11話
―魔王城―
玉座前にて、魔闘将ルカンがひざまづき、魔王からの言葉を貰っている。
「魔闘将よ、うぬは【闘神の斧】に興味はあるか?」
「はっ、勿論あります」
魔族とて、神遺物の力は魅力的であろう。
ルカンは魔王からの問い掛けに対し、少しばかり声を嬉々とさせながら返事をする。
「ならば【闘神の斧】はうぬに任せよう、入手方法は例の人間に聞け」
魔王がルカンに告げたタイミングで今度はダストが嫌そうな表情を見せながら魔王の下でやって来た。
ひざまづき敬意を見せるルカンとは違い、ダストからは魔王に対する敬意は欠片すらも感じられなかった。
人間と魔族は敵対する関係である以上それは当然かもしれないが。
「チッ、俺様は療養しろと言われたっつーのに何の用だ!」
ダストは、魔王に対し一つ睨みを聞かせ、一般魔族が同じ事を述べ様ならば断罪されても可笑しく無い事を言う。
「ルカンに闘神の斧の在処を教えろ」
「あぁ? そんな下らねぇ事かよ、チッ、しかたねぇ、ルッセルに復讐する為に教えてやるだけだからな? 勘違いするんじゃねぇぞ?」
ダストは1つ舌打ちすると、身に着けている賢神の石に手を触れ闘神の斧に付いての情報を引き出し、
「どうやら炎獄の谷にあるらしいぜ。細かい場所までは分からねぇんだとさ。ま、どうせルッセルの野郎もこれ位知ってんだろ、アイツ等が見つけた所を奪っちまえば良いだろ」
ダストは吐き捨てるかの様に魔王へ言うと、ケッケケと小高く笑い小悪党がお似合いな様を見せつける。
「フン、小癪な戦術だな。俺はその様な事は好かん」
ルカンが、武人みたいな事を言う。
この程度魔族なら当たり前にやるだろうと思っていたダストは、ルカンから予想外の言葉を受け一瞬きょとんとした表情を見せ、
「ケッ、てめー魔族の癖に甘っちょろいじゃねーか、テメーが見付けたってルッセルの野郎は正義だのなんだの振りかざしてテメーをぶっ殺してでも奪うに決まってんだろ」
ダストは、常日頃綺麗な言葉を重ねるが結局やってる事は魔族達と変わらないルッセルの事を思い出し少しばかりイラついて見せる。
「そうか、貴様の言い分も一理ある」
ルカンは、人間達が大義名分を抱え自分達から略奪を行っていた事を思い出しながら、ダストの言い分に対して納得して見せる。
「全くふざけた話だ、俺様みてぇに汚い言葉を吐けば何をやっても悪者扱いで、ルッセルの野郎みてぇに綺麗な言葉吐けば何をやっても正義扱いだかんな」
ダストは腕を組み人間がいかに理不尽な生物かと言いたげに右足で地面をコツコツとならす。
「貴様にしては珍しく興味深い話をしてくれる」
「ハッ、おだててた所で何も出さねぇぞ」
ルカンに褒められたダストは調子が狂うと言わんばかりに首を左右に小さく振った。
「そんなつもりは毛頭無いが。ならば闘神の斧がある場所に向かうとする」
ルカンが魔王に向け敬礼を行った所で、
「ふん、転移魔法程度なら掛けてやらんことも無いぞ」
ダストは、ルカンに対し少々視線を外しながら小声で言った。
「フッ、では準備が整い次第ありがたく掛けてもらおうとしようか。丁度俺もその場所に辿り着く方法を悩んでいたところでな」
ルカンはどこか不器用に見えるダストの背中をポン、と叩くと【闘神の斧】を入手する為の準備に取り掛かった。




