23話
「はっはっは、そうだ、そうだ、人間風情が魔族である俺様に力で勝てる訳がねぇ!」
俺の言葉を聞いていたのか、魔族が威勢よく声を張り上げる。
奴の言う通り、純粋な筋肉量は人間よりも魔族の方が多いだろう。
しかし、今まで奴が言って来た事、一々言い返した事を考える限り小物が虚勢を張っているようにも思える。
だからと言って油断する訳にはいかないが、デビッドに俺の補助魔法を掛けるだけでもデビッドが力で魔族に勝てる可能性は十分考えられる。
仮にダメだとしても、俺とルミリナさんの防御壁が掛かっている状況で即死事は考え辛い。
「デビッド、筋力増強だ」
俺はデビッドに筋力増強を掛ける。
俺の補助魔法を受けたデビッドは武器をスリングショットから両手斧に持ち替え、
「よっしゃ、その勝負乗ってやるぜ!」
威風堂々と魔族に向け駆け出す。
「お、おい! 俺様は魔族だぞ! 人間風情が俺様に勝てる分けないと言っているだろ! 貴様は人の話を聞かないのか!」
斧を構えながら自分の方に向かい突撃をして来るデビッドに対し魔族が慌てながらも声を張り上げる。
真っ向勝負に応じない時点で、思った通り虚勢を張っているだけみたいだ。
この様子だとデビッド一人でもこの魔族を討伐する事は容易。
なら、久しぶりに再会した学友に華を持たせるのも悪くない、俺は少し下がった場所で援護に徹しよう。
「わりぃな、俺は自分で試してみないと納得できねぇ性質だかんな」
魔族の懐に潜り込んだデビッドが、戦斧による一撃を放つ。
その一撃はあまりにも大振りであったせいか、魔族が慌ててバックステップを踏む事で容易に回避に成功する。
魔族に避けられてしまったが、その一撃が空を切った音は俺の耳にまで届いた。
直撃すれば大型の魔物すらも傷を負わせられるかもしれない。
「ぐひっ、ま、魔族の俺が脅しを掛けてるんだぞ!? 何でビビらないんだ!?」
デビッドの一撃に恐怖心を抱いているのか、バックステップを踏んだ後もゆっくりと後ずさりをしている。
「残念、俺は強い敵を前にする程燃えるかんな、ビビるなんて発想は持ち合わせてねぇんだ」
デビッドは魔族に臆することなく更に踏み込み、今度は下段から上段に向けた斧の一撃を放つ。
この一撃もやはり大振りなせいか魔族の身体を捕らえる事は出来ない。
この辺り当たれば強力である代償とも言えるが、その内あたるだろうから俺が気にしても仕方ない。




