俺がそう言うと、リリナはふんすっと両手の拳を握って意気込む。


「そういうことでしたら分かりました! 私はロイドさまのためなら、何でもします!」


「ありがとうな、リリナ。本当に頼りになるよ」


 俺がそう言ってリリナの頭を撫でると、リリナはにへらっと緩んだ笑みを浮かべる。


 それじゃあ、行くとするかな。


 そう意気込んで、俺はリリナと共にまた近くの森へと向かうことになったのだった。

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