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2話

「カイルさん? 僕、ルッカさんの手料理を食べているカイルさんが羨ましいんですからね!? それだけじゃないですよ、ルミリナさんだってカイルさんの為にお菓子を作ってくれましたよね!?」


 エリクさんが、歯軋りをしながら言う。

 確かにルッカさんは、学生時代から今も週に3-4回の頻度で毎朝俺の家に来て朝食を作ってくれている。

 俺としてはただ単に料理が好きで作りたいから作っているだけとしか考えていない訳で。

 学生時代からずっと俺の成績を超えられないとあーだこーだ言って来てつっかかって来たと思えば、俺が一人で鍛錬していると勝手に模擬戦挑んできたり。

 その模擬戦も大体俺が勝っているんだけど、あまりに負けが込むと奇襲を仕掛けて来てそこまで来ると何か面倒と思ったから適当に負けていたんだけど。

 奇襲に対してはレンジャーからすれば当り前の戦術で、見抜けない方が悪い以上俺個人は何も思わない。

 とまぁ、本人が俺に良く言う様にライバルとしか思っていない訳で。

 何だかんだ言ってルッカさんは次席でセザール学園を卒業していて、ウィザード部門は学年中2位で、ナイトもファイターもレンジャーも学年で10位以内の成績を収めている。

 これもまた、セザール学園を出て新人冒険者になった人間の中では優秀な技能を持っているけど、俺に勝て無い事が気にめさ無いのか本人はあまり納得していない様子。


「それなら、今度ルッカさんにエリクさんの分も作って貰う様に頼みましょうか?」

「違うんですよ、カイルさん。誰かの頼みで仕方がなく、じゃなく、その女性が真心を込めて作るのが良いんですよぅ」


 エリクさんが何故だか分からないが泣き出しそうな声で言うが。


「軽い癖にそこだけはまともなのね」


 溜息混じりにアリアさんが呟く。

 少しだけ沈黙が生じ、俺は何を話すべきかと悩んでいると。

 

「ルッカ様~お会いしとうございました~☆」


 少し離れた場所から、透き通る声が聞えて来た。

 声の主が気になった俺がその方向へ振り返るとそこには、例のウィザード3人衆の1人の姿が目に映る。

 紺色で三つ編みをされた髪が特徴で、確か名前はカミラさんだったっけ。


「私、女には興味無いんだけど」


 カミラさんは、何故だか知らないが瞳を輝かせながらルッカさんに抱き着いて、当然同性に興味がある訳も無いルッカさんはそんなカミラさんを振り払おうとする。

 そんなルッカさんもクラス分類上ウィザードなんだけど、纏っている服はレンジャーのそれに近く動き易さを重視しているみたいで、何故そんな服装を選んでいるかと言われれば全科目次席だけあって近接戦闘も得意でありウィザードでありながら近距離戦をこなす為だったりする。

 本来ウィザードは後方から強力な魔法を放つクラスなんだけど、その辺はルッカさんが好戦的な性格だからだとは思う。


「うふふふふ、ボクはルッカ様に興味深々なのだぁ~」


 ルッカさんから振りほどかれそうになっているカミラさんだがそれでもめげずに抱き着いている。

 俺の記憶が正しければ、ルッカさんとカミラさんはこのギルドで初めてあったと思うんだけど、つまりカミラさんがルッカさんに一目惚れしたのだろうか? それとも俺が知らないだけで前から接点はあったのだろうか?


「あんたねぇ」


 ルッカさんは大きなため息をつき、カミラさんを振りほどく事を諦め彼女の好きにさせるようにしたみたいだ。


「あわわわ、ル、ルッカさんに抱き着けるなんてあの子羨ましいです! なんなら二人共抱き付いてしまいたいっ!」


 眼鏡をクイッとあげ、鼻息を荒くし興奮気味に言うエリクさん。

 彼の願望赴くまま、ルッカさん達に抱き着こうものなら間違い無く彼女達からの報復が、さしずめ、ルッカさんからは最大出力の雷魔法を零距離で放たれるだろうか。

 しかし、残念ながらエリクさんには大したダメージを与えられないだろう。

 こんな感じでも、ランクS冒険者である事は伊達じゃないみたいだ。


「なら、試してみると良いですよ。エリクさんの魔法防御力ならルッカさんの魔法を受けても大丈夫と思いますし」


 エリクさんの意見に賛同した所でふと気付く。

 そう言えばルッカさん、少なくとも駆け出しのナイトやファイター位なら楽に勝てる位近接戦闘も得意だったっけ? 俺、エリクさんが近接戦闘得意な話聞かないけど、まぁ良いっか。


「えへへ、そうですよね? 減るもんじゃないですしね、カイルさんが言ったんですからね?」


 何があっても俺のせいに出来るという免罪符を手に入れたからか分からないが、にへにへ笑顔と言う少々気持ちの悪い表情をしたままエリクさんは二人が居る所へ向かった。

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