50話
待て、鉄性の盾では炎を受け止めるのは無理じゃないか!? 下手すれば溶けてしまう! だからと言ってこの前の魔族と戦った時みたいに放り投げてしまっては後で回収が難しそう。
炎は俺の考えなど無視して目下に迫る。
最早、目下の炎を盾で受け止め、溶けてしまったならばその時考えるしかない。
「熱くない!?」
地獄犬の口から放たれた業火を受け止めた俺は意外な結末を迎え思わず声を上げた。
炎を受け止めた盾が溶ける様子も無ければ熱さを感じる事も無い。
エリクさんが掛けてくれた氷防壁は装備品にも効果があったみたいだ。
地獄犬の口から放たれた炎を受け止め切った俺は地獄犬の懐に潜り込み斬撃を仕掛ける。
「グルルルルッ!」
だが、地獄犬は鮮やかなサイドステップで俺の斬撃を回避。
「やはり、機動性は足りてませんね、アリアさん、カイルさんに機動増加を」
エリクさんの指示を受けアリアさんが、俺に『機動増加』を掛ける。
黄色の光が包み込み、自分の身体が軽くなった事を感じ取った。
「でやぁぁぁぁ!」
今度こそ、と自身の機動性が上がった俺は地獄犬に対し剣での連撃を仕掛ける。
ザクッ、ザクッ、スカッ、スカッ、ザクッ。
多少なりとも攻撃を命中させる事が出来る様になったものの、鉄製の剣では厳しいのか相手に対して有効打を与えている気がしない。
「ガオオオオオ!」
俺の連撃が終わった時に生じた隙を、地獄犬待ってましたと言わんばかりにが前足の爪を立て飛びかかって来た。
俺は盾を前に出し攻撃を受け流そうとするが、物理的なダメージこそ防げたものの、巨体が産み出す威力までは減衰させる事が出来ず後方へ向け大きく吹っ飛ばされてしまった。
「なるほど、筋力もまだ不足してますね、ではアリアさん、筋力向上をカイルさんに」
エリクさんから指示を受けたアリアさんが俺に『筋力向上』の魔法をかける。
剣が軽く感じる。俺は再び地獄犬の懐に潜り込み連撃を仕掛ける。
威力が増した俺の斬撃を受けた地獄犬は表情を曇らせ一旦バックステップを踏み後退した。




