32話
―魔王城―
わんわん☆ぱらだいす、もといコボルド達の襲撃に失敗し無残な敗走を晒した魔族が魔闘将ルカンへの報告を行っている。
獅子族である獣人ルカンは仁王立ちで部下からの報告を一通り聞き終えると、
「そうか、貴様、何故傷を負っているのだ? 俺の命令は偵察業務で、貴様が傷を負う理由は見当たらん」
ルカンがこの部下に命じていたのは炎獄の谷に関する調査だった。
しかしながら、この魔族はルカンの命令に反しコボルド達を襲撃していたのである。
当の魔族からすれば、カイル達一行が自分の妨害をするなんて事は想定外であり、自分からすれば弱小な魔族であるコボルドなんて一瞬で全滅させられ、彼等の領地を手に出来ると思っていた。
だから、コボルド達の件はただの寄り道で済ませた後炎獄の谷の調査をするつもりだった。しかしながら、乗っていたワイバーンを失い自身も深い傷を背負ってしまった為肝心な炎獄の谷に関する調査は出来ていなかったのである。
出来ていなかったから、嘘を交えたいい加減な話をルカンに報告し、その報告がでたらめだと薄々感じているルカンはいら立ちを隠せないでいた。
「あ、いや、その、帰り際に天気が悪くなりまして、雷に打たれてしまったんです」
勿論それは大嘘である。
魔族が受けている傷は雷に打たれただけでは済まない深いモノだ。
「ほう、その割には濡れてないな、貴様、俺が魔法の知識が無いとでも思っているのか?」
魔族が目を泳がせながらしどろもどろしている様子を見て、ルカンも当然彼が嘘を付いているだろうと予測が立っている。
ルカンが、自分に嘘を付いているであろう魔族に鋭い睨みを効かせると、
「い、い、い、いえ、その様な事は御座いませんッ!」
嘘がバレた!? そう思った魔族は全身をガクガクと震わせながらルカンに返事をする。
「お前の傷は雷光撃によるものと特徴が酷似している」
「ぐ、偶然であります」
どうしてその魔法を当てられたんだ!? 魔族はルカンと目を遭わせられぬままこの場を誤魔化す為に次につくべき嘘を脳裏に駆け巡らせる。
「ほう。俺に言えない事か、大方人間に喧嘩を売ったが返り討ちにあったところか?」
「そ、そんなまさか! 魔族のわたくしが人間なんかに負けるワケありません」
なんて鋭い人なんだ! 魔族はその思考を読み取られぬよう身振り手振り大きくし、ルカンの推察を全否定した。




