29話
「フフフ……結論から言いますと今回の依頼は残念ながら失敗です……」
確かにルッド君が言う通り、コボルドキングの討伐は失敗している。
人間に対して敵対心を抱いている訳では無く、わんわん☆ぱらだいすを作り上げ人間と共存しようとしていた。
俺達の勝手な判断とは言え討伐する理由が無い以上コボルドキングの討伐はしなかった。
それが良い事かどうかは分からないけれど。
「え? え? まさか? ルッド様がその様な事? 冗談ですよね?」
リンカさんは、俺達が依頼を成功して当然だと思っていたのかその表情が崩れる。
それが予想外なのか意外なのか失望なのかは分からないけど。
「フフ……それは仕方がありません、頂いたコボルドキングの情報が間違っておりました故……」
「はい? まさか? その様な事が? 詳しい説明をお願い致します」
ルッド君が今回の依頼を失敗した理由をリンカさんに説明をした。
ルッド君もとい俺の判断の元、わんわん☆ぱらだいすを作り上げてまで人間達と共存をし様としているコボルドキングは討伐するべきではないと判断した。
誰がどう考えたって善良な魔物を討伐するのは良くないはずだ。
「分かりました。ルッドさん含め皆様方は冒険者1年生ですから、今回間違った判断を下してしまった事は仕方ありません」
俺の考えとは裏腹に、リンカさんが先程まで見せていた好意的な態度とは真逆に淡々とした事務的な口調で告げる。
間違った判断を下した? 何故? 魔物とは言えあんな可愛いコボルド達をせん滅しなかった事が間違いだって? 分からない、けれど背筋が少しだけ凍り付くような感覚に襲われる。
「間違った事って、それはつまりあのコボルド達をせん滅しなければならなかったのですか?」
「はい。カイルさんの仰る通りです。多数のコボルド達の討伐をしなくても構いませんが、コボルドキングの討伐は行わなければなりませんでした」
「ルッド君が説明した通り、コボルドキング達に敵意は無かった」
敵意が無いなら無駄に殺生する意味なんて無い! ましてやコボルドキングは俺達にコバルトリングまでくれたんだ。絶対に悪い魔物じゃない!
俺の抗議に対し、リンカさんが眼鏡の中央フレームを指でクイッと上げ、一つ咳払いをして。
「カイルさん達はまだお若いです。誰かに騙された事は有りませんよね? 社会の闇世の闇を知りません。人間ですら相手を騙す事は茶飯事ですから。魔物なら猶更あり得る話なんです。コボルドキングの真意は分かりませんが、魔物である以上少なくともある程度知能を持った魔物を束ねる王様。その様な個体が、自分達を討伐しに来た相手、自分達が勝てない相手なら味方のフリをして危険が無いフリをして騙す事は珍しい話では無く常に念頭に置かなければなりません」




