19話
「そうだワン。だから貴殿達にはわんわんぱらだいすの宣伝をして欲しいと思うワン」
コボルドキングの討伐依頼を請けたハズだが、逆にコボルドキングからここの宣伝依頼を請けるとは予想外かもしれない。
「ククク……キング殿。報酬の方はコバルトと言った所ですかね……」
コバルト? 確か魔力を秘めた特殊な鉱石だっけ。その鉱石を組み込んだアクセサリーを身に着ける事で装備者の魔力を増幅させるとかなんとかで、俺達みたいな駆け出し冒険者ならその恩恵を十分に居預かる事が出来るとか。
勿論、エリクさんみたいなSランク冒険者だと大した恩恵は無いと思うしもっと強力な魔力を帯びる宝石が組み込まれたアクセサリー位身に着けているだろう。
で、このコバルトって奴はコボルドに銀を渡すとコバルトに変えてくれるって聞いた事があるな。
「話が早いワン。そうだワン。銀を用意してくれさえすればお礼にコバルトに変えてあげるワン」
「ククク……キングが変えた鉱石は純度も高いのでしょう……?」
「勿論だワン。私は伊達にキングじゃないワン」
コボルドキングが得意気に胸をドンと叩く。
「クク……カイル殿? 貴殿がコバルトの価値を知らない訳はないですよね……」
「あ、ああ、勿論」
「なら、このご依頼お請け致した方が宜しいかと……」
ルッド君が黒頭巾の隙間から僅かに口元を見せ、不敵に笑って見せる。
確かにルッド君が言う通り、コバルトは欲しい。
俺自身の魔力向上もあるけど、ウィザードの癖に近接戦闘を好むルッカさんの魔力もそうだし、後方支援に回っているルミリナさんの魔力を上げる事で治療や補助魔法の性能を上げる事が出来るからだ。
これから先何回このメンバーで戦うか分からないけれども、可能ならばコバルトを入手し戦力を増強したいところだ。
「コボルドキング殿、その御依頼お請け致します」
俺の言葉を聞いたコボルドキングは嬉しそうな表情を浮かべ、俺に握手を求める。
「有難うだワン」
俺はコボルドキングの手を握る。
もふもふした肉球が何とも心地良い。
「わんわんわん!!」
俺がコボルドキングの肉球を堪能していると、案内役と思われるコボルドが1匹血相を変え俺達の元へと駆け寄って来た。
「何? 上空から敵が来たワン?」
報告を受けたコボルドキングが腕を組み思案する。
どうやら敵襲の様だ。
コボルド達の背丈は俺達よりも低い。
亜人だから筋肉のつき方が人間よりも良いとしても、その人間から討伐される事もある種族である以上その戦闘力が高いとは思えない。
俺達に敵意が無い以上ここは加勢すべきと思うが、
俺の考えに同調しているのか、デビッドが率先し建物の外へ飛び出そうとしているみたいだが、身体が痺れたままその場から動く事が出来ないでいる。
「ククク……我々の出番ですよ……」
ルッド君が不敵な笑みを浮かべ、デビッドにチラっと視線を送った。
二人の考えは俺と同じか。
なら、話は早い。
「そうだな、行こう」
俺は身体が痺れて動けないでいるデビッドに対し、解麻痺の魔法を使いその痺れを治療する。
「ハァ、ハァ、助かったぜカイル、急に身体がしびれて動けなくなっちまった、ヤバイ毒物を食べた記憶はねぇんだけどな、まっ、そんな事より敵襲みたいだ、とっとと行こうぜ!」
デビッドはルッド君によって麻痺させられていた事は気付いていないらしい。
いかにもデビッドらしいと思いながら、俺もルッド君もデビッドに続いて建物の外へ出た。
上空から敵が来たと聞いた俺は、空を見上げその敵を探す。
見つけた!
チッ、よりによってふれあい広場の上空に居やがる!
ふれあい広場にはルッカさんとルミリナさんが居るじゃないか!
俺は機動増加を自分含めた3人に掛ける。




