37話
セリカさんが抱いている誤解を解く事も含めた俺の説明に対しセリカさんは、
「まぁ、何とお優しい事でありましょうカイル様。わたくしセリカはますますカイル様をお惚れ申させて頂きとう存じ上げます。わたくしセリカ・ジュピテスはカイル様がお給金3カ月分の指輪を頂ける日を遠かれどお待ちしております」
この人、超ウルトラスーパーポジティブな人なのだろうか? それとも単純に人の話を一切聞かないのだろうか?
「いや、だから俺は……」
俺がセリカさんに改めて結婚の意思が無い事を伝えようとすると、
「そうだワン。僕とカイルさんはルッセルさんに呼ばれてただワン、ご主人様、魔法を解いて下さいワン」
「ハッ。駄犬風情が何私に頼んでるのさ?」
セリカさんが、背後に隠していた鞭を表に出し、地面に向け一振り。
ビシッと身が引き締まる様な音が室内に響き渡る。
「セリカさん? ルッセルさんが読んでいる様みたいだし」
「カイル様!? 申し訳ございません。わたくしとした事が失念いたしました。カイル様の御命令とあればこの駄犬の拘束なりを解くなり私をあんな事やこんな事をして頂いても構いません」
あんな事やこんな事って何なんだよ。
俺が呆れて溜息をついた所でセリカさんはエリクさんに掛けていた『拘束』を解除した。
ドサッ、とエリクさんが地面に落ちる音がした後、エリクさんはルッセルさんが居る会議室へと向かった。
ただし4足歩行で。
「エリクさん? エリクさん?」
「はっ! いえ、その、何でもありません!」
エリクさんは立ち上がると、ズボンをパンパンと払い今度こそルッセルさんが居る会議室へ向かった。
勉強エリアにて、いつもこの場で勉強をしているアリアにその妹のルミリナ、ルッカ、セフィアが集まっていた。
「それで、可愛いコボルドさん達が沢山居たんだよ♪」
ルミリナは、無垢な少女が見せるキラキラと輝かせた瞳で姉のアリアに「わんわん☆ぱらだいす」に行った土産話をしている。




