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官僚試験受験者

 魔法使いさんの世界での最も難しい職業は官僚です。そんな官僚を目指す青年が今回の主人公さん。


 今回はそんな主人公さんの少し甘酸っぱい小さな小さな物語がはじまります。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 官僚というものは完璧でなければならない。当たり前だ、国の統治を援助するのが役割だからな。俺たち庶民の間では世界で最も重要な職業だ。

 だからこそ俺は大学へいき、沢山の勉強をしてきた。

 たが勉強だけではいけない、筆記試験の他に官僚試験には実技もある。官僚はたとえどんな実技だろうが完璧でなければならない。そのため、合格ラインは魔法能力ギリギリ頑張って出せる範囲だ。

 俺は羽魔法使いだから、実技は物運び試験と自身の飛行能力試験。そして問題なのが目玉魔法使いと協力して行う監視目玉試験だ。

 どれもこれも大学になるまでに一通り教わることだがそれだけでは試験なんかは通らない。自己学習が必要なんだ。


 ところで、なぜ監視目玉試験が問題かって?

 それは練習にバディが必要だからさ。もちろん試験はランダムで目玉魔法使いの官僚試験受験者とバディを組まされる。しかし、練習相手は自分で決めることができる。


 こんな難しい試験を受けるつもりでいてとても我儘だとは思うが、俺は練習相手を勝手に決めている。

 その練習相手は幼馴染の女性だ。小さい頃から仲は良いがまだ練習相手になって欲しいと頼んだことがない。


 なぜなら、彼女の前では俺がいつもの調子ではなれなくなってしまうからだ。何故か彼女の隣にいると恥ずかしくなってきて、もどかしい気持ちになってきて、素直な俺でいられなくなってしまう。

 言っておくが嫌いなわけでは無い。彼女の目玉魔法は能力が高くてとても尊敬する。普通なら一つしか移動できない目玉を彼女は2つ一気に移動することができるんだ。

 それに彼女の瞳は是非この羽をつけたいと思うほどに美しい。もし羽を付けれたら神秘的なものが生まれるだろう、俺はそう思っている。


「なにニヤニヤしてるの?もしかして良いことあったの?」


 彼女のご登場だ。

 そちらこそと言いたくなりそうな顔で彼女は俺をニヤニヤと覗き込んでいる。


「おい、いきなり人に声をかけてくるなよ。びっくりするじゃないか」


 俺は続けて彼女に本音がバレないよう嘘を言ってやった。


「俺みたいに魔法能力も記憶力も高いやつはきっと官僚に相応しい人なんだろうなって考えていただけさ」


 そういうと彼女はわざとらしい疑った視線をこちらに向けてきた。


「ふーん、私はまだあなたの魔法能力を拝見させてもらったことはないわ。さて、本当にそうかしらね」


「ふん、お前に見てもらわなくたって、試験官達に認めてもらえればそれでいいんだよ」


「でも、それだともし落ちたら?私に嘘ついたってことになるのかな?」


 彼女は俺の魔法能力が高いことは知っているくせにからかってきやがる。

 くそ、こんなんだからいつも調子が狂って監視目玉試験の練習相手を頼めなくなるんだよ。


「ねぇ、見せてよ。あなたのすごい魔法能力」


 さらに顔を近づける彼女。そして、耳元で囁いてきた。

 俺は顔が赤くなっていくのを感じながらも、気を紛らかすように見せてやるよと時速60キロほどのスピードを出し、彼女から離れ動き回った。

 そして、他にも周りにあるいろんなものを運んでみた。


 うふふ、と笑う彼女。俺の魔法能力ではなく、反応を楽しんでいるようだ。


「一つだけ運んで無いものがあるんじゃない」


 彼女が自身の両手を広げてアピールしてきた。また、顔が赤くなりそうだったが、仕方なく彼女に羽を付けた。

 これ以上近づかれたら、俺の心臓がもたない。なるべく遠ざけて運ぼう。そう思った矢先、彼女にはオレの考えは丸見えだったようだ。


「あまり遠ざけないで近づけてね。私の感想が聞けないでしょ」


 俺の心臓は騒がしく鳴っている。それを俺は無理矢理無視して彼女を俺に近づけるように運んだ。


 もっと、もっと、と言う彼女。気づけば俺と彼女との距離は20センチほどになっていた。

 あまりの至近距離に目を逸らしてしまいそうになる。こんなんだから、練習用のバディを組むことを頼めやしない。


「あ、そういえばもう一つ運んでもらえるものがあったわね」


 そう言いながら、彼女は帽子に付いている黒のベールから美しい目玉を出してきた。

 ほらと言いながら目玉を差し出す彼女。


 これを付けたら監視目玉じゃないか。俺は心臓がはち切れそうになりながら、羽を出し、彼女の美しい目玉に付けた。そして、空高く舞い上がっていった。

 俺は願いが叶ったにもかかわらず、嬉しさよりも恥ずかしさが勝っていた。もう彼女に心臓のドキドキが聞こえてしまいそうな勢いだ。


「わぁ、高い。もっとよく見せて」


 もう一つの目玉を取り出す彼女。そんな彼女の手を俺は握って停止した。


「待って、もっと良い物見せてあげるよ。俺の最大魔法能力をね」


 俺は決心した。取り乱している暇なんてない、今ここで彼女に言うんだ。練習のバディになって欲しいと。


 そう思った俺は更に18個の羽を出し、羽達は周りに咲いている花を摘んで空高く飛んでいった。そして、最後の一つの羽を彼女の目玉に付けた。


 花と共に空へ高く高く舞っている彼女の美しい目玉。気を取られているのはどうやら俺だけではないようだ。

 いつもなら何かからかってくる彼女は無言でただひたすら羽と花に囲まれた幻想的な状況を楽しんでいた。ベールで隠れてはいるが、ベールから覗かせた顔は少し赤く見えた。


「なぁ、実技試験の一つにさ、監視目玉試験があるんだ。俺とバディを組んで練習相手になってくれないか?」


 俺はやっとの思いで彼女に伝えた。

 彼女は嬉しそうにうんと答えた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 それから主人公さんは無事試験に合格し、官僚になり活躍していくのでしょう。

 今回の小さな小さな物語は彼らの青春物語です。官僚での活躍は後の機会にお話ししましょう。


 おしまい、おしまい。



毎日投稿しています。

気に入っていただければ、ほかの小さな小さな物語達も見に行ってあげて下さい。

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