13話
―セザール平原―
コボルドキングの討伐へ向かった俺達は中々の距離を歩いていた。
セフィアさんやエリクさんと一緒に居る時は転移アイテムや魔法を使ってサクッと移動出来たけど、残念ながらこのメンバーそれ等を使う事が出来る人間はいない。
まぁ、訓練の一環と割り切ろうか。
「なぁ、ルッド、いつになったら目的地に付くんだ?」
彼是4時間は歩いている訳だけど、そろそろ体力に自信があるデビッドですら音を上げ始めている。
「ククク……もうじき着きますよ……」
ルッド君が遠くを指差しながら言う。
デビッドは、ゴールが近いと知ったのかその表情が明るくなった。
デビッドがぼやいたのは、どうやら体力の問題でなく気力の問題だったみたいだ。
「もうじき着くのか! やっとコボルドキングがいる場所に辿り着けるんだな!」
「はぁ、全く。どれだけ体力お化けなのよアンタは」
4時間も歩いて大きな声、元気な声を出す事が出来るデビッドを見て、ルッカさんが呆れながら言う。
「皆さん凄いです。カイルさんは鎧を着てますし大変ですよね、あ、後デビッドさんも」
ルミリナさんがデビッドを思い出したかのように言う。
やはり、自分を狙っている男を良く思わないのだろうか? それでもスルーせず配慮気遣い上手とも言える
「まさか? あのカイルがこの程度で大変と思うワケ無いわ。あんな奴の心配する自体時間の無駄よ?」
なんだか、ルッカさんが俺を酷い扱いしているんだけど気のせい?
最も、ルッカさんが言っている事は嘘じゃなくって、【機動力増加】使って歩行速度上げたり【筋力増加】使って筋肉量増やす事で装備品の重量による身体への負担を低減してるけどさ。
勿論、この魔法はみんなにも掛けてあるんだけど、それでもプリーストであるルミリナさんは普段歩きなれていないのかしんどそうに見えるかな。
「ハッハッハ、カイル、ルッカちゃんに見捨てられて可哀想だな!」
ルッカさんが俺を否定した事から、自分はルッカさんから案じて貰えると思って良そうなデビッドだけど。
ルッカさんは、デビッドを少しばかりジトッとした目で見据えた後ルッド君の方へ視線を向け、
「ねぇ、ルッド君、コイツ誰だっけ? 私お尻の軽い人はギルドの中でいっぱいいっぱいなんだけど」
ルッカさんの口から渾身のストレートがデビッドの胸元目掛け放たれた。
別にデビッドは悪い奴じゃなくって、面倒見が良かったり多分男から見たら良い奴と思うんだけども、どうしてこう、女から酷い扱いを受けるんだろうか少し不思議に思う。
「うぅ、くそぅ、どうせ俺なんて」
ルッカさんのストレートに心を抉られたのか、デビッドは地面にひざまづき項垂れた。
「ククク……日ごろの行いは正直ですからね、仕方ありません……」
ルッド君が、デビッドをフォローしている様な気がするけれど、さりげなくデビッドに対して追撃を入れている様な気がしなくもない。
まぁ、どうせデビッドの事だ数分後にはケロリと立ち直っているだろうから一々気にしても仕方がないかな。
大体10秒位、誰もしゃべらない少し気まずい空気が続いた所で
「あの、遠くに可愛いワンちゃんが見えますよ」
ルミリナさんが嬉しそうな表情を浮かべながら近くを指差す。
ルミリナさんが言う通り、犬の姿が見える。
ただ、一般的にみられる4足歩行では無く人間と同じ2足歩行なのだが。
「ルミリナさん? あれはワンちゃんじゃなくてコボルドなんですけど」
俺の言葉が悪かったのか、ルッカさんが悪い形相で俺を睨みながら、
「はぁ、可愛い女の子がワンちゃんって言ってるのよ? 素直にワンちゃんって言ったらどうなの?」
理不尽に怒られてしまう。
俺としては間違った事じゃなくって正しい事を伝えたつもりなんだけど。
「そうだぞ! カイル、ルッカちゃんが言う通り、ルミリナちゃんに合わせないなんて酷いぞ」
デビッドがルッカさんの味方をしたいのか俺に追撃を入れて来る。
「いえ、やっぱりコボルドをワンちゃんなんて可愛く言うのはナシね、あいつ等はあくまで獣人なんだから、甘く見たらだめよ」
と思ったら何故かルッカさんが意見を180度変えてしまう。
デビッドと意見が同じな事も嫌なのだろうか? そんなにデビッドが嫌なのだろうか?
「なん……だと?」
ルッカさんに手の平を返されたデビッドは、ショックを受けたのか再び地面にひざまづいて項垂れる。
一々リアクションが大きくて面白くも見えるが、疲れないか? と心配にもなって来る。




