33話
この魔族が、人間の魔法により致命傷を受けた可能性が高いと予想しているルカンは、
「人間を甘く見るな、貴様は自己評価が高過ぎる。俺達魔族を討伐する人間はしっているだろう? 人間をなめてかかるといずれ貴様も命を落とす事になるぞ」
魔族に対し注意喚起を行うが、
「そ、そんな事あるワケ、い、いえ肝に銘じておきます!」
魔族は一瞬言い訳をし、それに対しルカンが鋭い眼光で1つにらみを利かせる。、
ルカンが発する威圧感に耐えられなくなった魔族は素直にルカンに応じる意思を示した。
ルカンは、こいつが嘘を付いている以上、炎獄の谷の調査も行っていない可能性も考えられる。さて、どうするかとしばし考え、
「ならば次の仕事に取り掛かれ」
これ以上問い詰めても恐らくこいつから謝罪の言葉を引き出させる事しか出来ないだろう。そう判断し、魔族に対しこの場を去る様に促す。
「は、は、はいーーー、分かりましたっ!」
ルカンに言われた魔族はルカンから逃げ出す様に部屋を立ち去った。
「はっ、魔族も似た様なモンなんだな」
二人のやり取りを近くで立ち聞きしていた背の低いウィザードであるダストがルカンの元へと近付く。
「ほう? 人間もあんな奴が居るのか?」
「ああ、そうさ、使えねぇ部下なんざみんなあんなもんだぜ、俺様はアンタみたいに優しかないけどよぉ」
ダストは、仕事の成果を上げられない部下に対し罰として攻撃魔法を放っていた事を思い出しながら言う。
とは言え、致命傷を負わせれば大問題になってしまうので罰を受けた人間が痛いで済む範囲の威力に調整はしていたのだが。
「奴は使えない訳では無いぞ、少しばかり素行が悪いだけだ。俺が指導すればどうにでもなる範囲だ」
「やっぱ随分と優しいな、俺様からしたら俺様の命令に従わないで勝手なことした挙句命令した仕事をこなさない奴は使えないとしか思えねぇ」
ダストはルカンに対し妙な親近感を抱いているのか、再度ルカンを褒める言葉を述べて居る。
ダストより二度も自分を褒められたルカンは、少し照れくさそうな表情を見せ、
「優しいか、世辞とは言え悪くない物だな」
「おいおい、俺様が世辞なんて面倒な事言うと思ってんのかよ?」
人間達と生活していた時は特に相手を褒めた事なんて無かった、では何故目の前にいるルカンには素直に褒め言葉が出るのかダストは不思議に思っていた。




