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『ディスタンス』『クロース』のその後

作者: ぷかぷか

これ単体ではわからないので、『ディスタンス』か『クロース』を読んでからの方が良いと思います。


「で、幸ちゃん、こんな俺ですが、付き合ってくれませんか?」


頭を下げて反応を待った。



……、

……、

……。




え?反応がない?


こっそり目線をあげてルルちゃんの顔をみた。彼女は真っ赤な顔をしてうつむいていた。

唇がかすかに動いてはかみしめ、また開いては止まり…。


「えっと…」


ようやくルルちゃんがやっと聞こえるくらいの小さな声で続けた。


「あの…、私…、大上さんのこと…、リアルではまだよく知りません。それに、私は皆さんに自分の事を話していませんでしたし…」


うつむいていた真っ赤な顔をどうにかしてあげて、俺の顔を見た。


「お…、お友達からでいいでしょうか?」


………。


え?


オトモダチ?


オトモダチって何だっけ…?と、一瞬、頭があさっての方向へいってしまった。


「……あ、うん、オトモダチ、から、ね……」


思わず、肩を落としてしまう。


「私、初めて、なんです」


「え?は、はじめてって…?」


「異性の……、友達、いなかったので…」


なんとなくガックリした気持ちが上向きになってきた。初めて…。初めて、か。そっか、初めてだったら仕方ないよな。うわぁ、めっちゃ初々しいやん。思わずこっちもつられて赤面する。

断られるわけがないなんてちょっとは傲慢な思いもあったかもしれない。反省しつつも、なんだかとまどってしまった。

初めて、かぁ…。頭の中で「初めて」がグルグルまわる。


「急に言われてもビックリするよな、そりゃそうだ。でも、これからこうやってさ、リアルでお付き合いできたら、もっとお互いに理解し合えるかなぁと思うんだ。今日は楽しかったし、また、こうして会いたいんだ」


「えっと…

大上さん、わりと口の動きがわかりやすいので読みやすいです。だから、お話できるかもしれませんが…。

でも、わからなくなったらすみません」


「そんな事!何でもかんでも全て分かろうとするとしんどいだろうからね。力を抜いて話そう?」


「ありがとうございます」


「だから、力抜けって…」


まだ、他人行儀な感じがするんだよなぁ。

これからボチボチ進めていけばいいか…。


「え…あ…ぅふ、うふふ」


いきなり、顔を綻ばせ、クスクス笑いだしたルルちゃん。

おお、いい感じじゃん。


「大上さん、ギルチャと変わらないんで安心しました」


「いや、それ、幸ちゃんも同じだからね。ギルドで意外な奴って、やっぱアリスだろう」


「え?アリスさん?そうなんですか?可愛らしい方ですよね」


「かわ?……うーん?」


可愛いんかなぁ?


「アリスの中の人、知ってるの?」


「アリスさん、会ったことはありませんが、本の趣味があって。可愛いほのぼの系の内容が好きなんですよ。犬とか猫とかお好きですし、しょっちゅうギルチャで報告会みたいなのをしてくれるんですよ。妹いませんけど、いたらこんな感じかなぁって…」


アリスのことを嬉しそうに話すルルちゃんに、若干、複雑になる。

一応、アリスの中の人は男だかんな…。しかも、キレイ系のにいちゃんやぞ。

ちょっとため息をつきつつ、話続けるルルちゃんをジト目で見る。


「あのさ…、幸ちゃん?」


「はい?」


「今度、ギルドオフしよ。

そしたらアリスの中の人とも会えるし。きっと驚くよ。みんな、ルルちゃんに会いたがっていたよ。

絶対、逃がさないからな?覚悟して」


ルルちゃんの顔をしっかり見て、ニヤリと心持ち不敵に微笑んだ…つもり。


「あ……、は、はい…」


またまた、顔を真っ赤にしてどもりだしたルルちゃん。

しっかし、オトモダチからだと、周りを牽制して…先はながいかもしれんなぁ……とほほ。


でも、オーク達の嬉しそうな顔と、真っ赤なルルちゃんの顔、ドヤッてる俺の顔しか思い浮かばない。

色々、戸惑うことはあるだろうけど、幸いギルド仲間はみんな気の良い奴だし、最低でも2年以上の付き合いになる。

ルルちゃんが聞こえない人だと気がついてからは、みんなにオフ会でルルちゃんがどういう状態になるのか、どうしたらいいのかってことを共有してきた。

元々、チャットで仲良くなってるから、オフ会でも文字媒体でもいいんじゃない?って話は出たんだけど、1対1でなくてみんなの会話が分からないってことは意外と忘れられがちだから、みんなの会話がわかるような感じがいいよねってことや、話し出しやすいようにすることとか、もちろん、ルルちゃんもどうして欲しいか一緒に考えて欲しいけどまずはきっかけ作らないとね。

せっかく連れてくるんだし、楽しんで欲しいしな。


ルルちゃんの視線をこちらに戻すために手招きみたいに手を振って見てもらい、


『あなた 手話 わかる?』


って、たどたどしい手話をやってみた。

ルルちゃん、スゴく目を見開いて、こぼれんばかり。


『手話、わかる』


声は出てなかったけど、おお、わかるぞ。


『ちょっと、覚えた。手話、難しい』


『私、カンペキ、違う』


なんか、通じるって楽しいな。


『色々 教えて』


『わかる 範囲』


『OK OK』


覚えられる自信はなかったけれど、何度も会えば、だいたい想像つくようになるかなぁと思うし、わかりたい気持ちがあるからひょっとしたらできるようにならかなぁ…。ルルちゃんと手話で会話してる未来を夢想できるようになった。


「ルルちゃん、握手しよ!」


もちろん、下心パンパン。

お近づきのスタートだしな。

いきなり、俺に手を出されてルルちゃんも条件反射的に手を出してきたので、ガッツリ握手した。


よし、この後は、手を繋いで帰ろうっと…。



Fin

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