21話
「はーっはっはっは、ならば俺の攻撃受けてみろよ!」
ワイバーンにまたがり滞空している魔族が、岩石系の魔法を発動させる。
魔族の周囲より小型の石が多数展開され俺達に向かって降り注ぐ。
1つ1つの大きさは拳位の大きさか? 高度もあるし生身の人間の頭部に直撃すればまず即死だ。
だが、それも生身の人間の話、俺とルミリナさん防御壁が2重に掛かっている以上この程度の岩石大した事は無い。
デビッドに掛かっていないが奴なら大丈夫、それなりの防具は身に纏っているし頑丈な上に気合と根性で何とかなる。
しかし、幾ら防御壁が掛かっているとは言え機動性重視の装備しかしていない俺以外の3人にこの石が直撃すれば無事では済まない。
俺は降り注ぐ石の雨がルッカさんに当たらない様、自分が盾となり石の雨を防ぐ。
2重に掛った防御壁のお陰で俺に降り注いだ石は乾いた音を立てるだけで地面に転がり落ちる。
時折いてぇとデビッドの叫び声が聞こえて来るが、持っている斧を上手く扱い急所への直撃は防いでいる。
僅かに出血も見えるが、あの程度ならば俺の治療を使えば十分だ。
目の前の安全が確認出来た俺は、後方にいるルッド君とルミリナさんをチラッと見る。
ルッド君は上手く回避してくれると思うが、ルミリナさんが上手く回避出来るとは思えない。だが、そんな心配は無用だった様でルッド君が風神の術を使い降り注ぐ小石の軌道を変え自分とルミリナさんに直撃する事を防いでくれたみたいだ。
「威勢の割に大した事無いわね!」
ルッカさんが杖を両手で握り締め、先端を上空に居る魔族に向け完成させた魔法を放つ。
杖の先から放たれた雷は人間の胴体程の太さの筒となり魔族を襲う。
雷光撃か。雷属性第3階層の魔法で、このレベルの魔法になると中級冒険者にならなければ扱えない。
術者の魔力にも依存するが、基本的に大体の生物はこの魔法を受ければ一瞬で黒焦げになり絶命するだろう。
勿論、あの魔族を一撃で葬れるとは思わないが。
魔族が回避行動を取ったが完全に回避は出来ず、ルッカさんが放った魔法は魔族の左腕に直撃し、直撃した部位は一瞬で黒焦げとなり、続いて魔族の全身を電流が走ったのかビクビクッと2、3度全身を痙攣させた。
直撃を裂けたとは言え、今の魔法を食らってもそれだけで済んだという事はやはり、あの魔族の魔法防御力は高いのだろう。
「おのれ、おのれ、おのれ!!!!人間の分際で生意気なッ!!!! クソクソクソッ! 俺が人間なんかに負ける訳がない! やれ、ワイバーン、魔物の力を思い知らせろ!」
左腕を欠損し怒り狂った魔族が、乗っているワイバーンに命令をし蹴る。
魔族から蹴りを入れられたワイバーンは、俺達の方に向き直り大きく口を開く。
つまり、俺達目掛けて炎の息を吹き付掛けるのだろう。
「ルミリナさん、みんなに魔法抵抗を!」
ルミリナさんに指示をだし、俺もみんなに魔法抵抗を掛ける。
みんなに二人分の魔法抵抗が掛けられた事を見計らい、
「ワイバーンの炎が来る、みんな下がれ!」
俺は皆に指示を出す。
「炎? そんなもん根性で受けてやるぜ!」
デビッドが俺の前に立ち塞がり身構える。
「下がるなんて冗談じゃない、私の炎で相殺するわ」
ルッカさんは炎の魔法の詠唱を始め、俺は溜息一つルッド君にアイコンタクトを送り、ルッド君が忍術の形成を始める。
ルミリナさんは素直に俺の話を聞き小走りでワイバーンとの距離を取った。
「はーっはっはは、バカかお前達は! ワイバーンの炎に焼き尽くされろや!」
魔族が声を上げ、ワイバーンの口から俺達目掛け激しい炎が放たれる。
「ククク……これでどうですか?」
ルッド君が気を練り大気中の水蒸気を集め、俺達とワイバーンの中間に水球を放つ。
ルッド君曰く、これはすいとんの術らしい。
ほぼ同じタイミングで、ルッカさんが炎球を左手のひらから放つ。
ルッカさんの魔法が、ワイバーンの炎にぶつかるが僅かに炎の勢いを止めただけで、続いてルッド君が放った水球に直撃。
水球は、ワイバーンの炎に触れた所で小さな音を立て破裂。ワイバーンが放った炎の一部を消化しながら大量の水が丁度デビッドの頭上に降り注ぐ形となった。
なるほど、デビッドの全身を濡らす事でわずかであるが炎に対する防御を上げたという訳か。
ルッド君の援護に感心した俺は一度金属製の盾を放り投げ、ルッカさんの盾となる様ワイバーンより吐かれた炎の前に立ち塞がる。
「カイル!? 私の魔法防御力舐めないで!」
「分かってる。それよりも、次の魔法を!」
「分かってるって、ナイトのカイルが私より魔法防御力高いワケ無いでしょ!」
「死ななきゃヒーリングがある、問題ねぇよ」
ワイバーンの炎で死ぬ事は無い、そこに異論がなかったのかルッカさんは押し黙り1度バックステップを踏み、再度詠唱を始める。
そこに、ワイバーンが放った激しい炎が俺達目掛け襲う!




